2025年8月に連載「大人がこのスニーカーを買う理由」で紹介した新作を、アクセス数が多かった順にあらためてご紹介。大人が「本当に欲しい」スニーカーがわかる!
BEST5:PUMA × Graphpaper|Speedcat Plus GRAPHPAPER
大人が履きやすいグレージュワントーンの薄底モデル
「2000年前後のプーマのデザインは、今とても時代に合っている気がします。モストロ然り、スピードキャット然り。ヨーロッパのスニーカーならではの独特のフォルムが、今のファッションにマッチしているのだなと、カッコよく履きこなしている若者のSNSを見ていて思います。当時を経験していないひとつ下の世代が、新しい解釈でこういう靴をとらえているのも面白い。
そんな若者の靴をグラフペーパーが、大人っぽい色合いや素材感でアレンジしてくれました。ある意味無臭なグレージュのワントーンで、スムース、ショートスエード、ヌバックと3つの革で表情をつけています。クラークスのベージュのワラビーを愛用していたような人が、すんなり取り入れやすいカラーリング。グレージュがスニーカーとファッションの距離を縮めてくれます。
スピードキャットはドライビングシューズをベースにしたモデルだからかなりの薄底で、これがまた今の服に合わせやすい。着こなしを今っぽく見せてくれます」(小澤)
BEST4:MERRELL|HUT MOC 2 × côte&ciel
技術に裏打ちされた斬新なフォルム
「独特なフォルムのバックパックが人気のコートエシエルとメレルの初コラボレーションが今年の6月末にメレルの1TRL(ワンティーアールエル)ラインから発売されました。シルエットがユニークすぎて『どうやって履くのだろう?』と興味を持ちました。アッパーのファブリックをツイストして螺旋状にしたこのデザインは、富士山を囲む雲の形がインスピレーションだそうです。
渦の中央が履き口になります。中にはネオオプレーン製のソックインサートがあしらわれているので、ひとたびフィッティングしてしまえば、軽量で快適に履けます。靴としての造形もいいし、このフォルムを実現した技術力はすごいなと感動を覚えました。
1TRLは2020年にヨーロッパで始動して、さまざまなアイデアで今のファッションの文脈に沿ったシューズを打ち出しています。歴史こそ浅いけれど、革新的なデザインに挑戦するプレミアムラインをつくったからこその技術や経験が生きて、今回のコートエシエルとのコラボのような斬新な形状を製品化できたのだと思います」(小澤)
BEST3:adidas Originals|ZPONGE FLUX SHOES
新テクノロジーを搭載した和を感じるスニーカー
「アディダスは最近、ランニングシューズのテクノロジーをライフスタイルのスニーカーに落としこんでいます。昨年登場したアディゼロ アルクがその筆頭ですが、2025年秋冬の新型として登場したこのZponge(ズポンジ) フラックスシューズもそんなモデルのひとつ。Zpongeはアディダスの最新テクノロジーで、衝撃吸収技術を融合したスポンジのようなミッドソールが特徴です。
この7月に登場したZponge フラックス シューズは、2000年代に登場したAdiflux(アディフラックス)のアッパーにこのZpongeミッドソールを融合しています。アッパーのクロスしたようなデザインはハイテクだけれどもどこか和テイストという2000年代のトレンドで、モードなスタイルとも親和性が高い。第一弾はイエローにブルー、オレンジという鮮やかな配色でしたが、最近リフレクティブ素材を使用したモノトーン配色が発売されました。こういうオリエンタルなムードのスニーカーをサラッとスラックスに合わせてもいいんじゃないかと思いました。
Zpongeというネーミングはさておき、履き心地はとてもよくロッカー構造だから歩きたくなります。デザイン的にもファッショナブルで、意外と大人が履きやすい一足ではないかと。無地のブラックやネイビースタイルの足元によく合います」(小澤)
BEST2:Salomon|XT-6 SHADOW
ジャカードメッシュのやわらかいサロモン
「サロモンと言えばプロテクト感という印象がありますが、最近、やわらかさを感じるサロモンが気になっています。このXT-6 シャドウもそんなモデルのひとつ。アッパーにジャカードメッシュを使っているので、見た目だけでなく履き心地も軽く、マッドコンタグリップソールのハードさを中和しています。
やわらかい素材に対して半透明フィルムでブルーや、ソールとの際やセンターテープにグラデーションでオリーブグリーンをきかせたカラーリングもモダンです。みんなが好きなソリッドなオールブラックとはまた違う新鮮さがあります。
セレクトショップではゴープコア系のカジュアルではなく、クリーンなシャツやスラックスのスタイリングにこのXT-6 シャドウを提案していたり、今までとは違う文脈で活躍するスニーカーになっているようです。トレンドだからと、無理して堅いサロモンを履いていた人も多いと思いますが、もっと気軽に履けるようになりました」(小澤)
BEST1:NIKE SPORTSWEAR|AVA ROVER
次世代を感じさせるイノベーティブなデザイン
「ナイキ エイバ ローバーは7月25日に発売されたばかりの新型スニーカーです。2000年前後のナイキのモデルにあった近未来感のあるアッパーと厚底のリアクトX フォームクッショニングを融合したようなデザインで、久々にイノベーティブなナイキを感じました。
2018年にナイキのリアクト エレメントが出たときも、新しいモノにチャレンジするナイキらしさが見えて、僕はすごく好きでした。エイバ ローバーはそれに近い感覚があります。ただこういう先鋭的なモデルが発売してすぐに大ヒット! みたいなことは、近年あまりありません。そこがちょっと残念に思うところ。
でも、こういう見慣れない、斬新なスニーカーは、多分ナイキにしかつくれない。スニーカーを新しいフェーズに押し上げる意気込みのあるデザインは常に好きです。確実にスタイルにハマるスニーカーだけを選ぶのではなく、こういう新しいものを自分のファッション感に取り入れて、うまく履きこなすことが大事だと思います。いろいろとファッションを考えたくなるデザインでもあります」(小澤)

「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。