豪華役者陣が演じる、男女9人の恋愛群像劇。とにかく、UOMO読者はブラッドリー・クーパーに注目! 恐怖を覚えること間違いありません。
そんな彼なら捨てちゃえば?
――今回は2009年公開の『そんな彼なら捨てちゃえば?』です。ラブコメ過渡期の作品ですね、いかがでした?
ジェーン・スー(以下、スー):出会いを探している女性にとっては「ですよねえ…」とうなだれる場面が多かったんじゃないかな。「うすうすわかってはいましたが…」という。実践的なアドバイスが多すぎて、夢見がちなラブコメらしいオチが全然頭に入ってこないんだけど(笑)。
高橋芳朗(以下、高橋):フフフフフ、確かにこれは夢を見させてくれる映画というよりは自分の恋愛を省みる映画かもなー。一応、最後には「幸せな結末はきっと前に進むこと」「どんなに恥をかいても望みを捨てないこと」というポジティブなメッセージで締めくくってはくれるんだけどね。では、まずは簡単にあらすじを。「いつも空回りしてしまって一向に運命の相手と出会えないでいるジジ(ジニファー・グッドウィン)、同居してから7年経ってもまったく結婚する気のないニール(ベン・アフレック)と本音を隠しつつも実は結婚を望んでいるベス(ジェニファー・アニストン)のカップル…。メリーランド州ボルチモアを舞台に、さまざまな事情を抱えた男女9人の恋模様が交錯していく」という群像劇。出演もしているドリュー・バリモアがエグゼクティブプロデューサーを務めていることで話題になった作品だね。
スー:エンディングは確かに前向きなんだけど、それまで実戦型ノウハウの伝授っていうかなんていうか、傭兵テクニックみたいなのばっかり習っちゃうとね!
高橋:「男性のムカつく行動は好意の裏返し? なぜ女は男の行動を別物に仕上げるんだ?」というアレックス(ジャスティン・ロング)の問いかけが印象的だったけど、そもそもこの映画って『セックス・アンド・ザ・シティ』の脚本を手がけたグレッグ・ベーレントとリズ・タシーロが出版した『恋愛修行 最高のパートナーと結婚するための恋愛心得』が原作だもんね。
スー:そうそう。原作は恋愛ハウツー本なのよね。原書で少し読んだけど、あまりに手厳しいんで、そっと本を閉じたわ(笑)。昔さ、『Rules』というベストセラー婚活本があって、旧態依然とした性役割の振り分けに基づいたルールが書かれているから、すべてに頷くことはできないんだけど、それも「男はその気があれば追っかけてくる」というものだった。基本的にはそれと同じね。ところでさ、この作品って免許取るためのときに見させられる動画みたいじゃない? って、免許持ってないけど(笑)。
高橋:交通安全教育ビデオね。「事故を起こすとこんな悲惨なことになるぞ!」って教習生をビビらせるやつ。
スー:それそれ。豪華な俳優陣が、繰り返し傷口に塩を塗るように「その男はあなたに本気じゃないよ」って実践的な学びを授けてくる。作品としては、取っ散らかってるところがややあるのは否めない。
高橋:まったく。群像劇としてはやや散漫だし、物語の推進力も弱いと言わざるを得ない。でも、そんな欠点を補って余りあるほどにキャストが豪華。ベン・アフレック、ジェニファー・アニストン、ブラッドリー・クーパー、スカーレット・ヨハンソン、ジェニファー・コネリー、ジャスティン・ロング、そしてとどめにドリュー・バリモア!
『そんな彼なら捨てちゃえば?』
監督:ケン・クワピス
脚本:アビー・コーン、マーク・シルヴァースタイン
出演:ジェニファー・アニストン、ベン・アフレック、ブラッドリー・クーパー、スカーレット・ヨハンソン
公開:2009年8月1日(日本)
製作:アメリカ
Photos:AFLO
ジェーン・スー
東京生まれ東京育ちの日本人。コラムニスト・ラジオパーソナリティ。老年の父と中年の娘の日常を描いたエッセイ『生きるとか死ぬとか父親とか』がドラマ化(テレビ東京 金曜日0:12~)TBSラジオ『生活は踊る』(月~木 11時~13時)オンエア中。
高橋芳朗
東京都出身。音楽ジャーナリスト/ラジオパーソナリティー/選曲家。著書は『ディス・イズ・アメリカ 「トランプ時代」のポップミュージック』『生活が踊る歌』など。出演/選曲はTBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』『アフター6ジャンクション』『金曜ボイスログ』など。