2019.09.22

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.19 アレキサンダー・マックイーン展のスカルバッグ|2015年10月号掲載

なぜかロンドンが大好きだ。住むことはまずないと思うが、マメに通いたい街ナンバーワンだ。6月は彼の地で天才の回顧展へ。A・マックイーンの豊かな才能に涙しつつ心を打たれた旅であった。

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前号に続き、今回もロンドンの話をしたい。よく知られているように、ロンドンはよく雨が降る。1990年頃、僕が初めて行ったときには、毎日曇りで時折霧雨が降った。が、5日間の滞在中、一瞬だけ空が晴れ渡った。そのときのロンドン市民の姿が最高だった。1月上旬だというのにTシャツやタンクトップ一枚の人々が、突如として公園やパブに現れた。太陽をいかに貴重に感じているかが見て取れる光景だった。ちょっと感動した。



この10年で、僕は約100日、ロンドンに滞在している。で、そのうち98日くらいは「晴れ」であった。まあ、時期が1月と5月、6月、8月だということも関係しているかもしれないが、晴れ男指数は相当高いと思う。一度、知人が2カ月ロンドンに滞在するというので1週間だけ遊びに行ったことがあった。そのときも、僕が到着する前の1週間は連日の雨だったというのに、僕がいた1週間は毎日晴れだった。「サニー・スケザネ」という名誉な呼び名を頂いた。サニー、って響きがいいよね。サニ~~!(笑)



6月にはヴィクトリア&アルバートミュージアムを訪ねた。開催していたアレキサンダー・マックイーンの回顧展は、朝10時のオープン前に並ばないと入れなくなると聞き、9時15分にはミュージアムに着いた。「代わりに並んで待ってます」と言ってくれたコーディネーターさんは、なんと渋滞でまだ到着していなかった。朝飯を早くすませ、寄り道せずに来たのは正解だった。



すでに並んでいた10人を眺めながら、UOMOの若手編集者N君とニンマリ。もちろん雨はナシ。「サニー・スケザネ」は健在だった。結局、オープン5分前には200人近く並んでいたと思う。開場と同時に並ばずに入ろうとする輩も現れ、お決まりのひと悶着を横目で見ながらエントランス突破。見事に朝一番の回のチケットをゲットした。



この回顧展は、マックイーンのショーを数十回観てきた僕にとっても、新たな発見だらけだった。生前から業界内外でその破格な才能を認められてきた天才だし、僕もその評価にまったく同感だったが、時にちょっと奇をてらいすぎではないかと思うこともあった。が、この回顧展を観て、自分がいかに無知であったかを思い知った。



彼のクリエーションは、革新的で何者にも屈しない反逆精神に満ちたものに見えるが、その裏には、深い愛に満ちたロマンチックなコンセプトが存在したのである。彼は、ハートからくる深い何かでクリエーションに取り組んでいた。そんな彼の姿が浮き彫りになる展示であり、僕の胸にはずんずんと押し寄せてくるものがあった。涙、涙、涙。こういうときに流れる涙というのは何なんだろう。格好悪くて嫌になる。



そのV&Aミュージアムで購入したスーベニアバッグと〈パレス〉のペニーローファーは、帰国後、僕のフェイバリット・アイテムとなった。ローマやNYへの出張も常に一緒である。V&Aのバッグは、あちこちで「どこで買ったの?」と尋ねられた。スカル柄のトートを持つ日がくるとは、2カ月前までは思ってもみなかった。ペニーローファーも僕の人生で履くことはないな、と思っていた。ロンドンはつくづく、僕にサ~プライズを与えてくれる街なのである。さて、次はいつ行こうかな。



(左)V&Aのスーベニアショップで買ったTシャツ。同じモチーフのトートバッグはグレージュを購入。(中)甲高のため、ローファーをあきらめていた僕に初めてフィットした〈パレス〉の靴。(右)NYで〈カトラー&グロス〉のミラータイプを紛失。同じものが見つからずこちらを購入した。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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