当人同士の気持ちだけではうまくいかないこともある“結婚”。異人種、宗教、育ってきた環境etc。笑いの中にある深く考えさせられる問題にふたりは何を思うのか?
ユー・ピープル〜僕らはこんなに違うけど〜
――今回取り上げるのは、ネットフリックスオリジナル映画『ユー・ピープル 〜僕らはこんなに違うけど〜』(2023年)。今年の頭に配信がスタートされたばかりの新しい作品ですね。
高橋芳朗(以下、高橋):まずは簡単にあらすじから。「ロサンゼルス在住のユダヤ系青年エズラ(ジョナ・ヒル)とムスリムのアフリカ系女性アミラ(ローレン・ロンドン)はひょんなことから出会い、恋に落ちる。育ってきた環境も文化的背景もまったく異なるふたりだったが、結婚を決めて両家の顔合わせに挑むことに。ただ、アミラの父アクバル(エディ・マーフィー)は娘の相手には自分たちと同じ黒人がふさわしいと考え、一方のエズラの母シェリー(ジュリア・ルイス=ドレイファス)はアミラを快く受け入れつつも人種をめぐる不用意な発言を連発して空回り。そんな厄介な親たちのもと、はたしてエズラとアミラの結婚はうまくいくのだろうか?」というお話。設定としては異人種間の結婚をテーマにした『招かれざる客』(1967年)の現代版といったところだけど、結婚相手の親に気に入られようと奮闘する主人公の姿を描いたコメディということでは『ミート・ザ・ペアレンツ』(2000年)の異人種カップル版としても観ることができるよね。
ジェーン・スー(以下、スー):この連載でも取り上げた『ハピエスト・ホリデー −私たちのカミングアウト』(2020年)は『ミート・ザ・ペアレンツ』のLGBTQ版だったね。「わかりあえない可能性がある相手との衝突」から始まる設定は、割とラブコメ作品では定番かも。「相互理解までの道」を描くことで、物語を動かしやすいからね。
高橋:ユダヤ系のエズラとムスリム家庭で育ったアフリカ系のアミラの前には「異人種」と「異宗教」のふたつの壁が立ちはだかるわけだけど、エズラがヒップホップカルチャーにどっぷりつかっていることでまた話が複雑になってくる。
『ユー・ピープル〜僕らはこんなに違うけど〜』
監督:ケニヤ・バリス
脚本:ジョナ・ヒル、 ケニヤ・バリス
出演:ジョナ・ヒル、ローレン・ロンドン、エディ・マーフィ、ジュリア・ルイス=ドレイファス
製作:アメリカ
Netflix映画「ユー・ピープル ~僕らはこんなに違うけど~」独占配信中
ジェーン・スー
東京生まれ東京育ちの日本人。コラムニスト・ラジオパーソナリティ。老年の父と中年の娘の日常を描いたエッセイ『生きるとか死ぬとか父親とか』がドラマ化。近著は大人気ポッドキャスト初の公式ファンブック『OVER THE SUN 公式互助会本』。TBSラジオ『生活は踊る』(月~木 11時~13時)オンエア中。
高橋芳朗
東京都出身。音楽ジャーナリスト/ラジオパーソナリティー/選曲家。著書は『ディス・イズ・アメリカ 「トランプ時代」のポップミュージック』『生活が踊る歌』など。出演/選曲はTBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』『アフター6ジャンクション』『金曜ボイスログ』など。
Composition&Text:Mayu Yamamoto