東京は、スニーカーの文化こそいろいろありますが、ものづくりの現場ではありません。実際に工場は少ないし、人件費も高い。そんな中、「メイド・イン・トーキョー」にこだわっている東京ブランドのヨーク。そのなぜ?を探ってみました。



ヨークは2015年にスタート。デザイナーの広本敦さんは、ほぼ40歳男子のUOMO世代です。10代のときに’90年代のスニーカーブームを経験していますが、あくまでファッションの足元という感覚で「シャツとジャケットに合う」がブランドコンセプト。そのために必要な要素は品格。それには東京であることが大事なんだそう。


オススメは上。旬の厚底でもアッパーがミニマムだからいい意味で今っぽくなく落ち着いて見える。下の二つは定番です。ヨークはユニセックスですが、特に奥さまウケが非常によろしいそう。(上から)スニーカー「LORRY」¥32,000・「ULYSE」¥25,000・「LILY」¥22,000/ヨーク(HEMT PR)



では、スニーカーの品はどこで表現するのか。それは言葉にしにくい全体の雰囲気と、ステッチなど細部の縫製です。広本さんは、コンセプトを実現するためにあえてスニーカーを作ったことがない革靴の工場を使っていました。スニーカーと革靴では、工程がまるで違います。僕も国内からアメリカ、イギリスと革靴の工場取材をしてきましたが、スニーカーと決定的に違うのが、素材の調達とフォルムを作る釣り込みです。



簡潔に説明すると、釣り込みとは木型に革をかぶせて密着させることでアッパーのフォルムを作り、ソールに固定させること。シューズの美しさを左右する、大事な工程です。基本的に革靴は、1枚もしくは2枚程度の革でその作業をするのですが、スニーカーはレイヤーやパターンが複雑なため、同じようにきれいにするのはとても大変とのこと。折り紙だって、一枚より何枚も重ねて折るほうが難しいのと同じ。



ちなみに僕が知る限り、釣り込みを手作業でしっかりやっているスニーカーはUK製のニューバランスくらい。英国のマンチェスター北部にある工場もまた、もともとはクラークスなどを生産していた歴史がありました。


工場のある足立区は、戦後に靴などの生産で発展した町。こちらは釣り込みの工程の写真。ドレスシューズみたいに精巧な作り。



服との相性を高め、革靴の美しさをスニーカーで表現する狙いがあるから、ヨークのスニーカーはどれもミニマムで、デザインを多く入れていません。その代わりアッパーは本革、裏地はピッグスキン、インソールは低反発のクッション素材を含ませたレザーが多く、履いているとだんだん足にフィットしてきます。広本さん曰く「実は顧客にプロサッカー選手が多いんです。普段からスパイクを履いているからフィットへのこだわりが強いのでしょう」とのこと。なるほど。



そして広本さんが少ないデザインの中でいちばん意識しているのは、言葉には表現しにくい東京らしさ。シンプルなデザインはたくさんありますが、ひと目見て「なんかいいな」と思える靴って少ない。でも東京メイドのヨークには、その感覚的な魅力を不思議と感じるんです。そうは言いつつ僕は限りなく東京に近い千葉県、広本さんは神奈川県出身なんですけどね。

小澤匡行

「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。


HEMT PR TEL:03-6721-0882

Illustration:Yoshifumi Takeda
Photos:Yuichi Sugita
Text:Masayuki Ozawa