時計には大切な人から譲り受け、次の世代に託す楽しみがある。祖父、父、恩師から思い出の一本を受け継いだ6人に、そのエピソードを教えてもらった。また、彼らが未来へ引き継ぎたいと思っている特別な一本とは。
広告代理店、BLUE BOTTLE COFFEEを経て、この秋、三軒茶屋においしさとサステナビリティの両立を目指すカフェ「SAMAA_」をオープン。時計は少数精鋭主義で、2本を使い分け。
(受け継いだ時計)ROLEX / ’90年代のデイトジャスト
20年前に祖母が購入して、父にプレゼントした「デイトジャスト」。村上さん自身、若いときにつけていた「GMTマスターⅡ」以来の久しぶりのロレックス。ケース径が小ぶりで水仕事のときも気にせずつけていられる仕様なので、最近は出番が多い。自動巻き。SS。ケース径34㎜。/私物
(引き継ぐ時計)JAEGER-LECOULTRE / 2000年のレベルソ
2000年の結納返しの「レベルソ」は、文字盤に飾りのないシンプルな2針モデル。ベルトは何度か交換しており、現在は裏面にラバーコーティングが施されたカミーユ・フォルネの革ベルトを装着している。カジュアルスタイルの格上げ役に。手巻き。SS。ケースサイズ37㎜×22㎜。/私物
形見分けで譲り受けた時計が、お守りのような存在に
2年前に父が亡くなり、ロレックスの「デイトジャスト」を受け継ぎました。これは父が社長に就任した際、祖母が贈ったものです。祖母は好奇心旺盛な面白い人で、少し吝嗇な一面もあったせいか、百貨店の催事の質流れ品を買ったそう。ローマン数字の文字盤は、正直、あまり好みではなかったんですが、それでもお祝いの時計だから縁起がいいかと、譲り受けました。当時、丸の内にあったロレックスサービスセンターでオーバーホールしてから使っています。この文字盤を見ると父のことを思い出すので、自分のコーヒーショップを出店した今は、お守りのような存在になっていますね。父も社長になるまでずいぶんと大変な思いをしたと思うので、つらいときに「父はどう踏ん張っていただろう…」と考えて力をもらっている部分もあるんです。
ジャガー・ルクルトの「レベルソ」は25年前に、結婚したときの結納返しで妻の母からいただいた時計。当時はスーツを着て仕事をしていたので、革ベルトのドレスウォッチをリクエストしました。自社ですべて時計を作っているというストーリーや、文字盤をひっくり返すと鏡面仕上げのステンレスが現れるデザインが気に入っています。自分は、服もギアもスタンダードなアイテムが好き。今、大学院で建築を学んでいる次女と好みが似ているので、ケースが小ぶりな「レベルソ」は、いつか彼女に引き継いでもらえたらうれしいですね。