2019.08.18

祐真朋樹の密かな買い物Vol.4 American Apparelの“NEW YORK CITY”Tシャツ|2014年7月号掲載

息子とお揃いのTシャツを買った。で、親バカ魂が炸裂して一緒に登場。息子はテーパードパンツにヴァンズ、それに愛用のスウェットパーカ。NEW YORK CITY トリムTは、世代を超えたロングセラー・アイテムだ。

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撮影の現場やパーティ会場などで、まったく同じ服を着た人と出くわすことがある。いわゆる「かぶった」というやつだ。その相手と目が合ったりするとかなりバツが悪いわけだが、たいていの場合は嫌な気分になるわけではなく、むしろその人に興味が湧いてくる。



僕は仕事でアーティストの服を用意することも多いが、メゾンによっては、ほかのアーティストがすでに着用したものは貸してくれないことがある。そのアーティストに似合うか否かは問題ではなく、単に早い者勝ちってことだ。僕は着る人に本当に似合うものを探すのが役目だと思っているので、なんだか残念な気持ちになる。たとえ同じ服でも、着る人によって違った魅力を発揮すると思うし、見る人だって、服だけを見るのではなく、着る人の個性と相まった“何か”を見ると思うからだ。



だから、仕事やパーティの場で、期せずして誰かと服が「かぶった」としても、僕たちの見え方はまるで違っているはずだし、むしろそんなことよりも、同じアイテムを選んだ「同志」のような気持ちすらするのである。



僕は、自分が本当に好きな服を着ることが大切だと思う。それが誰かとかぶろうが、関係ない。高くても安くても、トレンド最先端でも流行遅れでも、真に“好きな服”を着る。それが大事だと思っている。「かぶる」のを絶対避けたいならオーダーか手作り(!?)だろうが、僕は別にかぶってもいい派だ。



でも例えば、学生服やユニフォームなど、個人の好みに関係なく「着なければならない」服というのもある。そして一見つまらない服の極致に思えるそういうものにも、個性の出し方はある。というか、そこで工夫するからこそ、おしゃれのスキルアップが図れるんじゃないかと思う。



子どもの頃から好きな服を自由に着てきたからおしゃれな大人になるというわけではない。むしろ、制服でがんじがらめの毎日を送ってきたからこそ、大人になっておしゃれセンスが炸裂する人も多いように思う。



さて、うちの息子は16歳。ずっと制服のない学校に通っているからなのか何なのか、まったくおしゃれには関心がない。僕が反面教師になっているとも言える。とにかく、ラクで悪目立ちしない服ならそれでOKというやつである。とある休日、その息子が家でごろごろしていたので、原宿のキャシディ ホーム グロウンに連れ出した。息子と一緒に服を買いに行くのはなんとそれが初めて。



結局その日買ったのは、ペインターパンツとチノパン、そしてチェックと白無地のボタンダウンシャツ各1枚。そしてSaraのイラストに描かれているTシャツは、僕とお揃いにした。ご存じの方も多いと思いますが、ジョン・レノンも、胸にこのグラフィックの入ったTシャツを着た写真が残ってます。買ってしばらくしてから「ああ、これってそういえばジョン・レノンが…」と気づいたが、買ったときは衝動買いであった。



今思えば、僕はあのとき、「僕はトリムTシャツが好きなのだ」ということを息子に伝えたかったのかもしれない。当然だが、息子は息子の人生を歩むので、別に服バカになる必要はない。でも、今回の親子ショッピングを機に、ほんのちょっとはおしゃれに目覚めてほしいというのが服バカパパの希望である。



(左)トリムTシャツはAmerican Apparel。なぜかキャシディ ホーム グロウンで購入。 (中)SAINT LAURENTのタック入りパンツは膝下が極端に細いのがポイント。 (右)フィレンツェの老舗principeへ。最近探していた短めのホーズは迷わずゲット。リネンのハンカチは、張りのある素材感に惹かれました。
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Text:Tomoki Sukezane 
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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