2026年3月に連載「大人がこのスニーカーを買う理由」で紹介した新作を、アクセス数が多かった順にあらためてご紹介。大人が「本当に欲しい」スニーカーがわかる!
BEST5:VANS|AUTHENTIC
60年を経て変わらずに評価される定番の魅力
「ヴァンズのオーセンティックは今年で60周年を迎えました。近年はプレミアムバージョンも登場していますが、僕はベーシックモデルがいちばん好きです。その理由はフォクシングテープのライン(線)なのだと思います。プレミアムにはこのラインがなくて、少し厚底っぽく見えます。僕にとってヴァンズはロープロファイル。ちょっと薄く見えるバランスが好みなので、普通のオーセンティックに軍配が上がります。
ヒールのステッチもプレミアムは補強テープ付きの4本で、それもベーシックの簡素なステッチがヴァンズらしいと感じています。ずっと変わらないものが60年間、評価され続けているというのは、よく考えると大変なこと。新しいものをどんどん打ち出していくほうが、案外簡単かもしれません。オリジナルの魅力的な部分、オーセンティックでいえばこのチープでミニマルなところをヴァンズは理解していて、僕としてもオーセンティックはいつまでもそういう靴であってほしい。
今シーズンはチェッカー柄が新色にラインナップされています。スリッポンやオールドスクールはチェッカーを履いたことがありますが、オーセンティックではまだないので、60周年を機に履いてみたいと思います。普段なら白×黒を選ぶところですが、このブルーのチェッカーが思いのほかよくて。この季節、チノパンに合わせるのもよさそうです」(小澤)
BEST4:CONVERSE|PRO LEATHER J VTG OX
完全復刻の呪縛にとらわれない50周年モデル
「プロレザーの50周年を記念してコンバースのタイムラインから、下北沢のヴィンテージスニーカーショップ・ソーマの徳永勝文さんが監修をしたプロレザーが登場しました。徳永さんは2021年の初コラボレーションのときにプロレザーの黒×グレー配色をスエードのコンビネーションでつくっています。今回はシボ感と光沢のあるヴィンテージ調レザーを組み合わせた高級感がすごくいいなと思いました。しかも日本製です。
50周年モデルは徳永さんのほかに、静岡のスニーカーショップ・マグフォリアの山田隆也さん監修のパープル×イエローバージョンもあります。このふたりはヴィンテージ・スニーカー界のヒーローで、熱烈なファンもついている。何度かお会いしていますが、知識はもちろん、スニーカーへの熱量と愛情にいつも圧倒されます。そんな彼らが手がけるからこそ『欲しい!』という人も多く、今回のプロレザーも、彼らの“意識”が色濃く反映された一足になっています。
完全復刻ではなく、本当に好きだからこそ考える『こうだったらよかったのに』というようなディテールが組み合わさっていて、そこがまた魅力です。本物を知っている目利きならではのアレンジが活きている。マニアの世界では完全復刻がよしとされますが、そうではないヴィンテージのとらえ方に、新たな価値観を提示してくれました。完全復刻至上主義の呪縛にとらわれていない名品です」(小澤)
BEST3:FOOT INDUSTRY for BEAUTY&YOUTH|SOFT GAT SHOES
ファッション系薄底シューズのエントリーモデル
「アスレッチックシューズとは別の文脈で薄底を楽しみたい人に、ちょうどいい一足を見つけました。国内でフットウェア製品の製造・研究・開発を行うフットインダストリーに、ビューティー&ユースが別注した『バレエトレーニングシューズ』です。このブランドは2014年にスタートしていて、ファッション視点をうまく捉えたスニーカーを多く手がけています。
『ソフト ガット シューズ』は薄底のレトロランニングシューズをベースに、バレエシューズのディテールをミックスしたモデル。ビューティー&ユースの別注ではアッパーの素材を光沢のあるナイロンとやや毛足の長いスエードを切り替え、履き口にギャザーを入れることでモダンなルックスと快適な履き心地を両立させています。アッパーをブラックのワントーンにして、よりミニマルに見せているのもビューティー&ユースらしいです。
この別注シューズにはトレンドのキーワードがいくつもバランスよくミックスされています。モード感のある薄底ファッションシューズを気軽に楽しみたいと思っている人にとって、とてもいいエントリーモデルになるのではないでしょうか」(小澤)
BEST2:Allbirds|Cruiser Terralux
レザーを越える新素材をまとった注目シューズ
「ウール調素材のミニマルなスニーカー『ウールランナー』で一躍有名になったオールバーズ。この連載で取り上げるのは初めてですが、スタートして10年が経ちました。今回紹介する『クルーザーテララックス』は3月19日に発売された新作です。今までにはないシルエットが目を引いたのはもちろん、アッパーにリアルなレザーのような上質感を備えた新素材“イノベラ(INNOVERA)”を採用している点も新鮮でした。
“イノベラ”はバイオデザイン技術から生まれた合成皮革で、植物由来のたんぱく質、バイオポリマー、再生ゴムを原料としてつくられています。動物の皮膚に含まれるコラーゲンにとてもよく似た性質を持つため本革のような質感が生まれ、従来のヴィーガンレザーを一歩進めた素材として注目されています。高級感だけでなく、履き続けたときのシワ感や経年変化もリアルレザーのような風合いになりそうで、レザーと同じ土俵で勝負できるサステナブル素材を選ぶ姿勢が、いかにもオールバーズらしいと感じました。
エコフレンドリーやサステナブルなものづくりを掲げるオールバーズを、個人的にはとても“アメリカらしい”シューズブランドだと思っています。少し前はIT業界の成功者が履いているイメージもありましたが、『クルーザーテララックス』はデザインもかわいらしく、ニットパンツのようなソフトなボトムスに合わせたら、こなれて見えるのではないでしょうか。ライニングには羊毛混紡素材を使用しており、見えない部分への配慮にもブランドの姿勢が表れています」(小澤)
BEST1:adidas Originals|PARIS
今の時代感を象徴する上質なレザースニーカー
「自分はストリート育ちなので、若い時分に薄底スニーカーを履くことはありませんでした。当時はアメリカのファッション軸で生きていたから、80~90年代にソールの機能が発展していったバスケットボールシューズやランニングシューズに影響を受けています。近年、ルーズシルエットが流行したときは、アメリカ寄りのボリュームシューズがトレンドだったわけですが、クワイエットラグジュアリーのようなヨーロッパの流れが強まると、細身のシルエットに合う薄底のスニーカーが注目されるようになりました。サンバのようなモデルがその象徴です。
ガムソールのサンバもさることながら、EVAミッドソールが一般化する以前のアディダスのスニーカーには、どこか革靴のような佇まいがあります。この“革靴っぽさ”こそが今のトレンドに通じると僕は思っていて、昨年の秋ごろから復刻されている『パリ』はまさにその代表。今の時代感をよく表しています。
アディダスの薄底スニーカーは、とにかく革質がいいんです。アッパーのスムースレザーはもちろん、スリーストライプスやヒールパーツにあしらわれているスエード、さらにライニングにもやわらかなレザーを用いるなど、高級なレザーシューズのような雰囲気をなぞっています。ストリートとは違う文脈のスタイリングで、こういうレザースニーカーをファッショナブルに履いてみたいと思っています」(小澤)
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。














