2025年4月に連載「大人がこのスニーカーを買う理由」で紹介した新作を、アクセス数が多かった順にあらためてご紹介。大人が「本当に欲しい」スニーカーがわかる!
BEST5:Salomon|XT-WHISPER
2000年のウィメンズ由来トレランシューズを復刻
「サロモンのトレイルランニングシューズにXT-ホークというモデルがあって、そのウィメンズ版として2000年に登場したのがこのXT-ウィスパーです。昨年末にユニセックスモデルとして復刻され、多色展開されています。最近ではKITH(キス)が別注するなど、今脚光を浴びているモデルでもあります。
XT-ウィスパーのいいところはウィメンズ用だったからこそのローテク感にあります。サロモン独特の硬質なデザインではなくソフトな印象で、オールブラックやネオンカラーを差したような今っぽい配色もあるんですが、あえて少しやわらかいオレンジからベージュのグラデーションカラーを選んでみました。
個人的には90年代の終わり頃の、トレイルランニングシューズのムードを感じていて、“サロモンの中のレトロモデル”というところに惹かれました。みんなが好きなハイテク系のサロモンではありませんが、カラーリングのアプローチを見ると新鮮に履けるシューズだと思います」(小澤)
BEST4 :JIL SANDER|Moon
美しい佇まいのレトロスニーカーが新定番に
「ジル サンダーの2024年秋冬の新作として登場した『ムーン』というスニーカーです。新定番として継続的に展開されています。発売されたことは知ってはいたものの、銀座の旗艦店のオープニングで初めて実物を見て『きれいだな』と見とれました。イギリスの彫刻家、レイチェル・ホワイトリードの作品の上に並べたディスプレイも相まって美しく映りました。
いっときのダッドシューズ的なトレンドが一段落して、ハイブランドのスニーカーは今ローテクにシフトしています。テクノロジーで競争してなくていいからこそ、シルエットの美しさや素材の使い方でハイブランドならではの個性が打ち出せるようになって、美しいレトロスニーカーが増えているのは喜ばしいこと。
レトロランニングシューズをベースにしていると思うのですが、ヌメり感のある上質なスエードやサテン調のナイロンのコンビネーションはすごくきれいだし、イタリア製ならではのデザインにも特徴があります。いい意味でレザーシューズのような重厚感があって、大人にふさわしい一足になっています」(小澤)
BEST3:VEJA|PANENKA
革の質感も好印象なフットボールデザイン
「フランス発のサステナブルなスニーカーブランドとして日本に上陸して以来、ヴェジャは注目されてきました。いろいろといいところがあるものの、最近は環境的な側面が強くなって、以前よりファッションとの距離が離れてしまったような気がしていましたが、立て続けにヨーロッパに行ってヴェジャの魅力を再確認できました。そういえばヴェジャがいいなと思ったのも、6年前のパリでした。
今回ヴェジャのショップへ行ったらすごくにぎわっていて、街でも履いている人が以前にもまして増えています。とはいえ大衆化しているわけではなく、しゃれた若者たちも履いているんです。それで今回は、ヴィテージのフットボールシューズのデザインやストリートの流れを汲んだ新作の『パネンカ』をピックアップしてみました。
ヴェジャ史上もっともやわらかい革と謳っている、ウルグアイのO.T.(オーガニック・トレース)レザーをアッパーに使用しています。フットボールシューズってピカピカしている革が多いんですが、このヴェジャの革はマットな感じがして好きです。すごく落ち着いて見えるからユースな印象もなく、大人っぽく履けていいのではないでしょうか」(小澤)
BEST2 :NIKE SPORTSWEAR|NIKE CORTEZ TEXTILE
90年代のブームを象徴するモデルをアップデート
「なんだかんだで若者に人気のコルテッツ。僕が学生の頃にヴィンテージスニーカーに開眼するきっかけになったモデルでもあります。90年代はヴィンテージスニーカーの象徴として、ナイキで真っ先に手に入れなければいけないモデルというのが定説になっていました。だから僕ら世代にとっては、コルテッツは極めてナイキらしいスニーカーというイメージがあるんです。
だけど世の中的にはそこまでの定番じゃなくて、時代の流れに左右されてラインナップから外れたり戻ったりしています。4月に発売された一番新しいコルテッツ テキスタイルはつま先部分を広げて、硬めのサイドパネルを配してアップデートされています。型崩れ防止のためということですが、僕が熱狂したヴィンテージのシュッとしたシルエットとは違うルックス。
つまりコルテッツはキング・オブ・ベーシックではなく、実は時代の流れを受けるシーズンモデルだということを改めて思いました。とはいうものの、このブルー×イエローの配色は、当時、ヴィンテージのワッフルトレーナーで僕が一番欲しかった色。90年代の、あの懐かしい感じがこみ上げてきます。丸っこいフォルムも今のファッションに合わせたら、かわいく見えてよさそうな気がします」(小澤)
BEST1:MERRELL|SPEED ARC MATIS GORE-TEX
プロポーションのいいハイテクシューズ
「ゴープコアのジャングル モックもありながら、こういうフューチャリスティックなモデルも手がけるメレルは、本当に器用なブランドになっているなと思います。最新のスピード アーク マティス ゴアテックスには、メレルのハイテクシューズへの意欲が見えます。メレルといえば素材を組み合わせる複雑なレイヤーが特徴でしたが、これは完全に圧着で、見事なハイテクシューズになっています。
アッパーには少しミリタリーなムードがありつつ、アッパーからはみ出すソールユニットが現代的です。足入れしてみると、今までにない不思議なクッショニングを感じました。そして、とても軽い。テクノロジーを駆使しているようで、意外にシンプルにまとまっているのも好印象。
ソールの張り出し方を見ると、マーティン・ローズがデザインしたスニーカーを思い出しますが、このシューズは独特の形状のソールを使いながら、プロポーションがすごくいい。きれいに見える理由はそこだと思います。本格的なアウトドアのスペックではありますが、ファッションユースによさそうです。ハズしとかではなく、素直に合わせたいと思います」(小澤)