2019.09.29

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.23 マルニのコートとセーター|2016年2月号掲載

15年前に購入したブーツと、今年の新作アイテムを合わせる妙。〈マイ・オウン・ヴィンテージ〉のミックス趣味がどうにも止まらない。故きを温(たず)ねれば新しさも際立つ。ファッションは時空を超えるのだ。

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『祐真朋樹の衣装部屋へようこそ』を出版して以来、トランクルームへ行く機会が増えた。今まで着ようと思わなかった古い服を引っ張り出して着るようになったからだ。最初は、本の中で紹介しているスタイルをダイアリーどおりに実践していたが、これがなかなか大変で、最近は守れない日も増えてきた。でもとりあえずは朝出かける前に、一度は本のとおりの格好をしている。



しっくりこない場合は、その後、着替え。はいた靴下を脱いで別のものにはき替えていると、その日会う人の顔や行く場所などが頭に浮かんでくる。TPOを考えているのだな、と、われながら感心。昔はTPOという言葉が嫌いだった。形式に縛られるのは今でもおしゃれじゃないと思っている。でも、いいレストランへディナーに出かけるときは襟付きのシャツを着るし、目上の人と会うときは失礼のないようにジャケットを着る。



つまり、残念ながら縛られているのである。あと20年もしてまだ生きていれば、その頃にはそんな縛りからも解放されて、どんな場所でも相手でも、「オレ流スタイル」を通せるようになっているといいな、と思う。オレ流を通すには、タフなハートと熟練したセンスが必須だからだ。



さて、今月のコーディネートの中では、〈マルニ〉のコートとセーターが新作。〈プラダ〉のマフラーと〈エルメス〉のブーツはトランクルームから出してきた。パンツは〈ケアレーベル〉とコラボしたホワイトシーンズ。このページで以前も紹介させてもらった。レングスが長いので直すつもりでいたが、ブーツを合わせていると、この長い折り返しも「ありだな」と思えてそのままにしている。



〈エルメス〉のブーツは15年ほど前、パリではなくてミラノの店で買った。当時はミラノで〈エルメス〉を買うほうが、パリの店で買うより気分が楽だった。ミラノのほうが敷居が低くて買いやすかったし、それにいつもすいていた。しかし、わざわざミラノで〈エルメス〉を買うなんて、今考えても変わっていると思う。この〈エルメス〉のブーツは10年くらい寝かせっぱなしだったが、今履いても馴染む。15年前の靴を今売っている服と合わせて着る。こんなふうにマイ・オウン・ヴィンテージを活用することに、今ははまっている。



〈プラダ〉のマフラーは1年前に購入したものだ。昨年は出番が少なかったが、今年はこの黄色いモヘアのセーターと合わせて使う機会が多い。黄色いモヘアのセーターは、これまでの人生で3回、熱心に着たシーズンがあった。定期的に黄色いモヘアセーターを着たくなる、この精神状態は何なのだろう。脳科学者にでも分析してもらいたいものだ。このセーターは、単に黄色一色ではなく、グラデーションに染めてあるのが特徴。滑らかな色調が味わい深い。



〈マルニ〉のコートはオーセンティックな形で、コットンウール素材。機能的である。ポケットの位置が高いので、ハイウエストのパンツと合わせるのがいいのかも。例えば〈トムブラウン〉のスラックスとかね。



さて、服のことばかり考えていたら、今年もあっという間に終わりが近づいてきた。2016年も毎日服のことを考え、うまいものを食べ、素敵な空間に酔いながら、あらためて仕事に邁進したい。幾多の面倒を乗り越えて、しっかり楽しめる年にしたいと思っています! ではでは。



(左)〈カトラー&グロス〉のミラーサングラスは夏に紛失したものを再度購入。真冬のミラーサングラスもクールだ。(中)〈マルニ〉のニットは色に惹かれました。短い着丈はコートの高いポケット位置とバランスよし。(右)〈ロエベ〉の1泊2日用(?)みたいなカバン。旅だけじゃもったいないので普段もバンバン使っていきたいと思っている。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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