2020.03.04

スニーカー芸人の「スニーカー同好会」に行ってきました。【教えて! 東京スニーカー氏 #38】

“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回は昨年のスニーカーを私的に振り返ってみたいと思います。

スニーカー芸人の「スニーカー同好会」に行の画像_1
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「エア ジョーダン III」は1988年に登場。ナイキの伝説的デザイナー、ティンカー・ハットフィールドがデザイン。アッパーのサイドにスウッシュのないデザインは、ジョーダンシリーズの特徴。2016年に発売されたこのモデルはメルトンウールを使った玄人受けするルックス。ジョーダンなのに上品。このバランス感が今の気分なんです。/私物



2月号の企画「2020年の東京スニーカー史」では、スニーカー業界を引っ張る5名の方々に、早くも今年の予測を伺いました。皆さん視点がそれぞれで面白かったのですが、あらためて新年を迎えて昨年のスニーカーを私的に振り返ってみたいと思います。



何が発売された、というのはさておき、一年を通じて考えたのは「スニーカーとは誰のもの?」でした。コレクションや工場の生産背景、デザイナーやアーティスト、中国のマーケット、リセール市場にコンベンションと昨年はいろいろな視点からシーンを見てきました。それぞれに魅力があり、スニーカーに対する考え方も違う。特定のグループに属さず俯瞰することで、それぞれに与える価値観の違いを感じました。つまりスニーカーの裾野がどんどん広くなっているということです。



「スニーカー芸人」をご存じですか? 1年以上前に某バラエティ番組で特集されて以来、スニーカーの魅力を面白おかしく伝える話術巧みなスニーカー芸人は、とても貴重な存在だと思っています。先日、渋谷のヨシモト∞ホールで開催された「スニーカー同好会 season2」に初めてお邪魔してきました。



自己紹介だけで人を笑わせられる彼らの最近買ったスニーカーのエピソード、来場した女性からこっそり履いているスニーカーを拝借して机に並べ、どんな人が履いていそうかを話し合う妄想トーク、箱の中に隠したモデル名を手触りだけで当てるクイズなどを90分、楽しみました。



スニーカー好きの何気ない日常会話を「お笑い」で表現してくれると、何でも受け入れられる気がします。「買った」「買えない」「いくらで買った」などの生々しい話も嫌みがなく、生真面目にスニーカーと仕事で向き合う僕のスニーカーへの凝り固まった価値観がほぐされたような感覚で、会場を出ると気分がとてもスッキリしました。よく笑い、いい息抜きになりました。



スニーカーは定価で買うことが正義なところが多くの人にあり、発売日の取り沙汰が問題になりがちですが、2019年の大きな成長はリセール市場のインフラ整備です。これはスニーカー人気を象徴しており、定価より高くはなっても「買えなかったその先」が公平かつ快適に楽しめるようになりました。



今は毎週末、何かしらの限定やコラボが矢継ぎ早にリリースされています。月に何足も購入するスニーカーヘッズは、翌週の後半には次のモデルに気持ちが向かうため、スニーカーの賞味期限が短くなりました。しかし、リセールがロングスパンかつ時価でスニーカーを扱うことで長く楽しむ土壌も少しはできたかも。



2020年は世間的に鮮度の高い靴だけではなく、もっと個人の感覚で楽しめる時代になるといい。ディーラーと中古店が共存し、それぞれに価値がある車の市場のように。ちなみに僕が「スニーカー同好会」に意気込んで履いていったのは3年前にアウトレットで購入したメルトンウールの「エア ジョーダン Ⅲ」ですが誰からもスルーされました。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。

Illustration:Yoshifumi Takeda
Photos,Composition&Text:Masayuki Ozawa
(2020年3月号掲載)

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