2026.06.10
最終更新日:2026.06.10

【ピエール瀧インタビュー】 映画『NEW GROUP』|球場が狭いほうがホームランの数は増える

俳優としても引っ張りだこで、出演する作品すべてで特異な存在感を発揮している。最新作『NEW GROUP』では、不敵な笑みを浮かべ、集団行動を扇動する校長役を演じた。とにかく馴染むこと、何事も楽しむこと。その秘訣を聞いた。

全員ちょっと頭に「?」が浮かんでた

ピエール瀧

――瀧さんが出演している『NEW GROUP』は、組体操が世界を救うという、突拍子もない物語でした。

 脚本を読んだとき、自分も「何、この話?」と思いました(笑)。でも、この内容で、この役をやってほしいというのが面白いじゃないですか。いざ撮影が始まっても、監督からは特に何も言われず、リハーサルしたらあとはどんどん回していく感じでしたね。そもそもわかったような、わからないような話だから、各シーンの意味だったりを聞くだけ野暮だと思うし、全員ちょっと頭に「?」が浮かんでたと思いますけど、あんまり考えずに、そのシーンを楽しんでやったほうがいいんだろうなって。


――作品としては、組体操という「集団⾏動」における⼈間の⾏動⼼理の根底を、コミカルにそしてシリアスに炙り出していて、その中で瀧さんは集団を導く校長先生を演じています。生徒役のみなさんとはどういうやり取りがありましたか?

 生徒役の人たちは、僕が現場に行った頃にはもうすっかりグループが出来上がっていて、みんなできゃっきゃ言っている感じだから、本当に新しい校長が赴任してきたみたいな状況であんまりコミュニケーションを取る感じではなかったですね。でも、それはそれで別にこっちはイヤじゃないし、変に気を遣われてもイヤなので、お互いいい距離感だったと思います。どの現場でも、参加する以上はなるべく楽しもうと心がけていますね。娯楽作品は楽しくつくったほうがいいじゃないですか。

ピエール瀧 2

――役づくりはどのように進めていったんですか?

 それ、よく聞かれるんですけど、ほかの人はどうやっているのか、こっちが聞きたいぐらいですよ。自分の場合でいうと、まずは馴染むようにすることですかね。農家のおじさんなら農家のおじさん、刑事なら刑事で、その物語の中のキャストとしてちゃんとそう見えることが第一前提。そこからキャラクターをつくっていく感じです。どう前に出るかというよりかは、とにかく馴染むことが最優先ですね。

瀧だけに多岐にわたっている

――お芝居することの楽しさってどういうところにあるんですか?

 自分ではないキャラクターとかやるのはやっぱり面白いですよね。あとは、ものすごくセットが精巧であるとか、「これ全部つくったの!?」みたいなところでやれたりするとテンションは上がります。テーマパークを独占しているような感じがあって。演技自体に関しては、監督がオーケーと言ったら欲しいものを提出できたということなので、そこからどう仕上がるかはあんまり興味ないというか、さほど重要ではないかな。俳優部としては、いろいろな切り身を監督に提出することが役割だと思うんですよ。求められることに対しては最大限応えるようにしますけど、自分から「こうしたい」「ああしたい」というのはないですね。機能的なパーツであればいいという感じです。


――それにしてはかなり目を引くパーツですよね。

 それはこの顔面のせいじゃないですか。たぶんね(笑)。

ピエール瀧 3

――瀧さんは、俳優のほかにも、電気グルーヴがあり、YouTubeで旅番組をやったり、ゲームや映像をつくったり、エッセイを執筆したり、活動が多岐にわたっています。

 瀧だけに。


――出た!

 ごめんなさいね。そのワードが出るとツッコんじゃうんですよ。


――ありがたいです(笑)。では、本体が電気グルーヴの活動だとしたら、そのほかのものはどういう位置づけになっているんですか?

 うーん、何だろう、、、部活かな。


――部活というのは面白いですね。

 何かそんな感じですね。じゃあ、電気グルーヴが何だと言われると、あれは暴走族です。お金がもらえる暴走族(笑)。

ピエール瀧 4

その気になれば何でも楽しめる

――やりたいことはまだまだたくさんあるんですか?

 今まで生きてきて、見てないことのほうがほとんどじゃないですか。来年還暦ですけど、たかだか60歳ぐらいの主観で見てきた世界なんて、全体で考えたらほぼ見てないに等しいと思うんですよ。だから、やれるんだったら全部やってみたいなって思いますね。


――具体的にやってみたいことは?

 さすがに今からは無理ですけど、飛行機の免許とかは欲しかったですよね。飛行機が操縦できたらさらに好きに自由なところ行けますもんね。

ピエール瀧 5

――逆に、やりたくないことって何かあるんですか?

 まず初めに苦しみありきみたいな、苦しみの向こうに何かあるみたいなものは意外と無理かも。できれば苦しくないほうがいいじゃないですか(笑)。


――どういうときに幸せだなと感じますか?

 でも、日々ずっと幸せですよ。おいしいものを食べたとかで、もう十分に幸せゾーンですから。幸せの定義って人それぞれでしょうけど、一生のうちに2~3回しかないようなことを幸せって感じるよりは、日々ちょいちょいやってくることを幸せに設定しておいたほうがいいと思うんですよね。すごくいいものを幸せとしちゃうと、届かないことのほうが多くなるわけだし。球場は狭めておいたほうがホームランの数は増えません?っていう話ですよ。


――本当にそうだと思います。

 ものの見方や考え方を変えるというか、その気になれば何でも楽しめると思うんですよね。例えば、道を歩いていて、ぽちゃっと頭の上に鳥のふんが落ちてきたとするじゃないですか。普通に考えると、「うわ、ついてないなぁ」ってなりますけど、鳥も狙って落としてきたわけじゃないから、天文学的な確率で自分の頭の上に落ちてきたってことですよね。その確率がすごくない?っていう話だし、そこから「あの鳥はどこで生まれたんだろう?」とか想像していったら話はもっと広がっていく。何事も気の持ちようというか、考え方次第でいくらでも面白がることはできると思うんですよね。

ピエール瀧 6
ミュージシャン、俳優
ピエール瀧

1967年、静岡県出⾝。89年に⽯野卓球らと結成した電気グルーヴでミュージシャンとして活動する一方、95年頃から俳優としてのキャリアをスタート。映画『凶悪』(2013年)の演技が評価され、第37回⽇本アカデミー賞優秀助演男優賞など、数々の賞を受賞。主な出演作品は、ドラマ『64(ロクヨン)』(15年)、映画『怒り』(16年)、映画『アウトレイジ 最終章』(17年)、Netflix シリーズ『全裸監督』(19年)、『サンクチュアリ -聖域-』(23年)、『地⾯師たち』(24年)など。また、ゲームや映像のクリエイター、プロデューサー、執筆業など、活動は多岐にわたる。

『NEW GROUP』
6月12日(金)全国公開

『NEW GROUP』

原案・監督:下津優太
出演:山田杏奈 青木柚 ピエール瀧

愛(山田杏奈)は引っ込み思案な普通の女子高生。家族に問題を抱えている。ある日、転校生の優(青木柚)がやってきた。海外帰りの優は日本の学校の集団行動に馴染めない。愛は優のことが気になるが、自分をなかなか出せない愛に優は苛立ちを感じていた。そんなある日、校庭で一人の生徒が四つん這いになり、動かなくなった。教師や友⼈が止めようとしても動かない。そして、時間を追うごとにその生徒の横に同じように四つん這いになる生徒が並び始めた。不思議なことに学校も人間ピラミッドを“良いもの”として参加を勧めている。そして、積み重なった生徒たちはみな一様に穏やかな表情をしている。不敵な笑みを浮かべ集団を導く校長(ピエール瀧)。どんどん集まってくる生徒たち。愛もなぜか、朦朧となり、ピラミッドに加わりそうになるーー。多様性が強調される今の時代に、集団に埋没することの幸せの意味を問う、SFサイコエンタテインメント。

配給:KADOKAWA
©︎2026 映画「NEW GROUP」製作委員会

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