生命(いのち)を預けるに足るダウン!
ファッション感度が高く、タウンユースを想定した“暖か過ぎない”ダウン&中綿ジャケットが昨今のアウター市場の本命であるが、ちょっと待て。出張や冬レジャー、はたまたアクシデントで極寒地域に赴く場合も大人男子にはありうる。氷点下で着るべき極暖ハイスペック重衣料、それは生命の危険を払拭するほどの“最強あったかダウン”に他ならない。
そこで、「東京の冬? 雪が降らないうちはまだ秋ですから。札幌出身の私は寒さ対策のプロです」と豪語する北條が、編集部員を代表して積雪地帯に大遠征。極寒の中で最強の7着を着比べてみた。
氷点下試着ルポで用意されたダウンは、「モンベル」「マムート」「ミレー」「ザ・ノース・フェイス」「マウンテンハードウェア」「デサント オルテライン(水沢ダウン)」「ヴェイランス」ら本格派7ブランド。冬季登山用や1000フィルパワー超えなど、ガチ度合いが高いダウンが揃った。
これら7着を、リアルな試着体験から「暖かさ・着心地・おしゃれ度・コスパ・ドヤ感」の5項目・各7段階で順位付け。購入の参考にして欲しい。
北條:長袖(のダウン)をください。
身長184cm・体重94kgの北條が着用するサンプルは基本的にLサイズ。さあ、濡れタオルを回転させると凍ってしまうほどの極寒の地にて、「最強あったかダウン」氷点下試着ルポ、スタート!
①mont-bell|Ignis Down Parka
・暖かさ:★☆☆☆☆☆☆
・着心地:★★★☆☆☆☆
・おしゃれ度:★★★☆☆☆☆
・コスパ:★★★★★★★
・ドヤ感:★☆☆☆☆☆☆
ダウンジャケットの基準では最高峰の1000フィルパワー(Fill Power)を誇り、39,600円(税込)の価格を考慮するとコスパでは断トツ。ちなみにフィルパワーとは羽毛の膨張具合を数値化したもので、数値が大きいほど空気を多く含み、優れた保温性の証となる。北條着用のオレンジの他、ブラック、ブルーグリーン、タンの4色展開。平均重量281グラムは7品目中で最軽量。パッカブル。コンパクトサイズであるため下半身の防寒は必須。
北條:薄さと暖かさのギャップに驚く。“インナーダウン”の認知度が高まった2010年代に「モンベル」に初めて触れたときから変わらない小さめのサイジング。薄手アウターのインナーに厚手のニットは“ファッション的に”不向きであり、着膨れしないようインナーはカットソー止まりになり、極寒地帯ではいささか不安になる。勢いで買える価格ではあるので、“最強のインナーダウン”として、他のダウンとの重ね着を想定するとよいかも。
②MAMMUT|Eiger Nordwand Pro Down IN Hooded Parka
・暖かさ:★★★★★★★
・着心地:★★★★★★★
・おしゃれ度:★★★★☆☆☆
・コスパ:★★☆☆☆☆☆
・ドヤ感:★★★★★☆☆
900フィルパワー。昨今のハイスペックダウン市場ではさほど珍しくなくなった“20万円超えダウン”の筆頭。背面を長めに仕立て、一般的なダウンの常識を覆すリラックスフィットを特徴とし、寒冷地でのビレイやビバークで抜群の保温性を発揮。このボリュームは旬のファッションスタイリングでも使いやすい。ブラックとアイガーオレンジ×アイガーブルーの2色展開。平均重量1105グラム。単純に「暖かさ」基準で選ぶならば間違いない。
北條:個人的に「暖かさ」と「着心地」の2冠。ダウンの寝袋に潜り込んだような安心感がある。ファッション視点では、丸っこいボリュームフォルムで旬のワードローブと合わせやすい。反面、オレンジとブラックの2色しか展開がなく現実的に黒しか選べない。繊細な化繊生地をリップストップやダイニーマなどで補強してくれたら完璧。ネックは価格だが、Tシャツ1枚で氷点下の地に放り出されたとしたら、間違いなくカード一括で買います。
③MILLET|TRILOGY JORASSES DYNEEMA DOWN FOODIE
・暖かさ:★★★★★☆☆
・着心地:★★★★☆☆☆
・おしゃれ度:★★★★★☆☆
・コスパ:★☆☆☆☆☆☆
・ドヤ感:★★★☆☆☆☆
1000フィルパワー(グース92%・フェザー8%)に加え、羽毛には撥水加工が施され、長時間の積雪で濡れ潰れても高い復元力を保つ。ダウンの偏りを防ぐ六角形のキルト構造が特徴的な表地は、耐引裂性と耐久性に優れ、登山用や船舶用のロープ、防弾チョッキなどに使用される強靭な超高分子量ポリエチレン「Dyneema(ダイニーマ)」製である。アイコンブルーとブラックの2色展開。重量735グラム。このボリュームで収納ポーチが付く。
北條:先の「マムート」を硬派な“業務用”とするならば、「ミレー」は“アウトドアファッション”の位置付けであると思います。両者は価格が同じであり、六角形の見た目なぞ微々たる問題で、プロユーザーから常にスペック面で比較検討されている。より高いフィルパワーを誇り、強靭なダイニーマ生地で、軽さでも上回る「ミレー」に分があると思いきやそうでもない。最も重要な「おしゃれ度」で勝る。金髪に染めてブルージーンズに合わせたい。
④THE NORTH FACE|Antarctica Parka
・暖かさ:★★☆☆☆☆☆
・着心地:★☆☆☆☆☆☆
・おしゃれ度:★★☆☆☆☆☆
・コスパ:★★★★★★☆
・ドヤ感:★★★★★★☆
明確なフィルパワーは謳っていないが、“南極大陸”(Antarctica)の名の通り、低温極地でのエクスペディションを想定。平均値(20デニール)を優に超える高強度200デニールのゴアテックスを採用した表地と、遠赤外線効果を持つ光電子ダウンを使用した中綿で、低温下でも体の熱を効率的に保温力へと変換する。フードは取り外し可能なファー付き。最新カラーはマッシュルーム、アビエイターネイビー、ブラックの3色展開。重量約1900グラム。
北條:ダウンパックの筋が見えないフラットなルックスが魅力です。ブランド内で人気を二分する「バルトロ」と迷った際の決めてもそれでしょう。ゴアテックス素材のハリが強く着心地はそこまで良くはないですが、コーディネートを楽しめるダウンとして、圧倒的な汎用性があります。あと、フードの取り外し可能なファーからは、氷点下において生命の温もりのようなものを感じさせました。見た目だけでなく、ちゃんと意味があるんですね。
⑤Mountain Hardwear|Absolute Zero Parka
・暖かさ:★★★★☆☆☆
・着心地:★★☆☆☆☆☆
・おしゃれ度:★☆☆☆☆☆☆
・コスパ:★★★★★☆☆
・ドヤ感:★★★★★★★
800フィルパワー。撥水性と耐摩耗性に優れたPERTEX製リップストップシェルに、コールドスポットができにくい溶着バッフル構造でダウンを封入。肘と裾も高強度のダイニーマリップストップパネルで補強するなど、8000メートル峰のサミットプッシュに最適。脇下にベンチレーションファスナーが付き、フードを被った完全防備状態でも快適な着心地を保ってくれる。ステートオレンジの1色展開。着脱が容易な内部サスペンダーも便利。
北條:内部に施されたサスペンダーが超お気に入り。ダウンをサスペンダーで背負った状態で前屈みになると、ものの1秒で着用できます。鼻先までしっかり覆うフードを被った状態がデフォルトで、8000m級の過酷な山岳に挑むプロユーザーの気持ちを体感できます。でもファッション目線で、柄が似ているギンガムチェックシャツをインナーに取り入れるなど、街着にしても面白いなと個人的に思いました。1色展開はもっと増やして欲しい。
⑥DESCENTE ALLTERRAIN|MIZUSAWA DOWN JACKET "VERTEX-3" 1000FP
・暖かさ:★★★★★★☆
・着心地:★★★★★★☆
・おしゃれ度:★★★★★★☆
・コスパ:★★★☆☆☆☆
・ドヤ感:★★★★☆☆☆
1000フィルパワー(ホワイトマザーグース)。熱接着ノンキルト加工とシームテープ加工で高い耐水性を誇る表地と、光の波長領域を吸収して熱に転換する独自の積極保温システム「HEAT NAVI®(ヒートナビ)」を採用した裏地をマッシュアップした、“水沢ダウン”最上位モデル。ブラック、スチールグレー、オレンジレッドの3色展開。メッシュ生地内ジッパーを追加したデュアルジップベンチレーション仕様でタウンユースでも暑過ぎない。日本製。
北條:個人的に「暖かさ」「着心地」「おしゃれ度」の3項目すべて第2位。デザインバランスが秀逸で、左袖の「デサント」マークと裏地に施された「水沢ダウン」以外にノイズは存在せず、現代のミニマリストのための最高峰ダウンという印象です。そうでない人には「ユニクロ」のシームレスダウンに見えるので、価格に見合うサービス意匠が欲しいところ。ジッパーを隣のメッシュ生地に移すと、身幅が広がって本当に空気が入ってきてびっくり。
ここで、レンズを覗いていたカメラマンから北條にドクターストップ。「樹霜(じゅそう)がまるで妖精さんみたい…」と、虚ろな眼差しで独り言をこぼし始めた北條の唇が薄紫色に変色していたため、急遽、「水沢ダウン」を着たまま街の中心地に移動して撮影を続行。残すはラストの7着目…。
⑦VEILANCE|CONDUIT DOWN JACKET
・暖かさ:★★★☆☆☆☆
・着心地:★★★★★☆☆
・おしゃれ度:★★★★★★★
・コスパ:★★★★☆☆☆
・ドヤ感:★★☆☆☆☆☆
1000フィルパワー(グレーグースダウン)のダウンに加え、化繊インサレーション(中綿)を採用した柔らかなスタンドカラーが特徴。サイドポケットとインナーポケットをそれぞれ2つ配置したロゴ無しワントーンのミニマルデザインでファッション感度も抜群。マットな質感のミニリップストップ表地も嬉しい。グノシス、ブラック、カーマイン(レッド系)の3色展開。平均重量620グラム。ミドラーとしては暑過ぎる都市型ダウンだ。
北條:アウトドアアウターよりもライダースのようなルックスで、文句なしに「おしゃれ度」ナンバーワン。デザインだけで「ヴェイランス」とわかる、カッティングで構成したパターンテクニックに脱帽です。機能面とデザイン面を担保するスタンドカラーも快適で、外出先から自宅に戻ってもそのまま着続けたいほどにストレスフリーな着心地です。へそ下は冷えるので座高が高い大人男子は注意しましょう。望むべくは、ピンクなど他色展開を希望。
さあ、氷点下で生死を分ける“最強あったかダウン”の試着ルポはこれにて締め。北條のリアルな感想をもとに5項目・各7段階で評価した極寒仕様の7着は、まさに「備えあれば患いなし」。真冬の最終手段として、この記事をブックマークしておこう。
《オマケの1枚》
オマケの1枚。
北條私物。氷点下試着ルポでの隠れ殊勲賞は英国発アウトドアシューズブランド「HI-TEC(ハイテック)」の防水シューズだ。空港の手荷物検査で脱ぐ必要がないローカット扱いで、雨天時や少々の積雪でもへっちゃら。過去20年で3度も“おかわり購入”している正月(雪国)帰省の必需品なのだ。
問い合わせ先一覧:
①mont-bell/モンベル・カスタマー・サービス TEL:06-6536-5740
②MAMMUT/マムート スポーツ グループ ジャパン TEL:03-5413-8597
③MILLET/ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン カスタマーサービス TEL:050-3198-9161
④THE NORTH FACE/ゴールドウイン カスタマーサービスセンター TEL:0120-307-560
⑤Mountain Hardwear/コロンビアスポーツウェアジャパン TEL:0120-193-803
⑥DESCENTE ALLTERRAIN/デサント お客様相談室 TEL:0120-46-0310
⑦VEILANCE/アークテリクス ゲストサービスセンター https://arcteryx.jp
Photos: Hiroaki Horiguchi
Stylist: Takumi Urisaka
Model & Text: Takafumi Hojoh