メルセデス・ベンツゲレンデヴァーゲン

NEATのデザイナーにして、ブランドPR会社NISHINOYAの代表を務める西野大士さんと、愛車のメルセデス・ベンツ230GEアーベントイヤー(1987年型)。


超絶希少モデルと運命の出会い

西野大士さんが1987年型のメルセデス・ベンツ「230GEアーベントイヤー」を手に入れたのは、2019年のこと。

「それまで、2台続けて70系という古いランクルに乗っていたんです。カクカクしたSUVが好きなんですね。そこで次はゲレンデかディフェンダーにしようと思って、探していました」

毎日インターネットでお目当てのショップを巡回して4カ月、マウスを握る西野さんの手が止まった。

「毎日チェックしていたお店で、このクルマを見つけたんです。すぐに電話して、次の日には見に行きました。で、5分後には買うって決めました(笑)。ショートボディの230GEを探していたんですが、アーベントイヤーという日本で50台の限定モデルだったんです。現存するのは数台らしくて、これだー! って感じです。

僕が見に行った日の午後にはこのクルマを狙う他のお客さんが来店するというアポが入っていたみたいで、このタイミングを逃していたら僕のところには来ていなかったでしょうね」



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(1枚目から右へ)
・「新しいゲレンデは歩行者を保護するために、万が一ぶつかった時にこのウィンカーランプが下に落ちるようになっているそうです」と、新旧ゲレンデの違いを語る西野さん。
・「フォグランプの付いているゲレンデを探していたので、その点でも希望通りの個体でした」
・「おそらく当時はヤナセが正規代理店で、正規輸入はあったと思います。これは、ジャパン社ができた時の記念と聞いていますが、定かではありません」
・赤いラインがアーベントイヤーという仕様の特徴のひとつ。たくさんのゲレンデが東京を走っているけれど、このラインが入っている仕様は見かけない。
・ボディの下部は色と素材を変え、ツートーンになっていることもアーベントイヤーの特徴だ。
・230GEは、2.3ℓのガソリンエンジンを搭載した仕様。当時のゲレンデには4ドアのロングボディも存在したが、西野さんは2ドアのショートボディを探していた。


エアコンはダイヤルの「2」まで

晴れて西野さんのガレージに収まったゲレンデだが、当初は驚きの連続だったという。

「信号待ちで、なんか周りが騒がしいなぁと思っていたら、えっ!? 俺のクルマから出ている煙だ、って気づいたり、あまりの振動にビビったり。うちの嫁さんはこんなのゲレンデじゃないと言いましたね。古くて、窓も手でぐるぐる回す手動式だったので(笑)。すごく遅くてスピードを出すとノイズもすごいから100km/h以上は出したことがないし、最高に遠出をしたのも御殿場までです。あとエアコンからえらい音が出るので、風量はダイヤルの2までと決めて、3以上は使っていません(笑)」

とは言いつつも、基本的には気に入っている様子だ。

「自分で運転をしているという実感はものすごくありますね。自宅から神宮前の事務所まで、片道10kmの通勤でほぼ毎日乗っています。オーディオは当時の純正だからカセットなんですけど、Bluetoothでスマホの音が飛ばせるので、問題ありません。ただ、前に乗っていたランクルは壊れたり調子が悪くなることがほとんどなく、国産車はすごいなと改めて感じます(笑)」


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(1枚目から右へ)
・「基本、いつもハンドルが揺れているような気がします(笑)」と西野さん。この時代のゲレンデは、悪路を走ることを目的としたハンドルの仕組みを採用しているのがその理由だ。
・「メーターが機械っぽいところが好きです。最近の、液晶やデジタル表示のものより道具っぽい感じがいいです」
・当時のオリジナルのオーディオ。CD対応の新しいタイプに入れ替えられた個体が多い中、オリジナルは貴重だという。
・副変速機やセンターデフロックなど、本格的なオフロードを走るためのメカニズムを搭載している。
・230GEのインテリアには、内装の内貼りとシートにタータンチェックが使われている。ここも西野さんのお気に入りのポイントだという。
・地図を読むためのマップランプ。「細かいところですけど、実はここも時代を感じさせてくれるのと道具っぽさで、グッとくるポイントです」とのこと。


必要な要素だけで構成したスタイルが好き

実はこの日の撮影を担当したフォトグラファーのホシダ氏もほぼ同じ年式のゲレンデに乗っている。ホシダ氏から、合法的にハイパワーのエンジンに載せ換えてくれるガレージがあると聞いた西野さんは、興味津々の様子だ。

「ホントに遅いんですよ(苦笑)。高速とか登り坂ではみなさんにご迷惑をおかけするぐらいで、もしもうちょっと加速がよくなったら、活躍する機会が増えると思うんですけど」

でも、遅い遅いとボヤきつつも気に入っているのは、「やっぱり格好がいい」からだ。

「僕のデザインするパンツもそうなんですけど、必要な要素だけのスタイルが好きで、飾ったり盛るのは好きじゃない。このゲレンデも道具っぽくて装飾的な要素がありません。代わりのクルマがないから、できるだけ長く乗りたいですね」

もし可能であれば、スポーツカーがもう1台あれば理想的だという西野さん。希望は「空冷エンジンだった頃のポルシェ911」とのことで、確かに911も必要な要素だけのスタイルだ。ご自身がデザインするパンツからクルマまで、西野さんのこだわりは一貫している。



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西野大士/にしのやディレクター
1983年生まれ、淡路島出身。小学校の教師をするかたわらバンタンデザイン研究所に通い卒業。老舗アメトラブランドの販売員を経てプレスに。退職後、様々なブランドのPRを担当しながらトラウザーズ専業ブランド「NEAT」を立ち上げる。現在は、プレスオフィス「NISHINOYA」も経営し、国内外20ブランド以上のPRを担当する。


Photos:Teppei Hoshida
Text:Takeshi Sato