東京スニーカー氏ことエディターの小澤匡行さんが注目した2025年発売の「黒スニーカー」を総まとめ。どれも大人の着こなしを引き締めるスタイリッシュなデザインとなっている。
01:Saucony|Saucony SILO MOMENTUM S
ハイファッションを融合した新ラインは要チェック
「サッカニーと言えば『シャドウ』や『ジャズ』といった1980年代のランニングシューズがブランドのレガシーでしたが、この春からデザインにフォーカスした『サッカニー サイロ』ラインが登場しました。Y2Kからフットボールまで、トレンドをキャッチしたモデルをいろいろとラインナップしています。僕が気になった『モメンタム エス』は、90年代のモードスポーツを感じさせる一足。
ウォーキングシューズの歴史にインスピレーションを得たスタイルだそうです。ミッドソールがないような薄いソールとアッパーの関係性や、パテントレザーのあしらいが、レトロフューチャーなイメージでもあり、バリスティックナイロンのような質感のアッパーもモードブランドのスニーカーを彷彿とさせます。
『それどこの?』といわれそうな佇まいですが、波型のスリードットのアイコンもさり気なく使っています。サッカニー本体は、今、ランニングの世界ですごく評価が高く、アメリカでもヨーロッパでもシリアスランナーの着用率が上がっています。パフォーマンスシューズにもルックスのいいものが増えました。
僕はランニングのシーンにも常に注目しているので、サッカニーにポジティブなイメージがあります。だからライフスタイルシューズもこういう風に変わってきているんだなと、どこかで納得していました。スニーカーの専業ブランドでは、こういうチャレンジはまだ少ないので期待しています」(小澤)
02:adidas Originals for ADAM ET ROPÉ |SAMBA OG
サンバOGをちょっとしたアレンジで鮮度UP
「少し見飽きた感があるかもしれないサンバは、ブロークコアの流行で2022年頃から脚光を浴び、Y2Kファッションと結びついて大ブレイクしました。そこから枝葉のようにトレーニングシューズやフットボールシューズがリバイバルし、大きな流れを生んだことで、若い世代にとってサンバは“ひとつの軸”としてとらえられていると思います。
僕から見ると、いよいよサンバがスタンスミスやスーパースターと肩を並べる存在になっている気がして、フットボールのような一過性の流行がなくなってもサンバは残るんじゃないかと感じます。サンバ自体は1950年代にルーツがあるモデルですが、Y2Kという現代のファッションやスニーカーカルチャーの大きなカテゴリーの中で、アディダスの時代性を象徴するのがサンバなのだろうと思います。
サンバは基本的にベーシックカラー中心だから、一足持っていたら買い足しは不要だし、特に派手な色に挑戦したいわけでもないじゃないですか? そんな中にあってアダム エ ロペの今季の別注は、モダンなアレンジが施されていて目を引きました。
アウトソールをブラウンのガムソール、ライニングもブラウン系のレザー調素材でまとめ、コントラストカラーの白ステッチをきかせています。黒×茶色の配色やクラフト感といった旬の要素がうまく落とし込まれていて、シンプルながらも大人っぽく見えたので、今回ピックアップしてみました」(小澤)
03:THE NORTH FACE|Nuptse Loafer
「ヌプシ」のDNAを受け継ぐ新型ローファー
「この秋、『ヌプシ ブーティ』からローファータイプが登場しました。ローファー人気も、ついにザ・ノース・フェイスにまで波及したか…と。アッパーはダウンのようなリサイクルポリエステルとスエード、2種類あります。個人的にはヌプシダウンがネタであることが大事なので、リサイクルポリエステルアッパーの方に惹かれました。
3年前にザ・ノース・フェイスがパラブーツとコラボしています。それはヌプシを彷彿とさせるキルティングをフルグレインレザーで仕立てたアッパーに、パラブーツの自社製ラバーソールを組み合わせていました。残念ながら、そのコラボレーションは一般発売されず…。もしリリースされていたなら、今でも欲しいと思っています。
今回の『ヌプシ ローファー』は、ただトレンドに寄せるわけではなく、アイコンを踏襲しつつ、どうやってモダンなアイテムに落とし込むかを考えられている点が素晴らしい。これはスニーカーに限らず、ファッションにおいて大事なことです。“ヘリテージ企画”としても、残し方と変え方のバランスが絶妙だと感じました。
余談ですが、僕は『ヌプシ ダウン ミュール』をずっと愛用しています。これは山のテント用にできたアイテムですが、冬場のルームシューズとして、自宅でも山でも、コレです。室内を歩いていても足音がしないからいいんですよ」(小澤)
04:Reebok|INSTAPUMP FURY MULE
フィット感を調整できる名品のミュール
「90年代のハイテクスニーカーの名品、インスタポンプフューリーのミュールです。ほかのスポーツブランドからもミュールが出ていますが、これが目を引いたのはプロマロフトのカバーが付いている点。インスタポンプフューリーは軽量化のためにアッパーをくり抜いているので、冬に履くのには正直、寒くて向いていません。でもこのミュール版はプリマロフトカバーが付いていてあたたかいんです。
それともうひとつ。PUMP SYSTEM を搭載しているから、ミュールなのにアッパーのフィット感が調整できる点も出色です。通常のミュールは踵がカパカパと空いてしまうのが個人的にストレスなので、こういうデザインこそアッパーのフィット感が大事です。
一見、インスタポンプフューリーとわからない甲殻類のようなデザインですが、これもハイブランドのシューズを彷彿とさせて、僕的にはイヤじゃない。アッパーのロゴ刺繍もブラックで目立たず、ほぼブラックのワントーンだから使いやすいと思います。何年かしたら『あれ、よかったね』と隠れ名品的な存在になりそうなムードを感じています」(小澤)
05:PUMA|DEVIATE NITRO ELITE TRAIL HELIOT EMIL
モードなアプローチが光る気鋭のデザイナーコラボ
「コペンハーゲン発のモノクロームでソリッドな、それでいてスポーティなニュアンスも携えるモード系のブランド、エリオット・エミルとプーマとのコラボレーションです。ディヴィエイト ニトロ エリート トレイルというプーマのハイテクランニングシューズがベースになっていますが、アッパー全体をテキスタイルでカバーして、ブラックワントーンにしているので、ベースモデルがまったくわからなくなっています。
世代的に僕は、プーマと言えばフラットでローテクなバッシュのイメージが強く、ハイテクなランニングシューズはノーチェックで、今までプーマのランニングシューズを履いたことがありませんでした。でも今年は箱根駅伝でも25人の選手がプーマを履いていたそうで、僕が推している立教大学の選手もプーマを履いている人が多かった。最近はランニング市場でもリアルなアスリートに落ちてきている気がして、プーマ、頑張っているなと。
テクノロジーも備えたランニングシューズがこれだけファッション感度の高いものになっているということは、僕が出張スニーカーとして挙げる『走れて日常生活にもマッチする』という条件をクリアしています。プーマは90年代にいち早くジルサンダーとコラボするなど、先鋭的なアプローチに僕もずっと注目してきました。このエリオット・エミルとのコラボはデザインとしても面白いので、ぜひ履いてみたいと思っています」(小澤)
06:MIZUNO FOR MARGARET HOWELL|MIZUNO HIKING SANDALS
スニーカー色強めの2WAYで履けるサンダル
「マーガレット・ハウエルとミズノの定例コラボから、今年の春夏に出た新作スニーカーサンダルです。ミズノのインラインにあるウエーブエボークスイッチという、ウォーキングシューズから派生したサンダルをハウエル流にアレンジしています。インラインもとてもよくできているんですが、よりソリッドに洗練されたこちらのほうがUOMO向きかと思ってピックアップしました。
このコラボのベースになっているウエーブエボークスイッチを、ミズノではサンダルと言わず“二刀流シューズ”と謳っています。いわゆるスニーカーサンダルの中でもスニーカー色強めのモデルと、サンダル色強めのモデルがあると思いますが、このハウエルのハイキングサンダルはもちろん前者。
履いてみるとすごく歩きやすくて、甲がオープン仕様ということもあって夏のウォーキングにもよさそうです。踵のストラップを外してミュールにしたときも、シューレースでフィット感が調整できるからホールドされていて踵が浮かず快適です」(小澤)
07:New Balance|204L
アーカイブと時代の気分を結ぶモードな新型
「ニューバランスは、アーカイブと時代の気分を巧みに結びつけながら、新しい形を提案することに長けています。それが人気の理由でもあるのでしょう。1906をローファー型スニーカーにしたり、2002をミュールにしたのも早かったですし、デザインやものづくりの自由度の高さには、いつも感動させられます。
今回取り上げる204Lは新型ですが、どことなくミュウミュウとコラボした530を彷彿とさせます。2000年代のランニングモデルのアッパーデザインとロープロファイルを融合させ、とてもモダンな一足に仕上げている。この手腕もまた、ニューバランスならではです。
204Lのような、Y2Kなアッパーに薄いソールのモデルが出始めた当初は、正直なところ違和感がありました。でも今ではすっかり自然で、とてもモードな印象に変わりました。ただ、この204Lのように、センスを感じるフォルムや配色、素材を選び、インラインで展開できるのは、やはりニューバランスの技だと思います」(小澤)
08:New Balance × DOVER STREET MARKET|New Balance × DSM 991v2
スペシャルな黒をまとった大人の990品番
「ニューバランスの990番台は、今も高い人気を誇っています。最新のものが欲しい人は990の新しいバージョン、もう少しベーシック系が好きな人は992や993を狙っている気がしますが、僕は991のシリーズが一番好きで6色ぐらいもっています。定期的に出るものでもないので、発売すれば必ずチェックしています。一番最近出たのがこのニューバランス×ドーバーストリートマーケットのオールブラック。
993をはじめ990シリーズのオールブラックはおしゃれ好きに支持されています。でもドーバーの黒は、質感や濃度がニューバランスの使う黒とはまったく違っていて、黒の表現は奥が深いなとドーバーのトリプルブラックコラボを見るたびに感じます。この991v2も奇をてらったことはしていませんが、素材の組み合わせもよくて、すごくスペシャルな黒に仕上がっている。
デザイン的にはシュータンのロゴを左右非対称にするなど多少アレンジされていて、さりげないけれどドーバーらしさはしっかり落とし込まれています。991v2は僕的にはボリューム感もちょうどよくて、ハイテクすぎないどこかローテク感のあるところもいい。これが992だとちょっと若さが出るような気もするので、そういう意味でも大人の990品番だと僕は思います」(小澤)
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。
サッカニー公式オンラインストア
ジュンカスタマーセンター TEL: 0120-298-0133
ゴールドウイン カスタマーサービスセンター TEL:0120-307-560
リーボック
プーマ お客様サービス TEL:0120-125-150
マーガレット・ハウエル TEL:03-5785-6445
ニューバランスジャパンお客様相談室 TEL:0120-85-7120
ドーバー ストリート マーケット ギンザ TEL: 03-6228-5080























