2021.06.25

スニーカーもサステナブルなモデルを選ぶべき?【教えて! 東京スニーカー氏 #50】

“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回はサステナブルなモデルについて。

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サイドに本来入る「STAN SMITH」の文字は、同じ書体で「KERMIT」に変更されている。プライムグリーンのアッパーは独特のヌメリ感があって、なんだか普通の人工皮革や本革とは違う高級感があります。服はいつもどおり無地でまとめてシューズのポップさを主張したい。キャラクターの靴を履くなんて、40年ぶりかもしれません。私物



サステナブルという言葉が当たり前のように使われている昨今、地球環境への取り組みは大企業にとって最優先事項になっています。毎日のように届くメーカーからのメールマガジンも最近は環境のことばかり。アスリートのため、ストリートのためにベストを尽くせばよかった時代は20世紀で終わり、メーカーには存在意義、つまり誰に、何のためにスニーカーを作り続けているかを伝える社会的責任が発生しています。世界的な気候危機に備えて二酸化炭素の排出量を削減したり、再生ペットボトルをはじめとする持続性のある素材やエネルギーを有効活用するなど、今まで以上にあれこれ考えながらものづくりをしなければなりません。それに加えて貧困や人種差別、あらゆるマイノリティの声を取り入れた多様性も意識しなくてはならない時代。小さな声を大きくできるSNSの発達によって、いろいろな重責をメーカーが担っている現状を考えると、スニーカー関連の仕事が多い僕にとってもひとごとではなくなりました。ストリートにとってハイプなブランドと同じくらい、自然との共生に価値を見いだす世の中になったらいいな、と考えています。

アディダスは最も循環を意識しているメーカーだと思っていて、早くからプラスチック問題に対するソリューションを提案し、あらゆる自然環境と共存する姿勢を示してきたステラ・マッカートニーと長く一緒に取り組んでいます。そして今季、大定番のスタンスミスがサステナブルに生まれ変わりました。100%再生ポリエステルである「プライムグリーン」という素材を使い、アウトソールも天然とリサイクルラバーをミックスしています。見た目は現状維持、でも中身はエコなところがポイントです。そもそも飾り気のないスタンスミスは、少ないことこそ豊かであるという美意識の象徴でもあり、環境意識を盛り込むにはベストなモデル。近年はボリュームやレイヤーを求めるトレンドの陰に隠れていた感がありますが、近い将来、また意識の高い若者に支持される気がしています。何よりアディダスで最も有名なモデルでコンセプトを表明することで、共感を生みやすいメリットがありますよね。

このグリーンな取り組みをもっと意識づける意味で、カエルのカーミットを結びつけたスタンスミスが発売されました。もう10年以上も前ですが、2008年のシュプリームとのコラボレーションが記憶にある人は多いはずだし、1997年のアップルとのキャンペーン「Think different」で、生みの親のジム・ヘンソンとともに登場した白黒ポスターが僕の中で強烈に印象に残っています。だからセサミストリートのキャラってファッション的にアリなんですよね。緑もいい具合にカーミットみたいで、どこかヒップな趣もある。普段からキャラクターものを買うことはないけど、意味のあるコラボレーションだと思って購入。普及活動の一助になればうれしいです。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。


Illustration:Yoshifumi Takeda
Photos,Composition&Text:Masayuki Ozawa

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