シューズデザイナー竹ヶ原敏之介の監修のもと、コンバースのアーカイブをオールブラックのレザーで再構築するレーベル「ROYAL STAR(ロイヤルスター)」。その第2弾として、名品「オールスター」と「ウエポン」をベースとした新作が登場する。木型、素材、ディテールの全てにこだわりが詰まったこの2モデルのプライスは7万円超え。果たして投資する価値はあるのか? そして「大人がロイヤルスターを履く理由」をスニーカーカルチャーに精通する編集者・小澤匡行が解き明かす。
昔から好きだったコンバースをこれからも好きでいるために、必要な記憶を残したコンバース
「コンバースのアーカイブには、時代や国境を超えて愛されてきた歴史があり、それは単なる意匠だけではなく人のアイデンティティやカルチャーをも取り込んできました」。この「ロイヤルスター」を監修したデザイナーの竹ヶ原敏之介さんは、そう語り、そこに現代の空気と自分の解釈をミックスしてこの2足を作っています。
例えばオールスターやジャックパーセルといった代表作は、はるか昔にスポーツという用途から解放されて、音楽やファッションというカルチャーを帯びました。つまり機能が役割を終えたあとに、デザインが生き残った。このフェーズに辿り着くと、スポーツシューズが明確に“スニーカー”になる気がします。僕たちは10代の頃からこういったスニーカーを服に合わせて長く楽しんできたわけですが、「ロイヤルスター」はアーカイブへの敬意を払いながら、そこからさらに履く人自身の経験を積み上げていける存在、そこにスニーカーとしての新しさがあると思います。
ROYAL STAR AS
スニーカーにおけるラグジュアリーとは何か。この解釈は人それぞれで、希少価値の高いハイプシューズをそう捉える人も多いでしょう。ファッションの視点で見れば、高級な素材やディテールを豪華に加えることもひとつです。ただ、もっと踏み込むなら、そこへの必要性を問い直し、存在する意味を成立させたものだと思います。その点でいうと「ロイヤルスター」は、ただ高級なコンバースを作ろうとしたものではない。税込で7万円台のスニーカーを作ろうとすると、つい足し算で価値を加え、価格を理屈で説明したくなるもの。でも竹ヶ原さんは「履き手に寄り添う存在」を目指すための素材を選び、木型を開発し、ソールをアップデートしている。今回の2モデルのベースとなったALL STARとWEAPONという誰もが知るモデルから、僕たちがコンバースに抱く青臭さ、スポーツ感、カジュアルさを消していく作業は、若者文化との結びつきを解いていくこと。その中で逆に何を残そうとしたのか、に興味をもちました。
重要だと思ったのは、シューズがもつ時間軸です。ALL STARのキャンバスは、古く見えることが魅力で、そのボロ味やヤレ感こそ若さであり、いい意味の無頓着さでもありました。それを表現するのがスニーカーに過去から現在の時間を意図的に加えていく、ヴィンテージ加工というプロセスです。でも「ロイヤルスター」が扱っている時間は、ちょっと違う。上質なレザーを選び、木型、つまりシルエットを作り直すことで、これから歳を重ねていくものになった。だったら、ふつうの革靴を履けばいいじゃん、と思うかもしれないけれど、スニーカーには竹ヶ原さんがいう通り、絶対的な「記憶」があるんです。
ROYAL STAR WP LOW
中学生になって初めて部活で履いたALL STAR、学校指定の白スニーカーとして、背伸びしたくて買ったジャックパーセル。そんな僕とコンバースの思い出は、今も残り続けています。でも、自分の見た目や取り巻く環境は大きく変わった。すると、まったく変わらないコンバースを昔と同じように履きこなすのは、少し難しくなってくる。そんな履き手の変化(進化でありたい)に、かつての「記憶」を被せているのが「ロイヤルスター」ではないか。目には見えない思考の奥行きを、黒いレザーシューズに詰め込むことで、昔から好きだったコンバースを今も好きでいられるものとして成立させている。「若者はスニーカーで、大人は革靴」、といった古い考えを改めるような靴です。
ここ数年、僕は新しくなったジャックパーセルの仕事で、いろいろな職種の同世代にインタビューを続けています。それぞれの記憶を引き出し、価値観に触れる作業を繰り返しているうちに、大人がコンバースを履く理由が見えてきた気がします。正直、このシューズを価格だけで捉えたら「7万円も投資する価値ってどこにあるの?」と思う人も多いはず。それを素材や履き心地とか、実用的な要素だけで語ってしまうと、比べる対象が多すぎて、結局は高級レザースニーカーというありふれた話に帰着してしまう。大事なのは、大人っぽく見せるために過去を消したのではなく “かたち”と記憶を残すために手をかけても、ちゃんとコンバースであることです。それが今の自分が履くべき理由を作っている。
大人になったからといって、若い頃に好きだったものを手放す必要はない。かといって、若い頃と同じように付き合い続ける必要もないと思います。服や音楽と同じように、スニーカーも歳を重ねれば、好きである理由は少しずつ変わっていい。昔から好きだったコンバースに、これからを重ねていく。その時間を自分で育める希少性が「ロイヤルスター」の魅力じゃないかな。
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。
コンバースインフォメーションセンター
TEL:0120-819-217







