おじさんにも似合う“い草”

もうずいぶん前のことだが、ある有名な文化人(男性・俺より年上)が何かの雑誌で「かごバッグを持つことがあります」という話をしていた。いや、どう考えても無しでしょ、おじさんがかごなんて。いくらその人がおしゃれでも、誰も許してくれないよ。有名だったら何を言ってもいいのかよ!
そんな感じで憤慨して、「××はかご持ってるらしいよ。ほっこりおじさん、やばくない?」と友人に同意を求めていたわけだが、時は流れて2025年。1886年の創業以来、岡山県倉敷市でずっとい草のかごを作り続けている、須浪亭商店の「いかご」に出会ってしまった。実は本誌2025年1月号の連載『男子自身』でスタイリストの長谷川昭雄さんが紹介していたもので、ぜひ実物にお目にかかりたいと思っていたのだが、島根県松江市でセンスのいい器や生活道具を扱うショップ「objects」が「東京支店」と称して開催していたポップアップストアで見つけたのだ。
初めて相対した「いかご」は、い草の色味といい、がっしりした武骨なつくりといい、俺が憎んでいる「ほっこり」感はゼロ。い草だけを使い、余計な要素を極限までそぎ落とした潔さに、モードな空気すら感じてしまったほど。これなら、きっと中年男性が持ったって許される。令和のかごおじさん、デビューはもうすぐです。



身に着けるモノの中では365日かけているメガネが一番大事だが、気分屋で服装には一貫性がなく、白髪に合えばなんでもいい。大阪府出身。お好み焼きと立ち飲みと電車と野球が好き。
Movie&Photos:Mitsuo Kijima
Stylist:RUI