運命といえる愛を実らせた恋人が
教えてくれる人生に大事なもの

1970年代のニューヨーク。幼い頃からともに育ち、自然と愛を育んだ19歳のティッシュと22歳の恋人ファニー。運命の相手を互いに見出した2人に、新しい命が授けられた。「赤ちゃんができたの」。ティッシュは努めて笑顔で話す。ファニーは無実の罪で留置所にいる。彼はティッシュの言葉を面会室のガラス越しに聞いた。小さないさかいで白人警官の怒りを買った彼は、身に覚えのない強姦罪で逮捕されてしまったのだ。有罪となれば刑務所で恥辱に満ちた日々を送るしかない。2人の愛を守るために家族と友人たちは、ファニーを助け出そうと奔走するが、そこにはさまざまな困難が待ち受けていた…。

純粋な心を持つティッシュとファニーの愛を育む過程が、実に心地いい。幼馴染から生まれた好意は、恋人同士が共有する愛情へ、そして両親たち家族を含めた絆へと発展していく。これこそ純愛だ、と心を打つ。その一方で、冤罪で投獄された恋人ファニーを一途に想いながら、無実を証明するために懸命に闘うティッシュの姿が描かれる。こちらが見惚れるほどの2人のピュアな愛情と、目を伏せてしまいたくなるほどの不遇な時代を過ごす人たちの境遇がリアルに入り混じる。そして、物語を観ていくうちに、劇中の会話も出来事も少なからず現代社会に通じると感じるだろう。つまりは、昔も今も人間社会はあまり変わっていない。ただ、ティッシュの家族をはじめ、愛を信じる人が変わらずいることも救いなのだ。目の前にどんな障害があっても「愛は正義」と希望を与えてくれる。

「愛があったからお前が生まれた。愛を信じるならうろたえないで」(現状に不安を感じているティッシュに母親がかける言葉)

「愛し合う人間が好きなんだ、色は関係ない。俺はただ母親の息子でしかない。人間の違いは母親が違うだけだ」(不動産仲介の青年がファニーに応えた言葉)

本作を手掛けたのは、『ムーンライト』で2017年アカデミー賞作品賞に輝いたバリー・ジェンキンス監督。ティッシュ役は、シカゴの演劇界で活躍し、L.A.に越してきてわずか3ヶ月でこの役を射止めた新人女優キキ・レイン。ファニー役は、2016年の『栄光のランナー/1936ベルリン』で注目を集めたステファン・ジェームスが務める。若手俳優によるフレッシュな演技と感性を、気鋭監督が『ムーンライト』と同じチームで官能的な映像美で紡いだ、本年度アカデミー賞大本命作品だ。ぜひ劇場で、この感動に酔いしれてほしい。

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『ビール・ストリートの恋人たち』

監督:バリー・ジェンキンス
出演:キキ・レイン、ステファン・ジェームス、レジーナ・キング、テヨナ・パリス、コールマン・ドミンゴほか
2019年2月22日より全国公開
©2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

『ビール・ストリートの恋人たち』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi