2023.01.15

【清野とおるインタビュー】もういい年ですから節度ある街で、穏やかに…

赤羽を根城にしながらライフワークは散歩。いろんな街を訪れてはさまざまな不思議・怪異を見いだしたエッセイ漫画を世に送り続けてきた清野さんの近況と新連載とは?

【清野とおるインタビュー】もういい年ですの画像_1

 訪れる街に珍妙な個性を見いだし、漫画に描き続ける清野とおるさん。UOMOのウェブで始まった新連載『スペアタウン ~つくろう自分だけの予備の街~』では、自分のホームタウンに代わる街(=スペアタウン)を探し求めて、また新たな街を訪れる。今作での街歩きの流儀とは。


「スペアタウンでは、できれば1~2泊はしたいところですね。そしてなんでもないような、いたって普通の場所で過ごしてみる。その街に溶け込み、暮らしているかのように。どこにでもあるスポットほど『街の人となり』が見えてくる。例えばサイゼリヤはいいですね。新連載の第1話で訪れた多摩センターの店舗なら、混雑しすぎずわりといつでも入れて、なんといっても客層がいい。適度にガヤついていますが、全然耳障りではなく、むしろ心地よい。多摩センターはチェーンのスーパー銭湯にせよ、サウナブームと無縁で心穏やかに過ごせるし、若者たちも都心では遭遇しがちな“うぇ~い感”がなく、皆、節度があるような印象」


 新天地に求めるのは安らぎなのか。


「もちろん安寧ですよ。若い頃のように前のめりに事件を求めていませんから。見知らぬ街に出かけても、交通費と滞在費に見合った体験をしなければという逼迫感はなく、ただそこに住んでいる自分の姿を想像するだけです。北の赤羽に住んだので、南の蒲田、東の新小岩あたりは期待大ですね。添い遂げる気概で住んでいる赤羽は再開発が進み、かつて行きつけだったお店の8割はなくなってしまった。この先さらに開発が進んで高層マンションが立ち並びでもしたら、いよいよ自分の居場所だとは感じられなくなるかもしれません。それに人生、何があるかわからない。万が一にも自分の火の不始末で近所に火事を広げてしまったら…ある日突然、街を追われるかもしれないですし…」


清野とおる
1998年漫画家デビュー。『東京都北区赤羽』『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』『東京怪奇酒』『全っっっっっ然知らない街を歩いてみたものの』など、ドラマ化作品多数。自身が街を歩く中で体験した事柄を漫画に落とし込んだ作風は、シュールでありながら人情味のあるタッチが人気を集め続けている。


清野とおる最新作「スペアタウン 〜つくろう自分だけの予備の街〜」


Photo:Akira Yamada 
Interview&Text:Takako Nagai

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