大ヒット作『プラダを着た悪魔』と結び付けずには語れない!? 同作のアンサーかのような今作に、ふたりは何を見たのか。
恋とニュースのつくり方
--前作に続き、「好きな人と結ばれる」が命題だったラブコメ映画が時代の流れに沿って変化していく過渡期に作られた『恋とニュースのつくり方』(2010年)です。
高橋芳朗(以下、高橋):では、さっそくあらすじから。「テレビプロデューサーのベッキー(レイチェル・マクアダムス)は、ある日突然勤務先のローカル局から解雇を言い渡される。その後すぐにニューヨークのテレビ局から声がかかるものの、任されたのは上層部から見放された超低視聴率番組『デイブレイク』だった。彼女は番組を立て直すために伝説の報道キャスター・マイク(ハリソン・フォード)をメインに起用。同僚のアダム(パトリック・ウィルソン)とも恋仲になって公私ともにうまくいくかと思われたが、プライドの高いマイクはわがまま放題でなかなか事態は好転しない。ベッキーの努力も虚しく視聴率が下がり続けていくなか、ついに『デイブレイク』は打ち切りを告げられるが…」というお話。監督が『ノッティングヒルの恋人』(1999年)のロジャー・ミッシェル、脚本が『プラダを着た悪魔』(2006年)のアライン・プロッシュ・マッケンナということもあって、当然単なるラブコメでは終わっていない。
ジェーン・スー(以下、スー):おっしゃるとおり。通り一遍のラブコメ作品とは一線を画す、深い魅力があるよね。恋だけじゃなく、人間の関係性がていねいに描かれているからじゃないかな。それぞれの正義の話でもあるし。またしても、「10年前の作品ながら、いま観ても楽しめる作品」だわ。「自分の信条を信じること、凹んでもあきらめずに突き進むこと、ぶつかることを恐れないこと。そうすれば必ず扉は開く!」という熱いメッセージも伝わってくるしね。
高橋:仕事中心の生活になりがちな人はアバンタイトルの段階でベッキーに感情移入してしまうんじゃないかな? 朝のワイド番組のプロデューサーで毎日午前1時に起床する彼女は恋人を見つけようにも早めのランチデートするほか手段がなくて。しかも、デート中も携帯が鳴りっ放しだから気になる相手と親交を深めることすらままならないという。
スー:うん、働く女性はベッキーの最初のデートから共感しまくりだろうな。そういう意味では『プラダを着た悪魔(以下、プラダ)』的。アンディ(アン・ハサウェイ)がベッキーでミランダ(メリル・ストリープ)がマイク。舞台は「超一流の雑誌」ではなく「低迷気味のワイドショー」だけどね。
『恋とニュースのつくり方』
監督:ロジャー・ミッシェル
脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ
出演:レイチェル・マクアダムス、ハリソン・フォード、ダイアン・キートン
公開:2011年2月25日(日本)
製作:アメリカ
Photos:AFLO
ジェーン・スー
東京生まれ東京育ちの日本人。コラムニスト・ラジオパーソナリティ。老年の父と中年の娘の日常を描いたエッセイ『生きるとか死ぬとか父親とか』がドラマ化(テレビ東京 金曜日0:12~)TBSラジオ『生活は踊る』(月~木 11時~13時)オンエア中。
高橋芳朗
東京都出身。音楽ジャーナリスト/ラジオパーソナリティー/選曲家。著書は『ディス・イズ・アメリカ 「トランプ時代」のポップミュージック』『生活が踊る歌』など。出演/選曲はTBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』『アフター6ジャンクション』『金曜ボイスログ』など。