2019.10.20

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.37 ワイルドフォックスとシャネルのサングラス|2017年4月号掲載

個性的なサングラスを3点購入! デザイン性の高いアイウェアは、顔の印象を豊かにしてくれる。今回は大好きなコートに合わせてサングラスも新調することにした。もちろん3点一緒にはつけませんよ。

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毎年、僕はパリのメンズコレクションの時期に誕生日を迎えていたが、今年はパリコレから帰国した翌日が誕生日だった。当然、僕の誕生日が変わったのではなく、パリコレの会期が変わったのだ。



現在、帰国翌々日の深夜3時。パリ時間で言えば夜8時頃なので、時差ぼけ全開でお目々パッチリである。かれこれ30年以上、時差ぼけと付き合っているが、解消法を考えることもなく、ひたすら自然となおるのを待っている。



そういえば今よりさらに海外ロケに頻繁に行っていた頃は、行った先でも早朝から撮影があるし、夜は夜で深夜まで飲み歩いたりしていたので、帰国後すぐは時差ぼけの症状が出なかった。寝不足状態で帰国すれば時差ぼけはないのかと思ったりしたが、なんと1カ月後にまさに時差ぼけとしか思えない症状が出るという、「時差付きの時差ぼけ」を体験することとなった。結局、時差ぼけからは逃れられない体質なのである。



時差ぼけはまったくなし! と公言する友人が何人かいるが、いったいどんな体内構造になっているのだろう。時差ぼけの苦労と無縁なのはうらやましいが、その実、「神経が鈍感なだけなんじゃね?」とも思っている。



でも一つ言えることは、時差ぼけ無縁体質の人々は、揃って胃腸が丈夫だ。長距離の移動の際もしっかり3食、食べているようだし、酒も強い。胃腸のみならず、肝臓や腎臓も丈夫なのだろう。イギリスに行くと、パブで延々立ち飲みをしている人たちを見るが、彼らも間違いなく胃腸が丈夫だと思うし、時差ぼけもないんじゃないかと思う。それって僕の偏見だろうか。



以前、朝日を浴びるとメラトニンの影響で時差ぼけがなおると聞いたことがある。特に、体温が最低になった後、つまり目覚めてすぐに日光を浴びるといいらしい。が、この季節、夜中の3時じゃ日の出は程遠い。日の出とともにバルコニーに出て上半身裸にでもなればいいのだろうか!? まぶしい日差しを浴びて時差ぼけがなおるなら最高なのだが。



さて、まぶしい日差しときたらサングラスである。昨年秋、僕は某眼鏡メーカーの広告のスタイリングをしたのだが、そのときキャスティングしたのは最高齢91歳、ほかも揃って70歳超という男女各3名のモデルさんたちだった。



撮影中、いろんな話をしていると、みんな気持ちが若いのは当然だが、見た目も相当若いことに気づいた。また、最初は頑固そうに見えた人も、仕事に対しては極めて柔軟であった。普段の撮影チームとはまったく違う年齢層の方々との仕事は、あらためて年長者から学ぶことの多さを実感させてくれた。今、現場の彼ら、彼女たちを思い出すと、「時差ぼけしないタイプだな」と思う。



で、昨年末、僕はその眼鏡メーカーの渋谷店を訪ねた。ただぐるっと見るだけのつもりが、あっという間の3点買い。〈ワイルドフォックス〉2点と〈シャネル〉を1点、衝動買いした。すべて黒のセルフレームである。ネイビーのコートにレパード柄のストール、そしてこれらのサングラスを合わせてパリの街を歩き回った。



今回は、リムジンもタクシーもほとんど使わず、ひたすら「歩いた」。今年は東京も相当寒いが、パリはもっと寒かった。雪が降らなかったのが唯一の救い。グローブとブーツでしっかり防寒して歩いたのだが、今年のパリは、ホームレスが特に目についた。



目の前で立ちションをした女性ホームレスがいて、なんだか寂しい気持ちになった。ホテルからメトロのマドレーヌ駅へ向かう道に、彼女は毎日寝ていた。極寒のパリで、たくましく路上生活を送る女性ホームレス。いったい彼女に何が起こったのか。サングラス越しに映るその姿は、人間のせつなさ、世の中の厳しさ、そしてそんな状況でも生きていくという、生き物の原点を見た思いがしたのであった。



(左)パリミキ渋谷店で初めて見た〈ワイルドフォックス〉のサングラス。ひと目見て、目がクギづけになった。大きい丸型のフレームにロゴが入っている。緊張を強いられる真面目な場所にかけて行きたい。(中)初めて購入した〈シャネル〉のサングラス。ミラーレンズだけど、ド派手に見えないのがクール。シャネルマークもフレームに馴染んでいるところが好き。(右)これも左と同じ〈ワイルドフォックス〉。かけると猫みたいな顔になれます(笑)。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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