腕元が軽くなる春は、時計を楽しみたくなる季節。多くの新作時計が発表されるなか、創業150周年を迎えた名門オーデマ ピゲの新作が、いち早く日本に到着した。そこでUOMOと馴染みのある二人の時計好きに試着してもらい、魅力を語ってもらった。
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創業は1875年。時計産業の盛んなジュウ溪谷の西エリアにあるル・ブラッシュという小さな村で、時計師の家系に生まれたジュール=ルイ・オーデマが立ち上げた時計工房がその始まりだ。その後、エドワール-オーギュスト・ピゲをビジネスパートナーに迎え入れ、1882年1月1日に「オーデマ ピゲ」として正式に会社が発足する。
オーデマ ピゲは現代の時計企業としては珍しく、今でも創業家一族が経営に携わっており、伝統を継承している。そしてブレない軸があるからこそ、様々なチャレンジが可能になるのだ。
1972年に誕生した「ロイヤル オーク」や2019年にデビューした「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」は、いずれも現在の高級時計を代表する存在であり、多くの時計愛好家の憧れの存在になっている。
製造する時計の本数はかなり少ないため、人気モデルは店頭にもめったに並ばないが、今回は特別に試着できる機会を得たので、ふたりの時計好きに声をかけた。
NEATデザイナーの西野大士さんとCaleディレクターの佐藤佑樹さんは、どちらもオーデマ ピゲの時計を所有したことはないが、その歴史やデザイン、技術などにはかなり興味を持っている。実際に時計に触れ、着用したら何を感じるのか。早速試着をスタートすることに。


1972年に誕生した「ロイヤル オーク」は、オーデマ ピゲの先進性を語る人気コレクション。伝説的デザイナーのジェラルド・ジェンタが一晩でデザインしたというステンレススティール製のスポーツウォッチは、薄型ムーブメントを用いることでケースを薄く仕上げつつ、フラットな平面とシャープな斜面を組み合わせることで立体感を表現。スポーツウォッチだが高級感のあるディテールを持つことから、「ラグジュアリー・スポーツウォッチ」の元祖と称され、多くのフォロワーを生み出した。
西野「ロイヤル オークは定番ですよね。39㎜径のイメージが強いのですが、こんなに小さいモデルがあるんですね? 37㎜? これはいいですね。僕は“小さな時計”が好みなんじゃなくて、自分に合ったサイズの時計を探していたら、結果として小さなケースサイズの時計に落ち着いた。つまり37㎜径のロイヤル オークは最強ですよ」
佐藤「このサイズなら、手首に食い込む不快感も少ないでしょうし、体にフィットする感覚がある。ケースは小さいけど、バランスがいいですね」
西野「ブレスレットの仕上がりもすごくきれい。平面がヘアライン仕上げで、斜面はポリッシュ仕上げ。少し傾けるとキラッと光るんですね」


ロイヤル オーク オートマティック
1972年のオリジナルモデルのダイヤルカラー「ナイトブルー、クラウド50」を取り入れた定番モデル。小さめのケースサイズだが、ケースやブレスレットの丁寧な仕上げによって、存在感をつくる。自動巻き、SSケース、ケース径37㎜。¥3,960,000


ロイヤル オークの20周年を記念し、よりスポーティなモデルとして、1993年にデビューしたのが「ロイヤル オーク オフショア」。防水性と耐衝撃性能を高めるためにケース径は42㎜と、当時としてはかなり大型。さらに厚みもあるため、“ビースト”という名称がつけられた。その最新作である「ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ」は、ケースがステンレススティール製でベゼルやプッシュボタンがセラミック製。異なる素材をミックスさせることで、時計に迫力を加えている。
佐藤「ケースは43㎜なので、かなり圧倒されますね。でもこれだけインパクトがある時計だったら、無理に自分のスタイルに合わせるのではなく、自分自身がこの時計が似合うように変化させていくほうが楽しいかも。新しい自分に出会えそう」
西野「それ分かります。いつも選んでいる時計は小径のドレッシーなタイプ。だからこそ真逆な時計を選ぶというのも、新しい考え方かもしれません」
佐藤「自分の華奢な腕に馴染むか?という問題はありますが、この存在感や立体的なデザインはかなりカッコいい」
西野「こういう時計をサラリとつけて、ビーチサイドやヨットで遊ぶ。そんなライフスタイルが、この時計の向こうに見えてきますよね」


ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ
ダイヤルとセラミックベゼルなどに「ナイトブルー、クラウド50」の色を取り入れた。プッシュボタンをケースに合わせてデザインすることでシャープなエッジを際立たせている。SS&セラミックケース、ケース径43㎜。¥6,160,000


オーデマ ピゲとして25年ぶりの新しいコレクションとして、2019年にデビューした「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」は、ムーブメントを収めたミドルケースはロイヤルオークで確立したアイコンデザインである八角形になっており、その上下からラウンドケースを挟み込む3層ケースが特徴。その立体的な構造は、高度な金属加工技術と、職人の丁寧な手仕事から生まれる。さらに風防のサファイアクリスタルはダブルカーブに仕上げているので、光の反射効果も美しい。
正面から見ると端正なデザインだが、目線をずらすと大胆不敵。そのアバンギャルドな個性で人気を集めている。
佐藤「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲの存在はもちろん知っていましたが、実際に着用するのは始めてです。正面からみた時のラウンドケースのイメージが強かったのですが、サイドから見ると全く個性が違いますね」
西野「ケース径は41㎜なんですね。小径モデルが好みですが、ベゼルが細いので、それほどネガティブな印象はないかな。それにこの文字盤の色、めちゃくちゃカッコよくないですか」
佐藤「この色合わせは、メンズファッションと相性がいいでしょうね。カジュアルなニットはもちろんのこと、スーツスタイルにも馴染みそうです」


CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ オートマティック
2019年にデビューするや、あっという間に人気コレクションに。ダイヤルカラーはスレートグレーで、インナーベゼルの色は「ナイトブルー、クラウド50」。中央にいくほど細かくなるダイヤル装飾など、かなり丁寧に作り込まれている。自動巻き、SSケース、ケース径41㎜。¥3,795,000


3つの新作モデルに触れ、オーデマ ピゲへの関心をさらに深めたふたりは、原宿の「AP LAB Tokyo」に向かった。ここはエデュケーション(教育)×エンターテイメント(娯楽)をかけ合わせた世界初の“エデュテインメント”施設で、施設内に時計の展示はない。時計の試着や購入ができないかわりに、「TIME(時間)」「MATERIALS(素材)」「ENERGY(機構)」「CHIMING(音)」「ASTRONOMY(天体)」をテーマにした5つのゲームを通じて、時計文化や技術の源泉を無料で楽しみながら学ぶことができる。


西野さんも佐藤さんもかなりの時計愛好家だが、内部機構や素材について学ぶのははじめて。まずは1Fに置かれている大きなサイコロを転がして、出た目に関連するクイズからゲームの体験へと移る。
「MATERIALS(素材)」のコーナーでは、オーデマ ピゲの時計を構成する貴重な原材料にブラインドで触れ、並べられた写真と合わせることで理解を深めることができる。ほかにも歯車を並べて装着し、時計のムーブメントの仕組みを理解できる「ENERGY(機構)」のコーナーや、永久カレンダーの仕組みを学べる「ASTRONOMY(天体)」など、ふたりとも興味津々だった。


西野「ネットで調べれば色々な情報が出てくる時代ですが、実際に手を動かし、触れることで、より深く時計について学べました」
佐藤「ゲームの内容はかなり真面目ですが、内装に描かれたイラストも含めて、ポップな感じで楽しめる。オーデマ ピゲというブランドへの興味も広がりますよね」


次いでふたりは「AP LAB Tokyo」の2階へ進む。ここには作業机が並んでおり、伝統的な機械式腕時計の製造工程の一部を、体験しながら学ぶことができる。
早速オーデマ ピゲのロゴ入り白衣を着て着席。まずはムーブメントの地板などに入れる円形の装飾「ペルラージュ」に挑戦する。この技術はパーツの表面に入った微細な傷を消しさることで平滑度を高め、錆びにくくするためのもの。回転するやすりをパーツに押し当てて丸い模様をつけていく。初めての作業にふたりの目は真剣そのものだ。さらにロイヤル オークのベゼルに用いられる「ヘアライン仕上げ」にも挑戦。紙やすりが張り付けられたテーブルにパーツを置き、ためらうことなく一気に手前に引く。筋目の深さや角度が厳密に決まっているので、慎重な作業が求められる。


最後は、パーツに微細な鍛金加工を施すことで凹凸をつくり、光を乱反射させる「フロステッドゴールド」に挑戦。宝飾技法から生まれた表現は、オーデマ ピゲの先進性を表すものでもある。仕上がったパーツは、ペンダントにして持ち帰ることができる。


西野「写真で見ることはありますが、均一で仕上げるなんて絶対に無理! 美しい時計をつくるために、どれだけの時間と労力がかかっているのかを、改めて知ることができました」
佐藤「技術を体験したことで、時計を手にしたときに、より気持ちがこもる。オーデマ ピゲがこういった技術を150年も継承していることにも驚かされます」


3本のオーデマ ピゲの時計を試着し、さらにエデュテインメント施設「AP LAB Tokyo」でブランドの哲学を深く学んだふたり。
長い歴史と伝統をもつ名門ブランドでありながら、前進することを止めないオーデマ ピゲの魅力を深く知って、より「欲しい!」という気持ちが強まったようだ。
AP LAB Tokyo
東京都渋谷区神宮前5-10-9
営業時間:11:00~19:00(火曜日定休)
入場料:無料(予約来場優先)
TEL:03-6633-7000
