東京スニーカー氏ことエディターの小澤匡行さんが注目した2025年発売の「コラボ・別注スニーカー」を総まとめ。ひと味違うアレンジが効いた逸品でワンランク上のスニーカースタイルを実現しよう。
01:MM6 Masion Margiela|MM6 Masion Margiela × Salomon XT-MM6
今までのコラボとは違う広がり方が新鮮
「10月下旬に発売された、エムエム6 メゾン マルジェラとサロモンによる最新のコラボレーションスニーカーです。メゾン マルジェラとエムエム6はメゾンブランドの中でも、同じブランドと長く関係を築きながらコラボレーションを続けていくようなところがあります。メゾン マルジェラとリーボックとのコラボレーションは長きに渡って続きましたし、エムエム6はサロモンと3年前にスニーカーで初めて取り組んで、昨年秋にはスニーカーだけでなくウェアのカプセルコレクションも展開しています。
メゾン マルジェラとリーボックのコラボレーションでは、アイコンである『タビ』シューズのスプリット トゥやトロンプルイユの手法を取り入れてスニーカーをつくっていました。エムエム6とサロモンのコレボレーションではそういう手法を使わずにブランドらしさを別の角度から表現しています。エムエム6にもアウトドアの文脈があるんじゃないか? と思わせるようなデザインがいいなと、素直に思いました。
僕は昨年秋にランニング用のバックパックを買って、ときどきそれを背負って走ることがあります。ギア的なアイテムを出してくれたおかげで、これまでのエムエム6になかったイメージの広がり方を感じました。そのバックパックがバニラカラーだったので、今回のXTモデルもバニラのようなこのホワイト×ブラック配色が気になっています。
エムエム6はロゴのような記号的要素をエッジィかつシャープに見せることに長けています。ほかのブランドだったら『ないほうがいい』と思うようなSALOMONの大胆なロゴや、目立つトゥ位置のナンバリングロゴも、あったほうがいいと思わせてくれる。そしてスポーティなモデルなのに、スポーティに見えず、かといってモードすぎない。ランにも普段履きにもちょうどいいバランスです」(小澤)
02:On × BEAMS × REI Co-op|Cloudrock Low BEAMS REI
都会派オンの本気アウトドアシューズに注目
「オンのスニーカーには洗練された都会派の象徴というイメージがあります。でもこの3社コラボによる『クラウドロック ロウ ビームス アール・イー・アイ』を見て、オンってファッションだけじゃなく、もっと広い領域と接続できるブランドなんだな…と、その振り幅に改めて驚かされました。
ロエベとのコラボレーションではモードとのタッチポイントを提示しましたし、僕らのような働く40代にとってはデキる仕事道具のようなスマートな存在感もあったと思います。でも“アウトドア”という文脈は、正直これまでオンと結びついていなかった。もちろん、クラウドロックやクラウドホライズンといったハイキング向けのモデルは展開されていますが、どれも他のアウトドアメーカーのそれよりも都会的で、それがオンらしさだと感じていました。
今回のモデルは、アメリカ最大級のアウトドアブランド、REI(アール・イー・アイ)とのコラボということもあり、アウトドアショップのシューズコーナーに並んでいても違和感のない佇まい。黒×茶色の配色や、リサイクル素材を思わせるソールの質感など、王道アウトドアのディテールが逆に新鮮に映ります。
“都会的すぎるオン”を敬遠していた層にとっても、今回のコラボは魅力的に映るはず。新しい層へのアピールとしても面白い試みだと思います。僕自身、クラウドロックはまだ履いたことがないので、郊外ロケなどのタイミングでぜひ試してみたいです」(小澤)
03:MIZUNO FOR MARGARET HOWELL|MIZUNO HIKING SHOES
ファッション軸がない「ウエーブガゼル3 GTX」を洗練
「毎回注目しているミズノ フォー マーガレット・ハウエルの2025年秋冬モデルです。僕は今回ハウエルがピックアップしたベースモデル『ウエーブガゼル3 GTX』を、3~4年前から愛用しています。ミズノがウォーキングシューズとして展開しているだけあって、とにかく歩きやすい。GORE-TEX仕様だから雨の日はもちろん、旅行や出張にも持っていく率が高い一足です。
“ファッション軸”を持たない本気のウォーキングシューズを、あえて選んでいるところに、ハウエルらしいセンスを感じます。さらに今回は、ブラックのワントーンに加え、ダークブラウン×ブラックの配色を出しています。このコンビネーションがすごく上品でいい。持っているモデルはブラックなので、コラボのほうはブラウンを買いました。履いてみるとフィットと軽さがオリジナルモデルよりも上がっていて、実用性も優秀です。
メンズのドレスファッションの世界では、黒と茶色を合わせるのは長らくタブーとされてきました。黒はフォーマル、茶色はカントリーの色だからというのがその理由です。その境界線を越えてファッションに昇華させたのは2010年代、ディストリクト ユナイテッドアローズのディレクターだった栗野宏文さんでした。
スニーカーの世界でこの配色は、アウトドア系でもライフスタイル領域でもなかなか見かけません。ミズノ フォー マーガレット・ハウエルの独特で洗練されたこの配色のシューズを、この秋冬はブラウンのパンツに合わせて履きたいと思います」(小澤)
04:MERRELL|HUT MOC 2 × côte&ciel
技術に裏打ちされた斬新なフォルム
「独特なフォルムのバックパックが人気のコートエシエルとメレルの初コラボレーションが今年の6月末にメレルの1TRL(ワンティーアールエル)ラインから発売されました。シルエットがユニークすぎて『どうやって履くのだろう?』と興味を持ちました。アッパーのファブリックをツイストして螺旋状にしたこのデザインは、富士山を囲む雲の形がインスピレーションだそうです。
渦の中央が履き口になります。中にはネオオプレーン製のソックインサートがあしらわれているので、ひとたびフィッティングしてしまえば、軽量で快適に履けます。靴としての造形もいいし、このフォルムを実現した技術力はすごいなと感動を覚えました。
1TRLは2020年にヨーロッパで始動して、さまざまなアイデアで今のファッションの文脈に沿ったシューズを打ち出しています。歴史こそ浅いけれど、革新的なデザインに挑戦するプレミアムラインをつくったからこその技術や経験が生きて、今回のコートエシエルとのコラボのような斬新な形状を製品化できたのだと思います」(小澤)
05:PUMA × Graphpaper|Speedcat Plus GRAPHPAPER
大人が履きやすいグレージュワントーンの薄底モデル
「2000年前後のプーマのデザインは、今とても時代に合っている気がします。モストロ然り、スピードキャット然り。ヨーロッパのスニーカーならではの独特のフォルムが、今のファッションにマッチしているのだなと、カッコよく履きこなしている若者のSNSを見ていて思います。当時を経験していないひとつ下の世代が、新しい解釈でこういう靴をとらえているのも面白い。
そんな若者の靴をグラフペーパーが、大人っぽい色合いや素材感でアレンジしてくれました。ある意味無臭なグレージュのワントーンで、スムース、ショートスエード、ヌバックと3つの革で表情をつけています。クラークスのベージュのワラビーを愛用していたような人が、すんなり取り入れやすいカラーリング。グレージュがスニーカーとファッションの距離を縮めてくれます。
スピードキャットはドライビングシューズをベースにしたモデルだからかなりの薄底で、これがまた今の服に合わせやすい。着こなしを今っぽく見せてくれます」(小澤)
06:PUMA|DEVIATE NITRO ELITE TRAIL HELIOT EMIL
モードなアプローチが光る気鋭のデザイナーコラボ
「コペンハーゲン発のモノクロームでソリッドな、それでいてスポーティなニュアンスも携えるモード系のブランド、エリオット・エミルとプーマとのコラボレーションです。ディヴィエイト ニトロ エリート トレイルというプーマのハイテクランニングシューズがベースになっていますが、アッパー全体をテキスタイルでカバーして、ブラックワントーンにしているので、ベースモデルがまったくわからなくなっています。
世代的に僕は、プーマと言えばフラットでローテクなバッシュのイメージが強く、ハイテクなランニングシューズはノーチェックで、今までプーマのランニングシューズを履いたことがありませんでした。でも今年は箱根駅伝でも25人の選手がプーマを履いていたそうで、僕が推している立教大学の選手もプーマを履いている人が多かった。最近はランニング市場でもリアルなアスリートに落ちてきている気がして、プーマ、頑張っているなと。
テクノロジーも備えたランニングシューズがこれだけファッション感度の高いものになっているということは、僕が出張スニーカーとして挙げる『走れて日常生活にもマッチする』という条件をクリアしています。プーマは90年代にいち早くジルサンダーとコラボするなど、先鋭的なアプローチに僕もずっと注目してきました。このエリオット・エミルとのコラボはデザインとしても面白いので、ぜひ履いてみたいと思っています」(小澤)
07:MIZUNO FOR MARGARET HOWELL|MIZUNO HIKING SANDALS
スニーカー色強めの2WAYで履けるサンダル
「マーガレット・ハウエルとミズノの定例コラボから、今年の春夏に出た新作スニーカーサンダルです。ミズノのインラインにあるウエーブエボークスイッチという、ウォーキングシューズから派生したサンダルをハウエル流にアレンジしています。インラインもとてもよくできているんですが、よりソリッドに洗練されたこちらのほうがUOMO向きかと思ってピックアップしました。
このコラボのベースになっているウエーブエボークスイッチを、ミズノではサンダルと言わず“二刀流シューズ”と謳っています。いわゆるスニーカーサンダルの中でもスニーカー色強めのモデルと、サンダル色強めのモデルがあると思いますが、このハウエルのハイキングサンダルはもちろん前者。
履いてみるとすごく歩きやすくて、甲がオープン仕様ということもあって夏のウォーキングにもよさそうです。踵のストラップを外してミュールにしたときも、シューレースでフィット感が調整できるからホールドされていて踵が浮かず快適です」(小澤)
08:New Balance × DOVER STREET MARKET|New Balance × DSM 991v2
スペシャルな黒をまとった大人の990品番
「ニューバランスの990番台は、今も高い人気を誇っています。最新のものが欲しい人は990の新しいバージョン、もう少しベーシック系が好きな人は992や993を狙っている気がしますが、僕は991のシリーズが一番好きで6色ぐらいもっています。定期的に出るものでもないので、発売すれば必ずチェックしています。一番最近出たのがこのニューバランス×ドーバーストリートマーケットのオールブラック。
993をはじめ990シリーズのオールブラックはおしゃれ好きに支持されています。でもドーバーの黒は、質感や濃度がニューバランスの使う黒とはまったく違っていて、黒の表現は奥が深いなとドーバーのトリプルブラックコラボを見るたびに感じます。この991v2も奇をてらったことはしていませんが、素材の組み合わせもよくて、すごくスペシャルな黒に仕上がっている。
デザイン的にはシュータンのロゴを左右非対称にするなど多少アレンジされていて、さりげないけれどドーバーらしさはしっかり落とし込まれています。991v2は僕的にはボリューム感もちょうどよくて、ハイテクすぎないどこかローテク感のあるところもいい。これが992だとちょっと若さが出るような気もするので、そういう意味でも大人の990品番だと僕は思います」(小澤)
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。
マルジェラ ジャパン クライアントサービス TEL: 0120-934-779
ビームス メン 渋谷 TEL:03-3780-5500
マーガレット・ハウエル
丸紅コンシューマーブランズ TEL: 03-6838-9677
グラフペーパー 東京 TEL:03-6381-6171
プーマ お客様サービス TEL:0120-125-150
マーガレット・ハウエル TEL:03-5785-6445
ドーバー ストリート マーケット ギンザ TEL: 03-6228-5080























