着こなし全体を引き締めてくれる黒スニーカーは大人の必需品。UOMOでお馴染みの東京スニーカー氏ことエディターの小澤匡行さんがピックアップした新作は、どれもデザイン、機能ともに申し分ない。
01:Jordan|AIR JORDAN 8 RETRO “AQUA“
NBAオールスターでジョーダンが履いたカラーウェイ
「エア ジョーダン 8は僕の2足めのエア ジョーダンで、中学3年生のとき父親にアメリカ出張で買ってきてもらった思い出のスニーカーです。僕が欲しかったのは7でしたが、父親は店でエア ジョーダンと言って出されたものを買ってくれただけなので、それがどのモデルかわかるわけもなく…受け取った僕は『これじゃなかったのにな』と思いながらも言えずに、ずっと愛用していました。
部活でジョーダンを履くのはカッコつけすぎな気がして、部活の後、友だちと運動公園でバスケをするときや、塾に行くときなどファッションとして履いていました。僕が持っていた8は今回の『アクア』ではなく、黒ヌバックに赤と白の『プレイオフ』。当時はチャンピオンのリンガー風スウェットやベンデイビスのシャツにカーハートのパンツと、そんな空気感でコーディネートしていた記憶があります。どこか甘酸っぱく、気恥ずかしい思い出の8ですが、今見るとクロスストラップのデザインも意外にかわいい。
大人になるとファッションも凝り固まってきて、自分に合うものだけを着るようになってしまいます。そんなマンネリを脱するにはこのエア ジョーダン 8のように、自分の引き出しから取り出してきたものと組み合わせてファッションを楽しむのがいいんじゃないかと。買って満足するのではなく、自分のものにできたらいいなと思います」(小澤)
02:asics|US6-S GEL-KINTIC FLUENT
ファッション感度の高いキコ監修モデルの新作
「ゲル-キネティック フルーエントのキコ・コスタディノフ監修バージョンです。ゲル-キネティック フルーエントは2010年代のいろいろなランニングシューズを融合して現代的にアレンジした新型で2024年の年末に登場しました。これから発売されるキコ監修はインラインとは違っていて、アッパーのデザインはもちろん、ヒールのスクートイドゲル(Scutoid GEL)がマーブルになっているあたりに心をつかまれました。
今年5月に北欧に行ったとき、アシックスの人気の高さに驚きました。キコが携わった7~8年前からずっと続いているそうです。似ているようでしっかり更新されていて、しかも飽きさせないデザイン。キコがアシックスとファッションの距離を近づけてくれたと、取材した店のバイヤーも語っていました。改めて彼が手がけたスニーカーを見ると、彼のアイデアやミックスのセンスは、いつも時代の先を行っているんだと理解できます。
今回のスニーカーも過去を見つめ直して、組み合わせることで、これが今のファッションの形なんだと提示しています。履き口からつま先へと一体化したシルバーのラインや、カップ状のオーバーレイがアシックスストライプに重なるディテールも新鮮です。そして大理石のようなヒールパート。こういう部分はまさにファッションですよね」(小澤)
03:adidas Originals|ZPONGE FLUX SHOES
新テクノロジーを搭載した和を感じるスニーカー
「アディダスは最近、ランニングシューズのテクノロジーをライフスタイルのスニーカーに落としこんでいます。昨年登場したアディゼロ アルクがその筆頭ですが、2025年秋冬の新型として登場したこのZponge(ズポンジ) フラックスシューズもそんなモデルのひとつ。Zpongeはアディダスの最新テクノロジーで、衝撃吸収技術を融合したスポンジのようなミッドソールが特徴です。
この7月に登場したZponge フラックス シューズは、2000年代に登場したAdiflux(アディフラックス)のアッパーにこのZpongeミッドソールを融合しています。アッパーのクロスしたようなデザインはハイテクだけれどもどこか和テイストという2000年代のトレンドで、モードなスタイルとも親和性が高い。第一弾はイエローにブルー、オレンジという鮮やかな配色でしたが、最近リフレクティブ素材を使用したモノトーン配色が発売されました。こういうオリエンタルなムードのスニーカーをサラッとスラックスに合わせてもいいんじゃないかと思いました。
Zpongeというネーミングはさておき、履き心地はとてもよくロッカー構造だから歩きたくなります。デザイン的にもファッショナブルで、意外と大人が履きやすい一足ではないかと。無地のブラックやネイビースタイルの足元によく合います」(小澤)
04:HOKA®|Mafate Speed 4 Lite TS
ホカ®らしさを消した視覚的デザイン
「昨年登場した『ステルス テック コレクション(STEALTH TECH COLLECTION)』が、今年も出ました。“存在を消す”という意味の“ステルス”という言葉を使いながらもリフレクターを全面に使っていて、それなりに存在感はあるのですが、どこかホカ®とわかりにくいデザインが特徴です。昨年は『ボンダイ 8』と『クリフトン 9』で、今シーズンは僕が好きな『マファテ スピード 4 ライト』がラインナップされていたので、紹介させてください。
『マファテ』はソールユニットがほどよいボリュームで、フォルムにもメリハリがあります。比較的シュッとしているところが僕好み。僕はトレイルを走るわけではないのですが、海外のランナーが『マファテ』を履いているのを見ることも多く、何よりその魅力に気づかされたのはフランスのパフォーマンスブランド、サティスファイとコラボレーションした『マファテ スピード 4 ライト』を見たとき。オールカーキ、オールブラウンといったトーナルカラーとシャープなフォルムのバランスが絶妙でした。
今回の『ステルス テック コレクション』もグラフィカルなモノトーンで、しかもシースルーアッパーを採用するなど視覚的にも美しい。ファッションとしても合わせやすいデザインだと思います」(小澤)
05:New Balance|204L
アーカイブと時代の気分を結ぶモードな新型
「ニューバランスは、アーカイブと時代の気分を巧みに結びつけながら、新しい形を提案することに長けています。それが人気の理由でもあるのでしょう。1906をローファー型スニーカーにしたり、2002をミュールにしたのも早かったですし、デザインやものづくりの自由度の高さには、いつも感動させられます。
今回取り上げる204Lは新型ですが、どことなくミュウミュウとコラボした530を彷彿とさせます。2000年代のランニングモデルのアッパーデザインとロープロファイルを融合させ、とてもモダンな一足に仕上げている。この手腕もまた、ニューバランスならではです。
204Lのような、Y2Kなアッパーに薄いソールのモデルが出始めた当初は、正直なところ違和感がありました。でも今ではすっかり自然で、とてもモードな印象に変わりました。ただ、この204Lのように、センスを感じるフォルムや配色、素材を選び、インラインで展開できるのは、やはりニューバランスの技だと思います」(小澤)

「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。
アトモス カスタマー TEL: 050-1720-8813
アシックスジャパン カスタマーサポート部 https://www.asics.com
アディダス コールセンター TEL:03-6732-5461
デッカーズジャパン TEL:0120-710-844
ニューバランスジャパンお客様相談室 TEL:0120-85-7120