2020.10.26

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.79 ポータークラシックのケンドーチャイナジャケット|2020年11月号掲載

“新しい生活様式”を実践しているが、未熟だ。マスクをし忘れて出かけ、家に戻ることが多い。この際シールドを肉体に装着できればいいのに。そんなこんなで、身なりはますますSF化。なのに僕はアナログ美あふれる服に惹かれる。例えば剣道着の素材を使った粋なジャケット。もんぺ感覚の太くて股上の深いイージーパンツ。そして’90年代を彷彿とさせるスニーカー…。

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長く続くステイホーム・ライフ。僕も毎日MacBook&iPhoneとにらめっこしている。そんな中、春先にハマったのがNetflixだった。大好きなマフィア&ギャング系、チャップリン、そして日本映画創成期の作品を見まくり、オリジナルのドキュメンタリー「ラストダンス」に行き着いた。NBAの生ける伝説マイケル・ジョーダンとシカゴ・ブルズの輝かしい栄光の軌跡を辿った濃厚な作品である。貴重なオンオフ映像、そして今だからこそ話せる本音のインタビューに見入った。この作品の舞台となる’80年代後半から’90年代の中頃といえば、ファッションにおいても、ナイキのエア ジョーダンは爆発的なヒットを飛ばしていた。今や当たり前の転売スニーカービジネスの原型も、ジョーダン1から始まったと思う。上京した’86年、渋谷のレッドウッド(伝説のアメカジ店)にジョーダン1が売られているのを見て驚いた。今と違って、洋服屋さんにスポーツブランドのスニーカーが置かれること自体、事件だった。それまで、スポーツブランドはスポーツショップで買うのが当たり前だったのだ。ジョーダン5が発売される頃には、ジョーダン1は定価の3〜5倍が普通。中には10倍以上の値で売られるものもあった。

そんなブームから約30年。久しぶりに渋谷へ出かけた。行き先はミヤシタパーク。長年の付き合いになる渡辺真史さん(以下マサフミ)がオープンしたDAYZへ向かった。店に行くと、’90年代に見た懐かしのTシャツやスニーカーが置かれていた。すると「スケザネさん!」と背後から声が。振り向くと役者の村上淳さん(以下ムラジュン)だった。その空間にマサフミとムラジュンが並んでいる姿を見たら、二人がモデルだった頃の懐かしい情景が甦った。思わず「じゃ、撮影しよう!」とボケると、マサフミが「朝5時に表参道集合ですか?」とクレバーな突っ込み。二人の後ろには、ナイキのエアジョーダンのラックがあった。「ラストダンス」の余韻を感じながらジョーダン1のミドルカットを手に取ると、去りし日々のさまざまな光景がパチパチと頭に浮かんでは消えた。

結局その日はミヤシタパークの全貌を見るだけにして、数日後、僕は再びDAYZへ行って、ジョーダン1のミドルカットとエアフォース1を手に入れた。さて、いつ履くのか?って感じだが、数日来、就寝前になると悪魔が来て、「買いなよ〜」と僕にささやいていたのだから仕方がない。

コスのオンラインストアではパンツを衝動買い。ジャストサイズが売り切れていたので、ワンサイズ上を買った。が、相当大きかったのでウエストを詰めた。最近はゴムパンに抵抗を感じない。年のせいか、流行に乗っているだけなのか?? こんなふうに太くて短いパンツに、ケンドーチャイナジャケットを合わせたかった。僕のはポータークラシック草創期のものだが、今でもほぼ同じタイプが売られている。このジャケットには流行は関係なさそうだ。このアイテムを持っててよかった。足元には厚底のエア フォース1を合わせた。ジョーダン1よりは、プロポーションをよく見せてくれるからだ。本当はネックに黒無地のシルクスカーフを巻く気でいたが、忘れてしまった。相変わらず、記憶力は高いのだが、忘れ物癖は激しい。だからいまだに“懐かしい生活様式”のまま(汗)。こりゃいかん。



(左)ケンドーチャイナジャケットは10年ほど前に購入したもの。色が落ちてきたので、京都の黒染屋さんに出そうかと迷い中。(中)ナイキ・エア ジョーダン1とエア フォース1。ともに、ミヤシタパークのDAYZで購入。秋冬にはヘビーなツイード素材などと合わせる予定。(右)コスのイージーパンツ。ゴムパン慣れが、僕の「新しい生活様式」化のキーワードになりつつある。はて、これでいいのだろうか?
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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