白スニーカーは大人の着こなしの定番だが、秋らしい着こなしに合わせるなら、暖かみのあるベージュカラーもおすすめ。ここでは、東京スニーカー氏こと小澤匡行さんが注目した6型をご紹介。
01:MERRELL|HUT MOC 2 × côte&ciel
技術に裏打ちされた斬新なフォルム
「独特なフォルムのバックパックが人気のコートエシエルとメレルの初コラボレーションが今年の6月末にメレルの1TRL(ワンティーアールエル)ラインから発売されました。シルエットがユニークすぎて『どうやって履くのだろう?』と興味を持ちました。アッパーのファブリックをツイストして螺旋状にしたこのデザインは、富士山を囲む雲の形がインスピレーションだそうです。
渦の中央が履き口になります。中にはネオオプレーン製のソックインサートがあしらわれているので、ひとたびフィッティングしてしまえば、軽量で快適に履けます。靴としての造形もいいし、このフォルムを実現した技術力はすごいなと感動を覚えました。
1TRLは2020年にヨーロッパで始動して、さまざまなアイデアで今のファッションの文脈に沿ったシューズを打ち出しています。歴史こそ浅いけれど、革新的なデザインに挑戦するプレミアムラインをつくったからこその技術や経験が生きて、今回のコートエシエルとのコラボのような斬新な形状を製品化できたのだと思います」(小澤)
02:PUMA × Graphpaper|Speedcat Plus GRAPHPAPER
大人が履きやすいグレージュワントーンの薄底モデル
「2000年前後のプーマのデザインは、今とても時代に合っている気がします。モストロ然り、スピードキャット然り。ヨーロッパのスニーカーならではの独特のフォルムが、今のファッションにマッチしているのだなと、カッコよく履きこなしている若者のSNSを見ていて思います。当時を経験していないひとつ下の世代が、新しい解釈でこういう靴をとらえているのも面白い。
そんな若者の靴をグラフペーパーが、大人っぽい色合いや素材感でアレンジしてくれました。ある意味無臭なグレージュのワントーンで、スムース、ショートスエード、ヌバックと3つの革で表情をつけています。クラークスのベージュのワラビーを愛用していたような人が、すんなり取り入れやすいカラーリング。グレージュがスニーカーとファッションの距離を縮めてくれます。
スピードキャットはドライビングシューズをベースにしたモデルだからかなりの薄底で、これがまた今の服に合わせやすい。着こなしを今っぽく見せてくれます」(小澤)
03:NIKE SPORTSWEAR|AVA ROVER
次世代を感じさせるイノベーティブなデザイン
「ナイキ エイバ ローバーは7月25日に発売されたばかりの新型スニーカーです。2000年前後のナイキのモデルにあった近未来感のあるアッパーと厚底のリアクトX フォームクッショニングを融合したようなデザインで、久々にイノベーティブなナイキを感じました。
2018年にナイキのリアクト エレメントが出たときも、新しいモノにチャレンジするナイキらしさが見えて、僕はすごく好きでした。エイバ ローバーはそれに近い感覚があります。ただこういう先鋭的なモデルが発売してすぐに大ヒット! みたいなことは、近年あまりありません。そこがちょっと残念に思うところ。
でも、こういう見慣れない、斬新なスニーカーは、多分ナイキにしかつくれない。スニーカーを新しいフェーズに押し上げる意気込みのあるデザインは常に好きです。確実にスタイルにハマるスニーカーだけを選ぶのではなく、こういう新しいものを自分のファッション感に取り入れて、うまく履きこなすことが大事だと思います。いろいろとファッションを考えたくなるデザインでもあります」(小澤)
04:adidas Originals|MONTREAL
レトロデザインにベージュという万能な掛け算
「1976年のモントリオールオリンピックに向けて開発された、モントリオール76をアップデートした新作です。当時、競技用ではなくトレーニングシューズとして登場したもので、オリジナルモデルはヒール部分がラバーで覆われています。今回発売されたのは、ヒールのラバーパーツをなくした履きやすいデザインで、僕は初めて見ました。
このモントリオールに関してはオリジナルモデルが云々というよりも、配色でピックアップしました。アディダスのこの手のトレーニングシューズは、『スタンスミス=白』のように特定の色のイメージがあまりなく、色を楽しむためにつくられています。僕のような黒い格好が多い大人にとって、足元に白のスニーカーは万能ではなく、少しまぶしすぎる存在になってしまいました。その点、ベージュやクリームといった色だと落ち着くんです。
このモントリオールもアディダスが得意とするレトロなデザインでベージュと、これはもう万能な掛け算だと思いました。黒い服だけでなく、夏は白パンツに合せたり、チノパンでワントーンなんて着こなしにもよさそうです。セレクトショップがすぐに別注しそうな予感がします」(小澤)
05:SUPERGA|1925 Made In Italy
原点回帰した無垢な100周年限定モデル
「ストリートからは縁遠い存在のスペルガ。若い頃はカルチャーも違うし、履いたことがなかったんですが、15年ほど前でしょうか? プレッピーやアイビー、それからイタリアのクラシックなドレススタイルがトレンドに浮上したとき、初めて手に入れました。定番『2750』のネイビーを、インコテックスやGTA(ジーティーアー)のスラックスに合わせて、ベルベスト、バブアーのジャケットなんかを着たりして、自分なりのカジュアルスタイルをつくっていた時期がありました。
それまでの僕にはありえないくらいレトロなスニーカーでした。1960年代にアイビーリーガーが愛用していた靴だからそれは当然で、当時はそれなりに新鮮に感じました。そんなスペルガが100周年を迎え、イタリア製のモデルが世界1000足限定で発売されると聞いて見てみたところ、無垢なキャンバスでつくられていたのですごく面白いなと。メイド・イン・イタリーでラグジュアリーにするのではなく、アーカイブの一番古そうな原点に向かったのがよかった。
目の粗いキャンバスアッパーにはクラフト的なムードがあるし、通常はアッパーに付いているロゴタブもない。トゥがシュッとしていてバランスがよく、品もあります。このスペルガのように、ゼロに戻すと靴の本質が見えてきますよね。これにアーティストっぽく手書きでカスタムするのもいいかもしれません。定番に比べて価格は高めですが、薄底ブームの今、クラフト感のある『1925 メイドインイタリー』は買いだと思います」(小澤)
06:VANS|Authentic
ヴァンズはインラインの定番モデルが最強!?
「インラインで普通に売られているヴァンズのオーセンティックです。いろいろトピックはあるものの、インラインでこういう光るスニーカーが見つかるのが、ヴァンズの魅力。おしゃれな人たちは、なんてことのない定番のオーセンティックをサラッと履いているイメージがあります。
多くの場合、ハイブランドや人気ストリートブランドとのコラボモデルがうらやましく思えたりするものですが、ヴァンズはインラインのド定番が普通にカッコイイと思わせてくれます。誰かがオーセンティックの上位コラボを履いていたとしても、『自分は別にこっちでいいし』となるんです。守ってもらえている感覚がある。
今シーズンのこのCREPE PEYOTE(クレープ ペヨーテ)というオーセンティックの新色は、クリアクレープソールとスエードアッパーでこんなに高級感があるのに8,250円という価格。これでいいですよね。こういうのをサラッと品よく履いていたいです」(小澤)

「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。
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