久々のスーツは、無国籍で中庸がいい
30歳というひとつの節目は、いろいろな買い物の言い訳にもなる。そんな折に、スーツがパッと思い浮かんだ。普段の出社業務はカジュアルで問題ないが、クライアントワークなど、何かとスーツを着たほうが身も引き締まる機会が増えてきた。
吊るしも悪くないが、せっかくならオーダーがいい。そう思い立ったのが9月。しかし11月下旬には着たい用事がある…。そこで広尾にあるオーダーサロン、レクトゥールの扉を叩いた。神戸にも拠点をもつレクトゥールには10名以上のスタッフが所属していて、担当と顧客間の密接なコミュニケーションでスタイルを作っていく。担当がつくため、スーツ初心者から洋服好き、VIPまで、みな満足のいく顧客体験ができる。
今回はMTM(メイド トゥ メジャー)で、形は彼らのハウススタイルである「LC-10」に。スラントした胸ポケットや自然な肩まわり、フロントの貫通したダーツなどはナポリのスーツを思わせるが、佇まいはいい意味できわめて中庸。「無国籍な佇まいを狙って、サヴィル・ロウ出身のテーラーさんと1年半かけて型紙を考えた」という代表の五十嵐さんのアプローチに共感した。
実はアットリーニやラ・ヴェラ・サルトリア・ナポレターナといった本場のナポリスーツも持っている。しかし、これは縁あって知人から譲り受け、直したもの。ゆえにガシガシ…とは気が向かない。それに、スラックスはパンチェリーナと呼ばれる複雑なボタンフライ仕様で、大小のボタンが7~8個…これではトイレがアブナイ。というわけで、着用頻度が高まることを想定してジップフライに。生地はドーメルの「ロイヤル11」。「トニック」や「スポーテックス」も有名だが、300g/mという重めの目付けと、ブラウンにも見えるチャコールグレーが決め手だった。
話し合いながら、サンプルゲージを元にそれなりに変更し、仕上がりはとても満足のいくものに。しかし、こうなると時計が欲しくなってくる。「時計担当なんだから、先に時計を買いなさいよ」。そんな声が聞こえてくる。まぁ、30歳を言い訳にする買い物はひとつとは限りませんから…。
クルマと時計担当。幼少期からのクルマ好きで、大学時代は自動車部に所属。ウェブでは「文化系ネオクラシック車と30人の男たち」も手掛けた。愛車はアルファロメオの「ジュリア」。クルマはイタリア車好き、ワードローブはカジュアルなフレンチスタイルが好み。猫舌のため一年中、アイスコーヒー派。
Movie&Photos:Mitsuo Kijima
Stylist:RUI