NISSAN Skyline GT-R R32 EV

GT-Rが真の相棒になる日
日産の歴史、いえ、日本車の歴史においてもR32型のスカイラインGT-Rは間違いなく名車中の名車です。’80年代から’90年代初頭のバブル景気絶頂期に、あらゆるメーカーがハイスペックなクルマを市場投入する中、ストリートとサーキットに存在感を強烈に知らしめたのが、R32 GT-Rでしょう。海外で「ゴジラ」と呼ばれるゆえんも、まさにそこにあります。
そんなR32 GT-Rが、日産のEVモデルを最前線で開発するエンジニアたちによって、EVへとコンバートされるプロジェクトが敢行されました。昨今の国産スポーツカー(JDM)ブームの高まりとともに、GT-Rには信者といえる熱烈なエンスージアストが世界中に多く存在します。となれば、その象徴ともいえるツインターボエンジンを降ろしてモーターに載せ替えるなど言語道断…という声が上がるのも当然です。しかし、ひるむことなく果敢に挑戦を続けた日産の姿勢は、大手メーカーにしては珍しい、きわめて価値ある取り組みだといえるでしょう。プロジェクトリーダーの平工良三さんによれば「R32のフィールをデジタルで再現できれば、30年後でもR32 GT-Rの魅力を味わえる」と言います。「EV化はそのための手段にすぎず、言うなればクルマのデジタルリマスター版」とも。
将来的にAI技術がさらに発達すれば、EVになったGT-Rとドライバーの新たなコミュニケーションが考えられるはず。GT-Rがより相棒らしくなる日がくると思えば、EV化も悪くないのでは?


よく見ると、メーター類はデジタルにアップデートされ、もともと給油口だった場所がEVの給電口に。実はホイールもインチアップして、ブレーキには現行GT-Rのユニットがインストールされています。ただパッと見はオリジナル然とした点こそが、このR32 EVの最も魅力的な点でしょう。能ある鷹は爪を隠すといいます。
オンラインモーターマガジン「DRIVETHRU®」ディレクター。初代BMW3シリーズのEV化や、移動式充電機《モバイル SS》を考案し、オリジナルキャラ・おあしす教授に扮して普及に奮闘中。「2025-2026 日本カー・オブ・ザ・イヤー」選考委員。