MOBILE SS

EVにこだわる理由
息子が生まれてからでしょうか。人生の主役が息子にスイッチしたかのような感覚を覚えるようになったのは。同時に自分の人生よりもはるか先の未来が他人事でなくなった気がします。そう考えると、本当の意味で持続可能なモビリティとは何なのか。そんなテーマがライフワークとなりました。
本連載では電気自動車(EV)に「夢」があるか追求したわけですが、今回で最終回。偶然にも東日本大震災の復興イベントに参加して、福島第一原発のある大熊町を訪ねてきました。ご存じのとおり、今も廃炉作業が続いています。メインの画像は、そんな原発近くに移動式EV充電スタンドとして企画した「モバイル SS」を停めてソーラー充電する様子です。背後の巨大な鉄塔は、かつて原発からの莫大な電力を東京に送電していました。一方、モバイル SSはわずかばかりのソーラーの力で発電し、大容量のバッテリーに蓄えればEVにだって充電できる。
あらためてEVの魅力を考えてみると、最先端のテクノロジーや未来的なデザインなどさまざまですが、「電気はつくれる」ことが面白いように思えます。さすがにガソリンは油田でもない限り大量にはつくれませんが、電気は比較的簡単につくることができる。きわめてミニマムな発想ですが、一人一人が発電する意識があれば、発電所だって必要なくなる未来も考えられます。
身体にいい食事をしたら調子がいいように、サステナブルなエネルギーでドライブすると、とても気分がいいものです。

原発を背景にモバイル SSを停めて、コンバートEVのBMWを充電してみる。自ら発電した電力でドライブすると他人任せだった電気への意識が変化する。

現在、モバイル SSは量産化に向けて新たなモデルを計画中。インフラのない場所でも気軽に現代のオアシスがつくれるよう開発を進めている。
オンラインモーターマガジン「DRIVETHRU®」ディレクター。初代BMW3シリーズのEV化や、移動式充電機《モバイル SS》を考案し、オリジナルキャラ・おあしす教授に扮して普及に奮闘中。「2025-2026 日本カー・オブ・ザ・イヤー」選考委員。