黒というカラーには、ファッションを一周まわった大人すら惹きつける磁力がある。ニットにもスウェットにも重ねやすく、ビジネスシーンにおいても違和感がない。この冬注目したいのは、そんな万能色でありながら、最先端の機能を秘めたダウンジャケット。独自のアプローチで進化を遂げた20着を、じっくりとご覧あれ。
patagonia|Men's Stormshadow Parka
パタゴニア製品の中で最も温かいと謳われるこのパーカは、環境配慮とタフネスを両立させた渾身作だ。コスタリカの海洋プラスチックをリサイクルした防水透湿性に優れるゴアテックスePE採用の表地に、700フィルパワーのリサイクルダウンを封入。有機フッ素化合物を意図的に使用せずに製造されたDWR(耐久性撥水)加工で、地球にも自分にも責任ある選択ができる。
起毛トリコット裏地のハンドウォーマーポケットは、凍える指先を瞬時に温めてくれる。パーカのジッパーを開けずにアクセスできるチェストポケットは、改札やコンビニでの支払いをスムーズにする都市生活者の味方だ。フェアトレード工場で縫製された背景も、着る人の誇りになるはず。
Brooks Brothers|Puffer/Down Jacket
トラッドの総本山が放つコーデュロイダウンは、ノスタルジックな温もりに満ちている。洗いをかけたような自然なエイジング加工が施され、ふっくらとした畝が光を受けて陰影を生み、クラシカルな表情を醸し出すのが魅力だ。フードを外せばスタンドカラーのブルゾンスタイルに変身し、ビジネスカジュアルにも対応する。
裾のドローストリングを絞れば、トレンドのコクーンシルエットが完成する仕掛けも心憎い。短めの着丈でバランスが取りやすく、日常の様々なシーンに対応できる汎用性も魅力だ。袖口はリブ仕様で風の侵入をシャットアウトし、4つのポケットが日常の小物をしっかり収納。軽さと暖かさのバランスも申し分ない一着といえる。
sacai|Corduroy Puffer Jacket
デザイナー阿部千登勢が得意とするハイブリッドデザインの真骨頂がここにある。今シーズンらしいビッグポケットが目をひき、コーデュロイを部分使いすることで、ダウンジャケットという機能服をモードの領域へ。長年培ってきた解体と再構築の手法が、この一着にも息づいているのがわかる。
リサイクルダウン90%、フェザー10%という黄金比率の中綿に加え、ポリエステル綿も組み合わせた複合構造で軽さと暖かさを両立。サカイならではのパネリングやギャザーのディテールが、ただのアウトドアウェアでは終わらせない知性を宿している。週末のギャラリー巡りにも、平日の会食にも対応できる懐の深さがある。
Snow Peak|Everyday Down Jacket
その名の通り、毎日着てほしいというメッセージが込められたダウンシリーズ。光沢を抑えたマットなグログランナイロンは、都市の景色に溶け込みながらも上品さを失わない絶妙なバランスで仕上がっている。表地には環境配慮型の撥水加工、中綿には撥水ダウンを採用し、突然の雨でも慌てることがない。
家庭での洗濯に対応しているのも、ヘビーローテーション前提のアイテムには嬉しい配慮。700フィルパワーのダウンが確かな暖かさを約束し、フラップ付きポケットとウォームポケットの両立が使い勝手を高める。6サイズ展開で体型も性別も問わず、自分だけのフィット感を見つけられるはずだ。
MACKINTOSH|RAINTEC SKYE STAND CO THINDOWN G
英国の老舗ブランドが、米軍M-65からインスピレーションを得た異色の一着。透湿防水素材RAINTECと、薄くて軽いTHINDOWNの組み合わせは、機能とエレガンスの融合を目指すマッキントッシュの哲学そのもの。3層構造のファブリックが雨風を防ぎながら、内部の蒸れは逃がしてくれる優れものだ。
ミリタリーの無骨さとブリティッシュの気品が交差するデザインは、カジュアルにもドレスにも振れる汎用性を持つ。スタンドカラーの立ち上がりが首元をしっかりガードし、冬の通勤路でマフラーいらずの快適さを実感できる。環境にやさしい中綿素材というのも、現代的な選択として評価したいポイントである。
JOURNAL STANDARD relume×NANGA|NANGA EXCLUSIVE RIB DOWN JACKET
国産シュラフメーカーの技術力を、都市型ダウンへと昇華させた別注品。綿のような柔らかな肌触りのSUPPLEX®ナイロンタッサーは、驚くほど軽やかでありながら、ナイロン本来の強度を備えた優れた素材だ。700フィルパワーのNANGAのエシカルダウンをたっぷりと封入し、真冬の寒さにも余裕で対応する。
リブ仕様の袖口と襟元がクラシックなムードを醸し出すのがこのモデルの個性。柔らかなリブが冷たい風の侵入を防ぎ、快適な着心地を約束する。シンプルで洗練されたデザインゆえに、オフィスカジュアルからウィークエンドのリラックススタイルまで、幅広いシーンで活躍してくれるに違いない。
SIERRA DESIGNS|DOWN SIERRA JACKET
1966年発売の名作SIERRA JACKETを原型とする、アメカジど真ん中のダウンだ。緯糸にコットン、経糸にコーデュラナイロンを60:40の比率で織り上げた独自の60/40クロスは、肌触りの良さと撥水性、そして耐久性を一度に手に入れられる理想的な素材。従来品より引張強度に優れ、日常使いのタフネスも申し分ない。
ビスロンファスナーとドットボタンの二重仕立て、3枚剥ぎの立体フードなど、ディテールの作り込みにヴィンテージ愛好家も唸るはずである。袖口はドットボタンで2段階調節が可能で、手袋を着けたままでも操作しやすい。取り外し可能なフードで表情を変えられるのも、毎日着たくなる理由のひとつだ。
DAIWA PIER39|TECH ALPINE DOWN PARKA
ハンティングジャケットからインスピレーションを受けたフロントの大型フラップポケットは、仕切られた2つの収納スペースを持ち、タックルケースやルアーケースまで収まる驚異の収納力を誇る。内側にも大小様々なポケットを配し、スマホやモバイルバッテリーの定位置に困ることがない。
40デニールナイロンの経糸と緯糸の染着差で表現されたリップストップ生地は、撥水加工付きで実用性も高い。前振りの袖とアクションプリーツが可動域を広げ、袖口の調整機能がもたつきを解消するなど、釣りのフィールドで磨かれた知恵が随所に光る。都市生活者にとっても、この収納力は心強い味方になるはずだ。
COMME des GARÇONS HOMME×GOLDWIN|GORE-TEX Three-dimensional Down Jacket
モードの知性とスポーツの革新性が交差する、稀有なコラボレーション。コムデギャルソン・オムの洗練されたデザインに、ゴールドウインの先端テクノロジーが融合した結果、ベーシックを超えた新しいスタイルが誕生した。GORE-TEX Fabricsの防水耐久性、防風性、透湿性は、雨や雪といった悪天候下でも快適さを保つ。
650フィルパワーダウンは、ゴールドウイン独自の3D Box Baffle構造で封入され、高い保温性と軽量性、自然なフィット感を実現している。裏地のPERTEX QUANTUMが軽量かつしなやかな肌触りを生み、着脱もスムーズ。ミニマルなデザインの中に先進的な機能を秘めた一着だ。
Mammut|Taiss Pro Belay IN Hooded Jacket AF
氷点下のビレイやビバークを想定した、ハードシェルの上から着られる本格派。DRY DOWN中綿が雨や雪の中でも保温性を発揮し、冷気にさらされやすい前腕や肩、前襟部分には合繊中綿を厚めに配置する戦略的な設計が施されている。ボックスウォール構造がコールドスポットをなくし、熱を効率的に閉じ込めるのだ。
10D Pertex® Quantum ProとPertex Diamond Fuseテクノロジーの組み合わせは、超軽量でありながら耐摩耗性、耐水性、耐久性に優れる。大きめのファスナーはグローブ越しでもつまみやすく、冬山のような環境はもちろん、真冬の街でも扱いやすい。本格アウトドアギアの技術が、日常に安心をもたらしてくれるわけだ。
mont-bell|Permafrost Light Down Jacket
防水透湿性に優れた「スーパー ドライテック®」が、800フィルパワーのEXダウンをしっかり包み込む。羽のように軽やかな着心地なのに驚くほど丈夫で、タフさと扱いやすさを両立している。付属のスタッフバッグに収納すれば、持ち運びの負担にならないコンパクトさも魅力だ。
キルトの構造によって暖かさと軽さを両立し、フロントジップは水の侵入を防ぐ仕様。ジッパーが顎に当たりにくい設計や、袖口のフィット感を高める工夫など、細部まで使い心地に配慮している。洗濯を繰り返しても効果が続く帯電防止加工も頼もしい。コストパフォーマンスの高さで頭ひとつ抜けた存在だ。
CANADA GOOSE|Maitland Parka Japan Exclusive
クラシックなワークウェアスタイルをオーバーサイズシルエットへとアップデートした日本限定モデル。ドライな肌触りと撥水性を兼ね備えた素材は、ブランドを象徴する表地だ。表面の4つのユーティリティパッチポケットがワークウェアの実用性を継承し、ジップ付きサイドシームが動きやすさを高めている。
リブニットの袖口が暖かさを閉じ込め、真冬の通勤でもマフラーいらずの快適さを約束する。カナダグースが持つ極地での実績と、都会的な着こなしへの対応力を両立させたこのパーカは、投資する価値のある一着だ。黒という色が持つ都市への親和性と、カナダグースのブランド力が相まって、長く愛用できる相棒になること間違いなし。
WILD THINGS|MAKALU JACKET
アーカイブの名作をモディファイし、シームシーリング処理で本格仕様に仕上げた復刻モデル。袖下にマチを設け、立体的なパターンでヴィンテージのボリューム感を再現している。ダウンには約700フィルパワーを誇る河田フェザーのリサイクルダウンを採用し、環境配慮と高品質を両立させた点も評価できる。
表地に使われているオリジナルの3層素材は、大雨にも耐える防水性と、汗の蒸気を素早く逃がす通気性を併せ持つ高性能ファブリック。ダウンを筒状に包む構造が空気の層を生み、通常のダウン製品より暖かさを感じられる設計だ。胸のWILD CAT旧ロゴネームのアレンジ版が、レトロアウトドアな雰囲気を醸し出すアクセントに。
YDOT|NORDIC DOWN JACKET
1988年の1stモデルをベースに、現代的なアップデートを施した定番品。ナイロンにポリカーボネートコーティングを施した超軽量素材は、通常のコーティングより剥離耐久性が強く、防水機能の持続性にも優れる。環境に配慮したフッ素不使用の撥水加工を施し、繰り返し洗っても効果が落ちにくいのが心強い。
中綿には羽毛を粉砕して薄く敷き詰めたクリスタルダウンを使用し、軽さと保温性を両立。ハンドウォーマー付きポケット、取り外し可能な立体フード、大容量の内ポケットと機能面も充実している。パッカブル仕様で持ち運びや収納も便利。クラシックなデザインと最新素材技術のバランス感覚が、長く愛される理由だ。
HELLY HANSEN|FILLY DOWN JACKET
寒い日のカジュアルスタイルに重宝する、ボリューム感のあるダウンジャケット。表地には、引き裂きに強いタフなナイロン素材を使っており、アウトドアシーンでも安心して着られる頼もしさがある。中綿には、環境に配慮したリサイクルダウンを使用し、軽さと暖かさのバランスに優れた仕上がりだ。
パーツによってダウンの封入量を変え、着用時のボリュームが均一に見えるよう計算されたシルエット設計が秀逸だ。きれいなシルエットが実現しているのは、こうした細部へのこだわりの賜物。親子連動デザインというのも、ファミリーで揃えたくなる魅力を持つ。コストパフォーマンスに優れた、デイリーユースの定番候補。
THE NORTH FACE|Alteration Down Shell Parka
高いバッフル感を持ちながら、落ち着いたトーンで都市に馴染むダウンパーカ。表地は撥水加工を施した、コットンライクな風合いのリサイクルタスランナイロンを使用。マットな質感がスポーティーさを抑えている。パッカリングを効かせたデザインが、アウトドアウェアとタウンウェアの境界を曖昧にしているのだ。
中綿の光電子ダウンが自然なあたたかさをもたらし、裏地の防風素材が冷気の侵入を抑えてくれる。身幅や袖幅はゆったりめで、着合わせや脱ぎ着のしやすさも考慮されている。裾の埋め込み式コードロッカーでフィット感を調節できるなど、タウンスタイルに映えるデザイン性と機能性を兼ね備えた一着だ。
MODMNT|SUPER MACKINAW
デザイナー・鈴木大器とナンガによるブランド。フィルソンのダブルマッキノーやヴィンテージのマッキノージャケットをベースに発想した一着だ。スナップやベルクロを排し、ボタンとボタンホールのみで構成されたディテールは、古き良き時代への敬意を表している。表地には防水透湿素材と難燃素材を組み合わせた。
スペイン産ホワイトダウンをしっかり封入し、厳しい寒さにも頼れる保温性を確保。ヴィンテージの趣と現代的な機能が同居している。黒という色が持つタイムレスな魅力と、クラシックなディテールの組み合わせが、流行に左右されない価値を際立たせる一着。
L.L.Bean|Mountain Classic Down Jacket Corduroy
ソフトなコーデュロイ素材が、マウンテン・クラシックの象徴的なスタイルに温もりを添える。アーカイブにインスパイアされたクラシカルなデザインと、650フィルパワーの機能性が併存する一着だ。環境汚染の原因となるPFC不使用の撥水性ダウンは、水分を吸収しにくく、速乾性と保温性に優れている。
幅広のバッフルが暖かさとスタイルを両立し、取り外し可能なフードで表情にも変化を付けられる。袖口のゴムや裾のドローコードなど、実用性にも抜かりがない。しっかりとした重量感は、厳しい寒さにも耐えうる“最も暖かいクラス”の作りである証拠。エル・エル・ビーンらしい堅実な仕立てが、長く付き合える相棒になる。
WOOLRICH|GORE-TEX MOUNTAIN JACKET
1970年代にGORE-TEXをいち早く採り入れた、高機能アウターの先駆け。ウールリッチの定番として愛されるこのマウンテンジャケットは、大型ポケットや止水ジップ、ウエストのドローコードといった機能を継承しながら、現代的なフォルムへと進化した。すっきりとした佇まいで、街からアウトドアまで難なく対応する。
フロントはボタンとダブルジップ仕様で、シーンに応じた調節が可能。外側4つ・内側2つの計6ポケットが、日常の収納を支えてくれる。防水性と通気性を兼ね備えた素材が雨の日も快適さを保ち、ふくらみのある中綿とリブ使いが着心地を底上げする。実用性と快適性を両立させた、頼れる一着だ。
FILL THE BILL|RIPSTOP DOWN PARKA
80年代のヴィンテージダウンの雰囲気を纏いながら、今の空気にもフィットする一着。ゆるいシルエットへとシフトさせたことで、ゆったりした着こなしが楽しめる。国内で洗浄したリサイクル羽毛を使用し、環境への配慮も忘れない姿勢が現代的だ。軽量リップストップ生地は、程よいボリュームで合わせやすさを追求している。
余計なデザインを省いたクラシックなフォルムが、かえって新鮮に映るのが面白い。取り外し可能なフード、両サイドの便利な内ポケットと実用性も確保されている。古着をインスピレーション源にした現代的なウエアを提案するFILL THE BILLらしく、ヴィンテージの匂いと現代の機能が絶妙に交差した仕上がりになっている。
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Photo: Yoshio Kato
Stylist: Takumi Urisaka
Text: Yuji Kuramochi
Composition: Ai Hogami