夢ならば覚めないでほしかった

2025年7月20日朝7時45分、ヴィクトリア駅発のバスに乗り、マンチェスター ヒートンパークへ向かった。出発の15分前に到着したのに席はほぼ埋まっていた。海外では時間にルーズな場合が多いのに、ライブに行く人全員が今日という日を待ち望みにしていたのを肌で感じる。ライブチケットと航空券を買ったのは1年前。オアシスが再結成した、イギリスでツアーをする、となれば渡英する他ない。観るならばギャラガー兄弟の地元マンチェスター一択だった。
会場に到着したのが13時前。にわか雨のなかゲート方向にできていた列に並び15時入場。偶然にも先着順の無料アップグレード列に並んでいたようで、前方ブロックに入れるリストバンドをゲットした。会場に入って、ステージの近さに大興奮。ヒートンパークのキャパは8万人(フジロックは1日で約3.5万人)らしく、肉眼では見えないことを覚悟していたのに…。なんてラッキーなんだ、ありがとう神様。パイントでしか売っていないビール、ブルックリン・ブルワリーをガブガブ飲んでも、アドレナリンのせいか全く酔わない。もうとにかく楽しい。18時スタートのCAST、19時のRICHARD ASHCROFTを観る。そしてまだ明るい20時13分に映像が流れ、20時15分の定刻通り「Fuckin' in the Bushes」のドラム音とともにオアシスはステージ上に現れた。
至る所から上がる歓声、ビールと水とが空を舞い、「Hello」が始まった。ノエルとリアムが同じステージに立っている。この景色を世界中の何百万人が待ち望んだことか。3曲目はAメロをリアムがサビをノエルが歌う、大好きな「Acquiesce」だった。それぞれソロで活動していた時もオアシスの楽曲は演奏していたが、二人が揃わないと完成しない曲。しかもサビは”Because we need each other. We believe in one another”という二人がヨリを戻したこの状況にこそ合う歌詞で、気づけば目の前が滲んでいた。その後「Morning Glory」「Some Might Say」と続くわけだが、全曲観客全員で大熱唱。7万人が歌いだしからずっと歌い続けるなんて異様な光景は、マンチェスターでしか体験できない。本当に素晴らしいライブだった。セットリストもベストアルバムのような並びで、曲が変わるごとに聴けることの嬉しさと終わりが近づくさみしさが入り混じる。夢のような時間のラストは「Don't Look Back in Anger」「Wonderwall」「Champagne Supernova」という流れで花火が上がり、22時18分に幕を閉じた。24時発のバスに揺られ、ヴィクトリア駅に戻ったのが5時過ぎだった。
会場で買ったTシャツには、”20.07.2025””MANCHESTER”という文字がプリントされている。ツアーTでありがちな会場と日付を網羅的に表記するものではない、ライブを観た7月20日にだけ販売したTシャツなのだ。これを見るとなおのこと、会場で感じた空気を鮮明に思い出せる。長いようで、人生で最も短い、そして忘れられない1日になった。



2023年入社の編集部最年少。本誌では『プロゴルファー!HIKARU』としてゴルフ連載を担当。ときたまデザインの効いたアイテムを着ると、先輩達にツッコまれがち。真夏生まれだが夏の暑さにも冬の寒さにも弱い。趣味はツーリングと音楽フェス。
Movie&Photos:Mitsuo Kijima
Stylist:RUI