2022.12.20

【チェンソーマン】松本壮史(映画監督)「デンジとマキマと映画」

斬新なキャラクター造形に、ダイナミックなアクションシーン、意表を突きまくりのストーリー展開。いま最も注目すべきマンガ『チェンソーマン』。第2部スタート、そして待望のアニメ化など、怒濤の快進撃を続ける衝撃作の魅力とは何なのか? アニメ・原作関係者、ファンなど9人が熱すぎる思いを激白する。

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松本壮史(映画監督) 「デンジとマキマと映画」

※マンガ原作を未読で、アニメ版のみ
視聴している方には、
キャラクターや
ストーリー上のネタバレを含みますので、
ご注意ください。

 『チェンソーマン』は、エネルギッシュでスリリングなバトルの要素と日常シーンの些細な豊かさが同居した素晴らしい作品だと思います。

 中でも作品を引っ張っているのは、藤本先生が生みだすキャラクターの魅力が大きいと思います。まずデンジのキャラ造形が素晴らしい。多くの少年マンガは主人公を魅力的に描けず、人気はサブキャラに集中してしまいます。しかしデンジは違う。こんなに純粋であり不純でもある奴いないですよ。デンジが成長していく様はまさに主人公のあるべき姿ですが、その成長の仕方が歪んでるのでとてつもなく面白いのです。マキマもとんでもないキャラですよね。こんなにも強くて底知れぬ存在を僕は知りません。しかも愛犬家で、ティラミスを手作りしてて部下の飲み代もきちんと払ってくれる。このバランスがたまらないです。魅力的な主人公と魅力的な敵がどっしりと作品の中心にいることこそ、本作最大の強みではないでしょうか。

 よく語られますが「映画的なマンガ」だと僕も思います。特にレゼ篇は2時間の映画を意識したのでは?と思ったりもします。

 雨宿りするために入った電話ボックスでの出会いという、非常に映画的なシーンから始まり、夜の学校、プール、屋上という青春の必殺モチーフにタッチしながらの殺し合いを経て、淡い失恋に着地する。血しぶき飛び交うこのボーイミーツガール劇は作中屈指のエピソードではないでしょうか。

 最後に僕がいちばん好きなシーンを。あまりにも正反対なデンジとマキマという二人が映画を観ながら同じシーンで涙を流すところが大好きです。作中で唯一、二人の心が近くにあった瞬間だと思います。「藤本先生は映画(ひいては物語)の力を信じてるんだなあ」と勝手に胸が熱くなりました。いつか藤本先生には、とんでもない予算を使って好きな映画を撮ってほしいです。


SOUSHI MATSUMOTOプロフィール画像
SOUSHI MATSUMOTO
1988年埼玉県生まれ。映像・映画監督。代表作は映画『サマーフィルムにのって』『青葉家のテーブル』、ドラマ「お耳に合いましたら。」など。2023年春にコミック原作の「ながたんと青と」をWOWOWでドラマ化。好きなキャラはデンジ。


Text:Soushi Matsumoto

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