2025.11.14
最終更新日:2025.11.14

【プラダ】薄底スニーカーはなぜブームになった?|教えて! 東京スニーカー氏

プラダ モンテカルロ
¥162,800(予価)/プラダ(プラダ クライアントサービス)

モデル名は「プラダ モンテカルロ」。このナッパレザーは柔らかくて、履いて上から見たときのトウの丸みが好みでした。スエードが秋っぽくて気になっていたのですが、この白のトーンと刺繡糸が際立つ配色美にプラダの魅力を感じました。曲線のステッチもジュエリーっぽいです。

薄底スニーカー、なぜブームに?

 今となってはすっかり見慣れた薄底スニーカー。これまでは長く続いた厚底(ダッドシューズ)の反動だと思っていたけど、僕なりに流行分析してみたところ、そんな単純な揺り戻しではないな、と思うようになりました。今日はそんな独言を。

 厚底も薄底も、いわばファッションの流れが導いたトレンド。つまりその発火点にはヨーロッパのモードがあります。パンデミック以降、過剰な派手さを避けるような行動思考に伴って、ファッションも控えめであることがステータスになった。2年ほど前から一気に広まった「クワイエットラグジュアリー」というワードのもと、ミニマルさが誇張されることで、シーンを選ばない、主張しない、スタイリングに干渉しない、そんな視点から革靴回帰がはじまり、薄底スニーカーへと着地した。つまりこのトレンドは、社会的・文化的な文脈と結びついたファッション提案であることが、一過性のブームでない理由だと思います。だからしっくり感じている期間が長く続いているんだな、と。

 各ブランドが自分たちのアーカイブから薄底にカテゴライズするモデルを復刻させたり、またそうなるように既存のモデルをリデザインしたりと、バリエーションはどんどん広がっています。でも、そこに根づく価値観が「クワイエットラグジュアリー」であるならば、選ぶべきポイントは「形」と「素材」の品のよさ。そういう視点で探していると、薄底の本命はやっぱりプラダです。今回紹介する「プラダ モンテカルロ」シリーズは、2005年にPRADA Linea Rossaコレクションの一部として登場したスニーカーを、より上質に、快適にアップデートさせたもの。フォルムの丸みと細身、ソールの薄さのバランスが美しく、それでいてレイヤーのデザインに2000年初期の空気感が残っている。発売されたのは少し前ですが、ずっと気になっている存在です。プラダらしい膝からまっすぐ落ちるシルエットのスラックスと合わせてみたいです。

 そんなプラダもつい数年前(コロナ前)はRe-Nylonが盛り上がり、ロゴとスポーティな素材がモードのアイコンになりましたが、最近はもっぱら潜在的な美しさがフォーカスされてます。人生を振り返ると大学の入学祝いに財布を親にもらったり、成人の記念でローファーに自己投資したり、留学中にNYのお店に初めて行ったときにこのモンテカルロみたいなプラダスポーツのスニーカー(色はシルバー)を買ったりと、何かと節目に欲しくなるのがプラダ。この年になってからは、買い物をするための節目なんてないし、人から機会を与えられることもない。衝動と行動は自分でつくるものだから、世の中や社会の流れとファッションが結びつくことは、動機づけとして重要だと思います。薄底スニーカーは、スポーツとは違う意味での「歩きやすさ」や「快適性」を求める時代感が生んだトレンド。だから買ったほうがいいと思います。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行

「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。

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