2026.03.21
最終更新日:2026.03.21

【アディダス シティシリーズ「PARIS」】薄底スニーカーの未来は?|教えて! 東京スニーカー氏

アディダス シティシリーズ「PARIS」

PARISは、1970年代に多くリリースされた「シティシリーズ」の中でも代表的なモデルの復刻。柔らかなレザーのアッパーと、やや光沢のあるスリーストライプスやヒールの黒の組み合わせは、プライス以上の高級感。シルエットはもちろん細身で、上から見たときも美しい。¥14,300/アディダス オリジナルス(アディダス コールセンター)

薄底スニーカーの未来は?

 ここ10年かけて厚底から薄底へと移行したスニーカーのトレンドは、ファッションの潮流からきています。起爆剤というか、話題になるシューズのお披露目がパリやミラノのファッションウィークばかりだから“モード”とも形容されてきたし、実際にメゾンが発表する新しいスニーカーが、象徴になりました。

 その一方で、アーカイブという過去の遺産を賢く引っ張り出して、薄底ブームをマスに浸透させたスポーツメーカーが、adidasとPUMAです。薄底は、1960〜’70年代に存在した、ロープロファイル(低めのソール)なデザインの再解釈です。そのスリムでシャープな形状が「ミニマル」と評価されるようになった。先に述べた二つがモードの土壌であるヨーロッパを中心に成長したメーカーであることも、理由の一つです。アメリカをベースに生きてきたNIKEやReebokは、1980年代以降のバスケットボールとランニングカルチャーの発展とともにクッショニングとフィットの両軸からパフォーマンス性を進化させ、あるべき姿を変えてきた。そのハイテク感が厚底のボリュームとリンクしましたが、薄底トレンドはクラシック回帰。つまりスニーカーの進化以前、革靴みたいな足元が選ばれた、と言えます。スポーツにカルチャーが結びつく以前に、欧州の空気感でシューズを作り続けていたadidasやPUMAの革靴みたいなスニーカーが、時代のファッションに合っているんです。

 ’70年代のadidasといえば各都市の名を冠した「シティシリーズ」。これまで何度もこの連載でもフォーカスしてきましたが、今注目しているのは、 昨年から少しずつ復刻されているPARISです。まるで一枚革のようにステッチのないアッパー、T字の爪先の補強や、スリーストライプスのギザギザは、革靴のフルブローグを想起させます。シルエットだけでなく、こうしたディテールにも革靴の要素を感じさせるのが’70年代のadidasらしさ。フラットな薄いソールも当時のラバーの厚みでなんとなく衝撃を吸収し、中敷がそれを支える当時の構造そのままです。’70年代も後半になると発泡樹脂のEVAフォームが実用化され、アウトソールと中敷の間にミッドソールというクッションの概念が誕生しました。薄底のデザインはそれ以前。だからガムソールが多く、茶系や黒のアッパーなら同色に見えて、より革靴ライク、といったストーリーが出来上がります。これが僕の分析です。

 このPARISは、一般的に皆がイメージするadidasの配色で、細部やフォルムが欧州的なレザーシューズ。そのミックス感にスタイリング欲が生まれました。僕も最近は黒や茶靴が多いので、ちょっとフレッシュな心持ちで履いてみたいと思います。革靴に寄りかかった流れが長く続いています。その延長に見える新しいトレンドは生まれるでしょうか。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行

「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。

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