ショッピングモールで展開される
ゾンビバトル&恋愛&ミステリー!

バレンタインもクリスマスも昔に比べれば恋愛要素は減っている気がするが、エンタメの世界では恋愛は今も人気のテーマである。パニックものも例外でなく、極限状況で生き残った者同士に恋が芽生えることは珍しくない。映画『ゾンビ』のリメイク版『ドーン・オブ・ザ・デッド』(ザック・スナイダー監督)でも、主人公の看護師と一緒にショッピングモールに逃げ込んだ準主役級の男が恋仲となった。

その『ドーン・オブ・ザ・デッド』へのオマージュ満載なのが本作だ。成田空港着の国際便から拡大した謎の感染症により、街はゾンビだらけに。運よく難を逃れた主人公・水上梨々(17)を含む9人がショッピングモールに立てこもる。しかし、警察官の男はなぜか外に飛び出してゾンビに食われ、東大生とモデルの即席カップルはバイクで脱出。残った6人のサバイバル生活を描く。

バカンス気分でモールの商品を使い放題、屋上にSOSを描くなど、映画との共通点は多い。違うのは銃器を所持していないことと、全員が若いということだ。最年少は高校生の梨々で、最年長が情報商材会社社長と菜食主義の美女(25)。そして登山家の男(23)、ユーチューバーの女(20)、フリーターの男(19)。のちに梨々の同級生男子(17)とその姉(年齢不詳)が加わる。そんな若い男女がひとつ屋根の下に暮らす――そう、本作はゾンビものであると同時にシェアハウス恋愛ものでもあるのだった。



しかも、登場人物が一筋縄ではいかないヤツばかり。梨々は頭脳も身体能力もバツグンだが出自に秘密がある。登山家は超ナルシスト、フリーターは裏社会の住人っぽく、菜食主義の女も怪しくて…。メンバーの過去や素性、関係性が少しずつ明らかになっていく展開は、一種のミステリーとしても見ごたえがある。

ポップな絵柄でグロテスクさは少なく、アクションの見せ方もうまい。個性的なキャラと粋なセリフ回しの群像劇は、実写でも映えるだろう。ゾンビ役のエキストラは大勢必要だが、舞台は固定でメインキャストは少なくてすむ。タイトルの「6人」とは結局どの6人になるのか。仕掛け好きそうな作者なので予断を許さないが、とりあえずネトフリとかでやってほしい。


『生き残った6人によると』
山本和音  
1~2巻発売中/KADOKAWA
(ハルタ連載中)

ゾンビものとシェアハウスものが、まさかの超合体! キレのあるアクションと粋なセリフに謎めいた人物たちの思惑が絡み合う、先の読めないゾンビパニック恋愛ミステリーだ。



南 信長
マンガ解説者。朝日新聞ほか各雑誌で執筆。著作に『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』『1979年の奇跡』など。2015年より手塚治虫文化賞選考委員も務める。