テーラー仕立てのスラックスが新しいスタンダードになると、スニーカーもドレスな薄底に更新したくなる。シルエットに緊張感を与えながら、大人の抜け感もつくれる、ミニマルだけど新しいデザインが増えてきた。
01|プラダのスニーカーとプラダのスラックス
近年のThin・スニーカーのトレンドは、プラダがつくり上げてきたところが大きい。振り返れば’90年代〜2000年代に薄底スニーカーをデザインしてきたプラダには、このジャンルへの深い矜持と愛着すら感じる。新作の「プラダ スピードロック」は、クライミングシューズを連想させるシューレースと波型のラバーソールが特徴。クラシックなカットと膝から裾にかけてまっすぐ落ちるストレートスラックスとともに、今の気分を表していて、プラダ的。ボトムの裾をかぶせても、爪先のデザインやフォルムが主張できる。
02|アワー レガシーのスニーカーとビボヤのスラックス
切り替えがほとんどないミニマルなアッパーは、ヒールの組み合わせなどにランニングシューズの名残を感じる。肌のように薄いイタリアンレザーと板のように薄いビブラムソールは、繊細なテーラードパンツとの相性もいい。ビボヤはノルウェーのテーラーによる既製のスラックス。ヒップからわたりにかけて直線的なラインが魅力で、裾もほとんど絞っていない。やや厚手のギャバジンウールを含め、縦に落ちるようなシルエットを引き立てる要素がこのスニーカーに詰まっている。
03|ルメールのスニーカーとオーラリーのスラックス
ルメールの新しいキャンバススニーカーは、アッパーを袋状に包み込むようなデザイン。トウがやや長めで、余白を感じさせるフラットな設計が、カジュアルな中に上品なムードを漂わせている。ソールは1㎝にも満たないような薄いガムソールで、足袋のようなシルエット。こういった抜け感のある足元には、はきジワすら魅力的に映し出してくれるオーラリーのスラックスがいい関係性を築いてくれる。ヒップはフィット、レッグはストレート。この独特のバランス感が気分だし、セットアップにスニーカーを合わせるのもいい。
04|キャプテン サンシャイン×リプロダクション オブ ファウンドのスニーカーと ユーゲンのスラックス
ミリタリーシューズを現代的に解釈するリプロダクション オブ ファウンドにキャプテン サンシャインが別注したジャーマントレーナーは、エレガントなワントーンのブラックで表現。上質なレザー使いにヒール芯を省略した、非構築的なデザインだ。ユーゲンのようなハイウエストのかっちりしたトラウザーズには、スリッパ感覚で履けるThin・スニーカーのバランスがモダン。
05|ジル サンダーのスニーカーとジル サンダーのスラックス
26SSからクリエイティブ・ディレクターが交代し、細身でシャープな印象を強めたジル サンダー。ローファー型のスニーカーが世の中に増え続けている今、新しく注目すべき革靴スニーカーは、ワラビー型だ。ランウェイでもたびたび登場したユニセックス仕様で、フィナーレではディレクターのシモーネ・ベロッティも着用した本作は、カジュアルなブルーのラバーソールと光沢のある上質なイタリアンレザーの組み合わせが、ちょうどよいバランス。直線的で緊張感のあるスラックスに、程よい軽さを宿している。
薄い革、薄いソールでスニーカーは柔らかくなった
文/小澤匡行
ラグジュアリーにおいて「静けさ」や「控えめ」がキーワードになって以来、足元のトレンドは随分と落ち着いた。ボリュームを極力レスさせた、薄いスニーカーが増えている。ウィメンズにぺたんこ靴なんて言葉があるが、バレエシューズやパンプスのようにミッドソールが主張しない、柔らかいアッパーが時代性を強調している。そんな薄さに新鮮味を感じるスニーカーを「シン(Thin)・スニーカー」と定義してみたい。これはボトムのウエスト位置が高くなり、縦長に見せるファッションの流れが影響している。スタイリングに干渉しないシルエット、そして服に溶け込むような上質な素材。スポーツ感のないレザーやスエードなどで全体のバランスを図るのが、スニーカー選びのポイントになるだろう。
そう考えると、ただレトロなスニーカーばかりがフォーカスされがちだが、「シン(新)」であることもウェーブをつくるには重要である。クラシックな魅力がありつつも、スニーカーならではの新しいデザイン性があり、現代のスラックスと良好な関係を構築できる、5足5本をピックアップしてみた。
1978年生まれ。エディター。制作プロダクション「MANUSKRIPT」代表。スニーカーにまつわる書籍やコラムを多数執筆。本誌連載「教えて! 東京スニーカー氏」はもうすぐ100回を迎える。