2022.05.29

サステナブル系スニーカーのトレンド最新事情【教えて! 東京スニーカー氏】

“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回は、エコの新しいかたちをみせるマルニとヴェジャのシューズについて。

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サステナブル系スニーカーのトレンド最新事情【教えて!  東京スニーカー氏】

ウルグアイの農場で生産後、レザーワーキンググループのゴールド認定を受けたブラジルの工場でなめされたレザーをアッパーに採用。日焼けしたようなソールには天然ゴムや米の廃棄物などいろいろな原材料がミックスされています。比較的手の届きやすいプライス! ¥41,800/ヴェジャ×マルニ(マルニ ジャパン クライアントサービス)



 スニーカー界もSDGsが加速しています。
スポーツメーカーもメゾンの新作も、再生素材をどれぐらい使っているかを競い合うように表記しています。最近では見た目は普通なのに「実はエコ」的な表現が主流。正直、すごく関心が高いわけじゃないけど、環境に多少は貢献していたい、そんなマジョリティを巻き込んでいるようです。



 その一方で、サステナブルの考え方が凝り固まってきたようにも思っていました。シューズを作る工程で出る廃棄物が、新しいシューズに生まれ変わるのは、素晴らしい技術の進歩です。でも、素材がエコ一辺倒では、スニーカーの見た目に変化は起こらない。もっと新しいアイデアやデザインが生まれたら。そう思っていた矢先にマルニとヴェジャのシューズを知りました。多くのUOMO読者にとって、マルニの魅力は上品でソリッド、そこにフォルムの丸さが加わった“かわいげベーシック”だと思います。しかしクリエイティブ・ディレクターのフランチェスコ・リッソの遊び心や独自性、強いエネルギーが昔からのシンプルなイメージと融合し、近年はすごくいいバランス。2020年の春夏、マルニは過去のシーズンのストックにフランチェスコらしいハンドペイントを施したアイテムを限定で販売しました。そのショーは、ランウェイの上に無数のペットボトルをオブジェのように飾るなど、アップサイクルという社会的課題をアートで解決していたのです。こうした発想を具現化するには、“無地が正義”という考えにはなりません。むしろ明るく、ポップな方向に。エシカルな素材を使うより、エシカルな意識を注ぐほうが、デザインがわかりやすくポジティブに変わるんだな、と思わせられたプロジェクトじゃないでしょうか。



 そうしたマルニらしい発想が落とし込まれたのが、このスニーカー。フランス発のヴェジャは僕もこの連載でフォーカスしたことがありますが、スニーカー界におけるサステナ思考のパイオニア。フェアトレードを理念に掲げ、オーガニックコットンやアマゾン産の天然ゴムといった原材料にこだわるだけでなく、汚染のプロセスをなくす努力をしている優良ブランドです。現地パリではファッション業界のみならず、市民の生活に溶け込んでいて、認知レベルの違いを感じました。実際にパリコレに行ったときは、主に女性でしたが、海外のエディターやスタイリストの着用率が高かったのを覚えています。ベースモデルは写真のV-10と、ハイカットのV-15の2型。DIYにインスパイアされたカラフルな落書きは一足ずつ手作業のため、左右の表情が微妙に違うなど、かなり凝った作り。エコって、いかにロスをなくすかという合理的思考が優先されるイメージでしたが、こうしたデザイン上のこだわりもまたエコの新しいかたち。マルニとヴェジャ、つまりアップサイクルとサステナブルの相乗効果は、新しい足元をつくるヒントかもしれません。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。

Illustration:Yoshifumi Takeda
Photos,Composition&Text:Masayuki Ozawa

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