まずは60秒でわかるDUNKの歴史

1985年に大学のカレッジカラープログラムの一環として発売されたDUNK。当時のNCAA(全米大学体育協会)バスケットボールは「MARCH MADNESS(3月の狂乱)」と呼ばれるくらい、プレーオフ開催時の人気ぶりはNBAに勝るとも劣らなかった。その異様な熱気に触れたNIKEは、強豪チームのカラーをたくさんラインナップすれば、ローカルを起点に全米のファンにも浸透するのでは、と考えて7つの配色をリリースした。これが今も人気のOG(オリジナル)カラーだ。


同い年のAIR JORDAN 1と似たフォルムながら、決定的に違うのはAIRが入っていないこと。つまりスペック的には廉価版で、価格も安い。ノンエアゆえのダイレクトな接地感はバスケット以上に、アメリカのキッズスケーターの間で「最高の滑り心地!」と評判になる。DUNKはスケーターに愛されるシューズ、というカルチャーの側面を持つように。


当時、日本では未発売だったこと、販売網が局地的だったことで幻の存在と珍重され、90年代のヴィンテージブームでは高嶺の花。そうした中で99年に復刻され、アメリカではNIKE SBの発足とともにDUNKがアイコンとなり、ストリートに欠かせない一足になった。


アーティストやブランドとのコラボレーションも積極的に行われ、何よりスケートカルチャーを背景にしたサンプリング文化を持つDUNKは、一足一足のデザインストーリーが楽しい。そんな側面から、配色に加えてアートな魅力が生まれ、現在は空前のブームを巻き起こしている。


DUNK HIGH(1999)

裏原宿の空気が流れるシックなバイカラー

「日本のヴィンテージ市場で異様な盛り上がりを見せたことで、1999年にナイキジャパンの企画立案でDUNKが復活しました。それは復刻に後ろ向きだったスポーツメーカーが、ファッションに歩み寄った歴史的なターニングポイントです。この黒×紫は、確か全部で18色も出た中で最も好きなカラーリング。当時、藤原ヒロシさんが推していたことで、ストリートでじわじわ人気になり、枯渇しましたね。僕が購入したのは発売からもっと後のヤフオクですが、それでも枯渇に貢献したひとりです」(小澤)


DUNK HIGH(1999)

反転カラーの“裏ダンク”の中でもグッドカラー

「このとき、DUNK復活戦略で面白かったのは、もともとのカラーを反転させた通称“裏ダンク”のリリースでした。他人が見る自分の顔と、自分が鏡で見る顔の印象がまったく違うように、反転されたものって何でも違和感がありますが、このプロジェクトはそれが醍醐味でした。上に紹介した黒×紫を反転させた紫×黒、この2色は不思議なことに、どっちも自然。違和感がないんですよ。もう20年も前のモデルなので、価値ある立派なヴィンテージです」(小澤)


DUNK HIGH(2003)

ヨーロッパ企画の美色グリーンは今も人気

「2000年代に入るとSB(スケートボーディング)が発足したことで、インラインからもたくさんリリースされ、ストリートがDUNKだらけになりました。僕も一番買いまくった頃ですが、今も残しているのがこの通称“CLOVER”です。日本未発売で、確かヨーロッパのフットロッカー限定でした。最初はなかなか売っているところがなかったんですが、欧州モノに強かった代官山のSIZE TOKYOの人が教えてくれて2足買いしました。ヨーロッパ企画のDUNKってとにかくシンプルで、美配色ぞろいだったんです」(小澤)


DUNK LOW iD(2005)

初のカスタムDUNKはリッチなオストリッチ

「2000年にスタートしたパーソナルカスタムサービス、NIKE iD(現在はNIKE BY YOU)の5周年を記念し、日本限定で企画されたDUNKのiD。確か色は白だけで、素材が選べるシステムだったのですが、当時はこういうレトロなバッシュに高級素材をのっけて讃える文化がありました。リザードとかオストリッチ、レオパードとかアニマル柄ブームでしたね。この5周年でサイトがリニューアルされ、そのときの原稿も書かせてもらった思い出深い一足。僕は全面オストリッチでリッチにいきました」(小澤)


DUNK HIGH (VNTG)(2008)

クラシック回帰でヴィンテージ加工が主流に

「この頃、ファッション的にもアイビーやトラッド、古着が再燃していて、スニーカーもレトロ感のあるヴィンテージ加工がトレンドでした。NIKEからも過去の名品に色褪せや汚れを表現した『VNTG』シリーズがたくさん出ていて、コンプリートするぞくらいの勢いで買い漁ってました。今は黒×白は“パンダ”と呼ばれ、二次流通ではダンクに限らずジョーダン系も人気。自分でもだいぶ履き込んだのでプラスαの風合いが出ていますが、ソールの黄ばみなどはそのままです」(小澤)


DUNK LOW (VNTG)(2008)

オリジナルカラーの反転&ヴィンテージ加工

「こちらも『VNTG』シリーズより、黄×紺のローカット。これは99年の裏ダンクの時に”ミシガン”の反転として登場したカラーです。当時は他に魅力的な配色がたくさんあったから、この斬新な色狙いの人は少なかったと思います。ヴィンテージ加工されるとストリートやきれいめスタイルには合わないと思っていたので、コレを買った時はグローバーオールのダッフルに古いリーバイス501などを合わせていました。99年製の裏ダンク含め、この配色は数が少ない分、2021年に再発されたときはかなり話題になりました」(小澤)


WMNS DUNK LUX / SACAI(2015)

ミニマル指向の最中に出た紐なしダンク

「女性が履きたいような定番モデルとフライニットに代表されるソリッド系が盛り上がった2010年代前半は、僕に限らず世の中がDUNKの気分ではなかったと思います。その中で欲しいと思ったのがサカイとのコラボレーション。ヒモを使わず、シュータンにゴムを施すスリップオン仕様がサカイらしい手の加え方で、当時のミニマル志向にぴったりのデザインでした。白×グレーは自分の服にも合わせやすくて購入。当時はまだ発売から少し経ってからでも、Nike.comで普通に買えたいい時代でした」(小澤)


WMNS DUNK LUX / SACAI(2015)

黒の着こなしの足もとにハズしで履きたくなって

「『東京スニーカー史』を書く際にクリエイティブディレクターの源馬大輔さんに取材した後に、無性に欲しくなってオークションで落札したのですが、当時はまだDUNKブーム前夜で、新品でも定価割れしていました。僕たち40代にとって最も有名なこの初期カラーは、やはり青春の象徴ではないでしょうか。これはちょっとイエローが山吹色っぽいのですが、そこはご愛嬌。スタイリングを足もとでハズしたいときによく履いています。黒のトップスとボトムスにさっと合わせると、黄色がまぶしくていいんですよ」(小澤)


DUNK HIGH RETRO(2016)

オリジナルの再現性が高い通好みのハイカット

「2021年の夏に紺×白が発売されましたが、二次流通で人気がないのをメルカリやヤフオクで見て、けっこうびっくりしています。これはほぼ同じ配色の2016年のモデルで、ちょっとレザーがシュリンクっぽく仕上がっています。近年のDUNKと比べてみたところ、補強のレザーの丸さや角度とか、心なしか低重心な設計とか、85年製のオリジナルに近い気がする。最近のはちょっときれいすぎて、隙がなさすぎるんですよね。スタイルがよく見える点ではベターですが、レトロ好きにはこっちがおすすめです」(小澤)


DUNK HI SP(2020)

自分史上、もっともシンプルなDUNK

「AIR FORCE 1のオルタナティブ的なDUNKが欲しくて買いました。2つを比べて好きな点は、つま先のパンチングの数が多いところ。そして白ベースにグレーがほのかに組み合わさるところも、80年代のバッシュっぽくて好き。ソールの色などをFoxtrot Uniformのペンで塗って、セルフ加工しようと企んでいます。ボトムスの流行がテーパードからブーツカットに移って、ハイカットがきれいに収まるようになったので、履きたい欲が高まっています。多少紐をゆるくして怠けても、隠れて見えないのが楽でいいです」(小澤)


SB DUNK LOW OG QS(2021)

泣く泣く手放した過去の思い出に捧ぐ

「3回目となるシュプリーム別注のローカット。2003年に発売された、2ndモデルのハイカット版(といってよいのか)も持っていたんですが、新木場で行われたメンズノンノの25周年イベントのフリマで、無償提供してしまいました。最近、StockXを見てたら、僕のサイズはどの色も100万を超えるリセール価格がついて、なんだか複雑な気分……。そんなことボヤいてると、この10年で世の中のスニーカーを見る目は本当に変わりました。シンプルとアートが共存したシュプリーム別注のようなデザインは、人気が残りそうですね」(小澤)


DUNK LOW RETRO(2021)

更新する大人ベーシックにずっと対応

「“CHAMPIONSHIP”というシリーズで発売された紺×灰のDUNKは、オフィシャルでは言ってませんが、ジョージタウン大学のチームカラーをサンプリングしています。このモデルの思い出は本誌の連載でも書いた通りで、オリジナルのルーツにならって靴紐をブルーグレーに替えて履いています。ネイビーとグレーは多くの人にとって服のベースカラーだから、基本何にでも合うはず。すごく着回し力が高くて大人っぽくもあり、僕にとっては青春を懐かしむDUNK。意外とこういう地味なカラーってないですよね」(小澤)


DUNK HI / F(2021)

20年前と嗜好は変わらない、これぞ東京色

「藤原ヒロシさん主宰のfragment designによる黒×紺のDUNKは、東京をイメージしたカラーリング。これはリリース数が多かったので買えた人も多かったと思いますが、僕もそのひとり。いや、これに関してハイプ云々はどうでもよくて、とにかくファッションユースでヘビロテ中。まさに大人が堂々と買って履けるカラーリングではないでしょうか。同タイミングで発売された黒×紫(2010年にリリースされた”北京”をイメージしたカラーのアレンジ復刻)も持っていますが、圧倒的にこっちの着用率が高いです」(小澤)



小澤匡行

「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)、『1995年のエア マックス』(中公新書ラクレ)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。


Photo:Yuichi Sugita[POLYVALENT]
Styling & Text:Masayuki Ozawa
Composition:Hisami Kotakemori
Illustraiton:Yoshifumi Takeda