2019.09.15

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.12 MARNIのフェイクファーコート|2015年3月号掲載

真冬の主役といえばコート。「ヴァレンティノ」「ランバン」「バーバリー プローサム」「マルニ」。今年もさまざまなコートを手に入れた。すでに1月も終盤だが、3月まで、まだまだコートの日々は続く。

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ここ数年、冬場でもコートの下にジャケットは着ないで出歩くことが多い。別に温暖化うんぬんの話ではない。単純に薄着になっているのだ。これはファッションのトレンドが、タイトシルエット&軽量化しているからだと思う。最近ではダウンコートだってタイトシルエット化しているので、とどのつまり、ジャケットなんて「着られない」のだ。じゃあ寒くないのかと言えば、寒くはない。なぜなら繊維の進歩は目覚ましく、冬服は薄くて軽くて暖かい、が常識だからね。



でも、そんな「流行」にぴったり追従するのも、いささか面白くない。あまのじゃくな性分なので、このところ、ジャケットを着てコートを着るというオーバーサイズ気味なスタイルに哀愁を感じている。素敵なレストランへ入ってコートを脱いだ後、ジャケットの襟やフロントボタンを気にしながら席に着く。そんな仕草に心が躍る。まるで『ゴッドファーザー』(先日、東京→NYに行くときに機内で観た!)のワンシーンのような…。



でも近所の馴染みのバーやカフェだと、そんな格好は超浮く。まあその場合、コートは脱がずに椅子に腰かけて、カジュアルに飲むわけだが。…あれ? よくよく考えたら僕の活動範囲にはそんな店しかないじゃないか。ということはつまり、今年も僕は毎日あちこちで「超浮く」わけだ。目標は「さりげなく超浮くこと」。な~んてね。



さて、今回イラストの僕が着ているコートは「マルニ」のもの。毛足の長いふかふかコートなので一見毛皮に見えるが、実はフェイク。狙ったわけではないが、気軽に毛皮を着ている風となる。実際、これを着て出かけると、周りの人たち(特に女性。年齢は問わず)から「すご~い。ファーなの?」とよく言われる。素面のときは「いえ、フェイクファーです」と滑舌よく返しているが、酒が入っていると面倒なので、「くまモン!」などと言ってドン引きされている。まあ、何かと話題に事欠かない人気者という意味では、くまモンコートと言っても過言ではない。



シルエットもゆったり。中には同じ「マルニ」のネイビースーツを合わせることが多いが、モコモコで動きにくいなんてことにはならない。着丈は膝小僧がぎりぎり見え隠れするくらい。厚みのある素材ゆえ、これ以上丈が長くなるとヘビーな印象になるのでこの丈がベストだ。



で、足元にもコートの迫力に負けない存在感がないとバランスが悪いので、この日は「ロエベ」のレースアップシューズを合わせた。黄色と赤の装飾は、ロボットになった気分が味わえる。でもベースがプレーントウなので、僕は一度履いたらその派手さにすぐ慣れた。全体的にはシックだが、地味すぎてつまんないおしゃれに陥りそうなときは、この靴で爆発するといいと思う。



首元は冷やさないようにタートルネック。噓。本当は機能など考えない。僕は「ファッションは“不機能”であるほど美しい」と思っている。が、タートルネックは偶然にも首が冷えない点も秀逸。



最近はタートルネックを着ると、首の肉があごへと押し上げられ、むくんだ顔に見える。年齢によるたるみと運動不足の相乗効果だ。運動不足は単なる怠慢。ダメダメだ。カラオケダイエットなる僕の勝手なアイデアも、この首のたるみには効果がなかった(当然)。



(左)マルニのコート。着るときはレザーグローブが必需品。これは黒のカーフ。イラストではオレンジのペッカリーを合わせている。 (中)ホランドエスクワイアのツイードジャケット。上襟が黒のベルベットなのがポイント。完璧にカントリージェントルマン仕様な一着。 (右)ランバンのオーバーサイズコート。肩が落ちる超ビッグシルエット。ヴァレンティノのスニーカーを合わせている。
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Text:Tomoki Sukezane 
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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