2019.08.18

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.01 トム ブラウンのチェスターフィールドコート|2014年4月号掲載

ここでは毎号、僕が買った服や小物を中心にしたエッセイを展開していきます。僕の買い物は基本的には衝動買い。果たしてこの「衝動」はどこからくるのか、冷静に分析していきたいと思います。

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トム ブラウンのコートを買ったのは、これで3着目。青山店で買った。1着目と2着目はトム ブラウンのNYの店で買った。1着目はトレンチコート。トム ブラウンらしく超タイトに着るための僕のサイズは「0」。ジャケットの上に着ると、身体の動きがロボットのようになるので、シャツや薄手のニットの上にジャケットを着る感覚で着ていた。トム・ブラウン自ら接客してくれたので、サイズについてどうこう言う勇気は僕にはなかった。



ということで、トムの言うがままに買い揃える結果となった。目の前に、サイズ「0」のハイウエストパンツとジャケット姿のトムがいて、「トモキは絶対にサイズ0を着ないとね」と言っているのだ。その意見に従わないなんて、男じゃない! なんて、野暮な見栄もあり、実はそのときの体型で0は厳しいな~と思いながらも、スクールカーディガン、ボタンダウンシャツ、ハイウエストのチノパン、トレンチコート、パイルジャケット、ウイングチップを購入。この2007年6月が、僕のハイウエストパンツデビューとなった。



2着目のコートを買ったのは’09年の12月。このときも、NYでトム本人に接客していただいた。本来の目的はスーツのオーダーだったのだが、店に到着すると、チェスターフィールドコートを持ったトムがいて、「これは君のためのコートだよ」と言った。サイズ表記はなかったが、ジャケットの上から着ることができたので1着目よりはゆとりがある。迷わず購入。この買い物は大正解で、今でもマイ・フェイバリット・アイテムとして僕のクロゼットの中にある。



思えば’07~’09年頃は、トムとよく食事をしていた。場所はNY、ミラノ、東京。二人だけのときもあれば、20人くらいの大勢のときもあった。トムの大好きなNYのレストランにも連れて行ってもらった。彼が「シチジ」(本当は6時)に起きて8マイル走るという話も何度か聞き、トムブラウンの服作りの背景を自分なりにイメージしながら、次第に彼の服の魅力にハマっていった。



ここ2年ほどはたまにシャツや靴を買う程度だったのだが、今回久々に3着目のコートを購入。今までの2着と違い、サイズは「1」だ。肩はジャストだが、胴はボックスシルエット。素材の軽さも影響して、軽やかに動ける。裏地がオックスフォードのシャツ地なのはこれまでの2着と同じ。ディテールへのこまやかな配慮がきいていて、裏側も丁寧に美しく仕上げられている。シルクやキュプラに比べると数段滑りが悪くて機能的ではないが、そんな面倒な服を軽やかに着るところにエレガントな魅力があるのかもしれない。



トム ブラウンのパリコレは、毎回、クレージーな服や演出で驚かせてくれる。が、その実、服はまるでオートクチュールのごとく、丁寧に完璧に仕上げられている。遊びを本気でやる。トム ブラウンのクリエーションは軽妙洒脱そのものだ。なんだかんだ言いつつ、僕はトムの「本気」に近づきたくて彼の服を着ているふしがある。



合わせているパンツは、2着目のコートを買ったときにオーダーしたスーツのボトム。通常のトム ブラウンよりもちょっと太いシルエットが気に入っている。ハイウエストも、デビュー当時に比べると少しは板についてきた気がする。そして何より、トム ブラウンの服は、着ると姿勢がよくなるのが素晴らしい。



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(左)「have a good time」のポケットTは最近のお気に入り。ポケットには「THOM BROWNE」のメガネ。(中)これが今回の主役。イラストのもとになったコートです。寸胴シルエットだけど、ウエスト位置は高い。(右)「ANATOMICA」のスニーカーは、ブルーの色味と黒いソールにひと目惚れ。


Text:Tomoki Sukezane 
Illustration:Sara Guindon
Photos:Takashi Nishizawa

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