モネを見比べ、“初来日”組を愛でる。
芸術の秋らしい二大展覧会が開催!

芸術の秋が本格的に到来! 現在、東京ではイスラエル博物館が誇る近代美術コレクション69点が一堂に会す展覧会が、大阪では「美の百科全書」ことメトロポリタン美術館所蔵の珠玉の名画65点を紹介する展覧会がそれぞれ開催されています。王道の西洋絵画が集結しともに出展作品の大半が“初来日”。まだ気軽に海外に行けない今、名画が会いに来てくれています。

偶然か、それともモネ好きの日本人が多いゆえの必然か。どちらの展覧会にもモネによる睡蓮の絵が出展されています。モネがその生涯で描いた睡蓮の絵は200点以上とも。三菱一号館美術館で見られるのは、そんな数ある睡蓮の絵の中で「当たり年」とされる1907年に描かれた《睡蓮の池》です。一方、大阪市立美術館で目にすることができるのは70代後半のモネが描いた《睡蓮》。筆触は荒々しく、まるで抽象画のよう。その革新的でロックな画風は次世代の画家たちに大きな影響を与えました。


レッサー・ユリィ《夜のポツダム広場》
1920年代半ば、油彩/カンヴァス、79.6 × 100.0 cm、イスラエル博物館蔵 
Photo ©The Israel Museum, Jerusalem by Avshalom Avital


さて、それぞれの展覧会で個人的に注目している画家がいます。日本ではまだ無名ですが、今展を機にブレイクする可能性が高い二人です。一人はイスラエル博物館から4点の絵画が初上陸したレッサー・ユリィ。ポーランド出身で主にベルリンで活動したユダヤ系の画家です。約100年前の絵画とは思えないほど現代的でスタイリッシュ、かつエモい画風は口コミやSNS上で話題に。ひと目見た美術ファンの心をわしづかみにし、なんと展覧会初日にしてポストカードが完売したのだそう。こんなことは前代未聞。早くも伝説の画家誕生のフラグが立っています。


マリー・ドニーズ・ヴィレール《マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没)》
1801年 油彩/カンヴァス 161.3 × 128.6 cm
Mr. and Mrs. Isaac D. Fletcher Collection, Bequest of Isaac D. Fletcher, 1917 / 17.120.204


メトロポリタン美術館展で注目したいのは、マリー・ドニーズ・ヴィレール。まだまだ女性の職業画家が少なかった18世紀後半のフランスで活動していた女性です。掲載した作品は、長年、馬にまたがるナポレオンの肖像画で知られる巨匠ジャック=ルイ・ダヴィッドの手によるものと考えられていました。そう間違われるほどの腕の持ち主です。逆光の中でこちらを無表情に見つめる女性モデル。大きく割れた窓ガラス。奥に見えるカップル。「元祖、匂わせ!?」とすら思う意味深な絵画たちです。モネもいいけど次くる画家もね。


『印象派・光の系譜──モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン』
【三菱一号館美術館】
東京都千代田区丸の内2の6の2
開催中~2022年1月16日 
TEL:050-5541-8600
https://mimt.jp/israel/

『メトロポリタン美術館展/西洋絵画の500年』
【大阪市立美術館】
大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1の82
開催中~2022年1月16日 
TEL:06-4301-7285(大阪市総合コールセンターなにわコール)
https://met.exhn.jp/
※本展は2022年2月9日〜5月30日に東京・国立新美術館に巡回します。



とに〜
世界でただ一人のアートテラー。難解で敷居が高い美術のイメージを払拭すべく、元吉本芸人ならではの視点で面白おかしく美術の魅力を伝える。公式ブログはこちら


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