2019.08.18

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.5 Charvetのオーダーメイドシャツ|2014年8月号掲載

パリのCharvetでオーダーしたシャツがついに手元に届いた。待つこと約2カ月。綿100%なのにシルクのような肌触り、そして美しい光沢感にほれぼれしています。真夏も腕まくりでガンガン着るぞ!

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過去1年を振り返ると、実にいろいろなところへ旅をした。ニューヨーク、ロンドン、パリ、ミラノ…このあたりはコレクションもあるので定番です。あとは、レイキャビクにホーチミン、ヴェネツィアにサンフランシスコ、そして国内では京都、大阪、金沢、軽井沢…。この30年近く、毎年いろいろな都市に滞在し、その土地土地の夜の街へも繰り出し、飲みに行ったり食事をしに行ったりしてきた。そんな「夜のお出かけ」のとき、僕は必ず襟付きのシャツを着て出かける。



僕がこの業界に入ったのは21歳のときだった。それから海外へも撮影や取材に行くようになり、いろいろな人と出会っていろいろなことを学んだ。もちろん、各地でいろいろな失敗をやらかしたのは言うまでもない。人間は失敗しながら学ぶ生き物であるし、若い頃の失敗は「買ってでも」体験すべきであると思っているので、それらの失敗に僕は大いに感謝している。



で、失敗から学んだものでいちばん大きかったのは何かといえば、それは“夜のドレスコード”だ。NYやロンドン、パリ、ミラノなど、都会のそれ相当の場所においては、どんなに服装に無頓着なオヤジでも襟付きのシャツを着ている。そんな場所にロックT一枚で入ろうものなら噴飯ものである。オヤジたちや店のスタッフの冷たい視線にいたたまれない気持ちになることだろう。



そんなわけで、僕は夜の外出用のシャツを常に数枚用意している。夜、会食などの予定が入っている日は、夕方帰ってシャワーを浴びて着替え…なんて時間はないので、朝から夜モードで家を出る。どんな店に連れていかれるのかわからない場合も多く、いざ行ってみたら居酒屋とかもんじゃ焼き屋だった、なんてこともあり、そういう場では大いに浮くわけだが、そんな「浮いた」状態にいるのも嫌いではない。キメなくちゃならない場所でキメてないのはなんとも肩身が狭いものだが、キメなくていい場所でキメてるアウェイ感は、その馬鹿さかげんになんだか酔える。



この感覚は海外でもまったく同じで、ドレスコードがあるのかないのかわからない場合も、僕は必ずキメて行く。キメないでミスるよりは、キメてミスるほうが何倍も楽しめるからだ。と、こんなことを書くと、周囲の顔色をうかがって服を決めているようでくだらないと思われるかもしれないが、郷に入っては郷に従え。日本の座敷に靴のまま上がってはいけないのと同じなんじゃないかと思うのだ。…違うか??



僕の夜服のオススメは、Charvetで作ったシャツである。今年初めに作った3枚を入れて、これまでに都合10枚を誂えた。ほかのメゾンでも作ったことはあるのだが、結論としてはCharvetのシャツは別格。不要なシワがいっさい出ないフィット感や滑らかな生地の感触、長年の歴史の集大成である見事なディテール、すべてが圧倒的なのだ。



ふと思いついてアポなしで店に寄っても、これまでのカルテが出てきてスタッフが手際よく注文をきいてくれる。その対応には自信がみなぎっていて、客である僕は安心して任せることができるのだ。しかもすこぶる楽しく。今回届いたこのシャツも、大満足な仕上がりであった。Charvetの誂えシャツ、マジでオススメです。



(左)パリのヴァンドームにあるCharvetで誂えたシャツの数々。3枚とも同じ生地で、すべてダブルカフス。身頃の胸下に“STS”とイニシャルが入っている。 (右)25歳の頃に買ったJ.M.WESTONのUチップ。このたびソールを張り替えたところ、インソールまで替えられてきてショック! 前のロゴのほうが好きだった…。
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Text:Tomoki Sukezane 
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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