空間を一変させる現代アーティストの
展覧会を六本木で堪能せよ!

 国立新美術館開館15周年を記念して開催されているのが、「もの派」を代表する作家・李禹煥さんの都内では初となる大規模回顧展です。もの派とは、1960年代末から日本で起こった美術の流派で、石や木、鉄板といった“もの”を、ほとんど手を加えることなくそのままの形で作品として発表しました。余計なものを削ぎ落とす、日本らしい美術の動向といえましょう。


李禹煥_国立新美術館開館15周年記念

《関係項―アーチ》2014年/2022年 作家蔵 撮影:山本倫子


さて、会場には、初期作から最新作まで李さんが半世紀を超える作家活動で生み出した代表作の数々が勢ぞろい。パッと見は、ただ木材や石が置かれているだけに感じられるかもしれませんが、絶妙なバランス、配置によって、空間全体が不思議と聖域のような雰囲気を漂わせています。なお、屋外には2014年にヴェルサイユ宮殿で発表された《関係項―ヴェルサイユのアーチ》のバリエーションを展示。この作品があるだけで、普段見慣れた六本木の風景が一変して見えます。


クリストとジャンヌ=クロード_包まれた凱旋門_21_21 DESIGN SIGHT

Photo: Masaya Yoshimura


 見慣れた景色を一変させる芸術家といえば、クリストとジャンヌ=クロードも。ともに1935年6月13日生まれという美術界きってのおしどり夫婦でした。彼らはこれまでに、NYのセントラルパークに鮮やかな色の布製の門を約7500個設置したり、コロラド州にある二つの山の中腹に幅約380mのカーテンをかけたり、シンプルながら途方もない労力と金額がかかるプロジェクトを多数実現させてきました。そんな彼らが約60年前から構想していたのが、凱旋門を巨大な布で包むというアイデア。物理的にも行政的にも、無謀としか思えないプロジェクトが、ついに2021年秋に16日間にわたって実現されました。巨大な布はどのように作られ、一体誰がどうやって覆い、ロープで縛ったのか。前代未聞のプロジェクトの構想から実現までの軌跡、苦労や困難の数々が、21_21 DESIGN SIGHTで開催中の展覧会では、多くの記録画像や映像を使って余すところなく紹介されています。できっこないをやらなくちゃ。無性にそんな気持ちになる展覧会です。

 とりあえず私は汚れた自分の部屋をスッキリと一変させるところから始めてみます。


『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』
【国立新美術館】
東京都港区六本木7の22の2 
開催中~11月7日
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://leeufan.exhibit.jp/

『クリストとジャンヌ=クロード
“包まれた凱旋門”』

【21_21 DESIGN SIGHT】
東京都港区赤坂9の7の6
開催中~2023年2月12日 
TEL:03-3475-2121
https://www.2121designsight.jp/



とに〜
世界でただ一人のアートテラー。難解で敷居が高い美術のイメージを払拭すべく、元吉本芸人ならではの視点で面白おかしく美術の魅力を伝える。公式ブログはこちら



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