時計には大切な人から譲り受け、次の世代に託す楽しみがある。祖父、父、恩師から思い出の一本を受け継いだ6人に、そのエピソードを教えてもらった。また、彼らが未来へ引き継ぎたいと思っている特別な一本とは。
メイデンズショップを経て2021年に独立。ECセレクトショップのWEAREALLANIMALS、Tシャツを中心としたレーベルSTUDIO WEAREALLANIMALSを運営。時計は2本のみ。
（受け継いだ時計）TUDOR / ’90年代のプリンス オイスターデイト サブマリーナー（ミニサブ）
当時チューダーから「サブマリーナー」のケース径が小ぶりのものが「ミニサブ」として発売された。3年前にもらって、そのまま日常使いしている。「インヂュニア」の文字盤が白のため、黒文字盤の｢ミニサブ｣を持ってから使い分けできるように。自動巻き。SS。ケース径33㎜。／私物
（引き継ぐ時計）JAEGER-LECOULTRE / マスター・コントロール・デイト
’50年代のラウンド形状を再解釈したクラシックなデザインの「マスター・コントロール」コレクション。30代ではまだ早いと思ったジャガー・ルクルトも、40代になれば似合うはずだと、最近欲しい気持ちが再燃している。自動巻き。SS。ケース径40㎜。￥1,540,000／ジャガー・ルクルト
幸運を呼び込む時計は師匠からの「お裾分け」
サンカッケーのデザイナー、尾崎雄飛さんとは前職のメイデンズショップ時代に知り合い、ファッションから嗜好品までを教えてもらった師匠のような先輩です。30歳で初めて高級時計、IWCの「インヂュニア」を買ったときも一緒に来てくれ、「平沢は手首が細いから33㎜径くらいの、長く使えるシンプルなものがいいよ」とアドバイスしてくれました。このチューダーの「ミニサブ」は、僕が独立して1年ほどした頃、尾崎さんからいただいたもの。当時まだ仕事が軌道にのっておらず、尾崎さんに頻繁に相談をしていたんです。そんなある日、「まだ独立祝いを渡していなかったよね。ちょっと遅れたけれど」と、突然プレゼントされて驚きました。「俺はいつもうまくいっているからお裾分けな（笑）」とエールも送ってくれた。そのときは急すぎて、きちんとお礼も言えませんでしたが、不思議とその後に仕事が好転していって、じわじわと感謝の念がこみ上げました。
来年40歳になるので、また時計を買おうかと思案中。「インヂュニア」を買ったときに、もう一つ候補になっていのがジャガー・ルクルトの「マスター・コントロール」。現行はケースが少し大きいけれど、年齢的に風格も出てきたから、今ならこのサイズでもいいかなと。僕には息子が二人います。父親から時計を受け継ぐということに憧れがあったので、彼らに時計を残すためにも頑張って、あと一本は絶対買いたいですね。
