A.ランゲ&ゾーネがこの秋発表した2つの限定モデルが、どちらも見逃せない。ひとつは、ブランドの伝統を色濃く映す「1815 アップ/ダウン」。もうひとつは、複雑時計の最高峰ともいえる「トリプルスプリット」だ。前者はケースを37.5㎜へとサイズダウンし、後者は最長12時間の中間タイムや比較タイムを計測できる超複雑機構を搭載。方向性はまったく異なるが、A.ランゲ&ゾーネらしい時計づくりを、それぞれの方法で突き詰めた新作となっている。
小さくなって、さらに端正:1815 アップ/ダウン
まず目を引くのが、「1815 アップ/ダウン」の新しいプロポーションだ。従来モデルからケース径を1.5㎜小さくしたことで、よりコンパクトで均整の取れた佇まいに。もともと懐中時計に着想を得たクラシックなデザインだけに、このサイズ感が実によく似合う。
小ぶりになったケースとともに、新鮮に映るのがダイヤルの色使いだ。ブルーの文字盤にシルバーカラーの2つのサブダイヤルを配し、レイルウェイ風の分目盛りやアラビア数字など、歴史的なランゲの懐中時計を思わせる意匠を受け継ぐ。クラシックな要素を踏襲しながらも、この鮮やかな色合わせによって、ぐっと現代的な顔つきに仕上げている。ピンクゴールドなら華やかに、ホワイトゴールドならクールに。同じダイヤルでもケース素材によって印象が大きく変わるのも面白い。
そしてモデル名の「アップ/ダウン」が示す通り、この時計の主役のひとつが8時位置のパワーリザーブ表示だ。「AUF(アップ)」なら完全に巻き上がった状態、「AB(ダウン)」ならゼンマイがほどけた状態を示す。最大パワーリザーブは72時間。機構を既存キャリバーに付加するのではなく、省スペース型の遊星歯車機構によってムーブメントへ直接組み込んでいるところにも、ランゲらしいこだわりが表れている。
搭載するのは手巻きの自社製キャリバーL051.2。サファイアクリスタルのケースバックから、洋銀製4分の3プレートや青焼きネジ、7つのビス留め式ゴールドシャトンなど、A.ランゲ&ゾーネならではの仕上げを眺められる。表はすっきり、裏は濃密。このギャップもたまらない。
針は6本。世界唯一のクロノグラフ:トリプルスプリット
対する「トリプルスプリット」は、一転してメカ好きの心を刺激する一本だ。2018年に発表されたこのモデルは、秒だけでなく分と時間にもラトラパント機構を拡張。3本のクロノグラフ針と3本のラトラパント針を操り、最長12時間にわたって中間タイムや比較タイムを計測できる。さらにフライバック機能も備えるという、極めて複雑なクロノグラフだ。
新作はプラチナ950製ケースにロディウムカラーのダイヤルを組み合わせ、グレーのサブダイヤルを配置。そこへブルー仕上げのラトラパント針と赤いアクセントを効かせている。複雑な機構を前面に押し出しながら、色使いは驚くほどシック。直径43.2㎜という堂々たるサイズも含めて、「1815 アップ/ダウン」とは正反対の存在感を放つ。
裏側も圧巻。自社製キャリバーL132.1は実に567個もの部品から構成され、ケースバック越しにレバーやバネ、ブリッジが幾重にも重なる立体的な機構を堪能できる。複雑時計に詳しくなくても、その密度には思わず見入ってしまうはずだ。
37.5㎜の端正な手巻き時計と、43.2㎜の超複雑クロノグラフ。これほどキャラクターが違うのに、どちらを見てもA.ランゲ&ゾーネだとわかる。伝統を磨くか、機構の限界に挑むか——ブランドの振り幅の大きさまで楽しめる2本だ。
A.ランゲ&ゾーネ
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