2019.10.27

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.42 シャルベのローブとスリッパ|2017年9月号掲載

久々に行ったシャルベで衝動買い。スリッパ一つを買いに行ったはずが、ローブを二着、スリッパ二足、それにスリーパーとボウタイを購入。この店の老舗然とした荘厳なムード、そして最上級の接客にはいつも参る。

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6月後半はメンズコレクションでパリへ。かれこれ30年近く繰り返している旅だが、最近は忘れ物が絶えない。ホテルの部屋に何かを置き忘れて、日本に戻ってから青ざめるパターンがほとんどだが、今回は、日本から持っていくはずのスリッパを忘れた。



僕はいつも機内でビーサンに履き替えるのだが、まずはそのビーサンを忘れたことに気づいた。と同時に、ホテル用のスリッパも忘れたことが発覚。この二足は家で同じ場所に置いてあり、どちらかを忘れたということは、両方忘れたということなのだ。仕方ない。パリへ着いたらシャルベへスリッパを買いに行こう! と、シャンパンを飲みながら思った。



今回はパリコレスタートの3日前に現地入り。時間に少々余裕もあったため、着いた翌朝、シャルベへ向かった。10時過ぎに着いたが、まだ開いていない。あれ? 何時オープンだったかな? と思いながら、近くのカフェ・コロンボへ。この何でもない古いカフェで一人休憩するのが好きだ。トーストとコーヒーをオーダー。コーヒーは以前のようにブラック一辺倒ではなくなり、最近はミルクを入れるのが好きだ。



カフェ・コロンボでは、きちんと温めたミルクがたっぷり添えられてくる。あんまり入れすぎるとカフェオレになるので、コーヒーの苦味が味わえるくらいの量を注ぐ。砂糖は使わず、スプーンをゆっくりと回す。これが最近のひと口飲む前の儀式。コーヒーがマイルドな緩い色に変化しているのを確かめたら、スプーンを置いてドヤ顔でひと口。苦くもなく甘くもなく、でもしっかりとミルクとコーヒーがブレンドされた味に満足しながら、シャルベで何色のスリッパを買おうかと考える。で、時計が11時を回ったので、再びシャルベへ。



今度は働くスタッフの姿が外からも見えたので、店内へGO。ショーウィンドウに飾られていたレモンイエローのスエードのスリッパに興味が湧き、店員さんに話しかけようとするが、なにせオープン直後なので、みんなレジをスタンバイしたり、店内を掃除していたりと、なかなか視線を合わせてくれない。



出直そうかなと思ったとき、奥からおしゃれなダブルのスーツを着た紳士が現れた。即、目が合うと、彼は笑顔で足早に僕のほうへと歩いてきた。チャコールグレーのスーツに薄いブルーのシャツ。アクア色のシルクタイをきちんと締めた姿は、まさにミスター・シャルベの雰囲気。結局レモンイエローのスエードスリッパは僕のサイズがなかったため、オレンジを一足、そして彼にすすめられたベージュの計二足を購入。



さりげなくコーディネートについてアドバイスをしてくれるのだが、彼とは趣味が合った。「こりゃいいわ」と、ボウタイに手を出し、次にシルクのローブを試し、その後は中に着るパジャマを探しに2階へ移動。パジャマをオーダーする気にはなれず、レディメイドのスリーパーを購入。そして、カシミヤ100%のピンストライプのローブも試着。袖丈がぴったりなのに感動して即買い。久々にプロフェッショナルなショップスタッフに出会え30分の充実した買い物ができた。



やっぱりパリへ来たら、シャルベへ行かないとね。思えばスリッパを忘れたのも怪我の功名。でもまた旅行用スリッパのストックは無駄に増えた…。



(左)シルクのローブはシャルベの店内中央に展示されていた。パープル、イエロー、オレンジなど、鮮やかな色が目をひいたが、僕が選んだのはその中で最も涼しげで穏やかな色。(中)スエードのスリッパ。これまでに黒、白、緑、ワインレッドのものを購入してきたが、今回は気分一新! オレンジとベージュにしました。(右)スリーパーを買ったのは、エミリオ プッチに続いて二着目。買ったその日の夜から着ています。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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