2025.07.05
最終更新日:2025.07.05

【大人のハワイ旅・マラソン編】「走るのは嫌い」な63歳。俳優・光石研がハワイでハーフマラソンを走った理由

走るのは嫌いだと公言する63歳の俳優が、なぜハワイでハーフマラソンを走るのか。2025年4月13日、ホノルルで開催されたハパルア2025に、UOMO編集部の薬師神と穂上が同行。光石研さんと共に過ごした21.0975kmの記録をお届けする。

俳優
光石研

1961年生まれ、福岡県出身。高校在学中に曽根中生監督『博多っ子純情』(78) のオーディションを受け主演に抜擢される。以降、映画・ドラマを中心に様々な役柄を演じる。YouTubeドラマ『光石研の東京古着日和』(CCCメディアハウス)、著書のエッセイ集『SOUND TRACK』(パルコ出版)、『リバーサイドボーイズ』(三栄)などを通じて、近年は自身のファッションやライフスタイルのセンスも注目されている。

40代のある日、タバコをやめたら走ることになっていた

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本番前日。ハワイ・コンベンションセンターへゼッケンの受け取りに行った際に光石さんと話した。

「じつは僕のランニング歴は意外と長いんです」と光石さん。「40代前半にタバコをやめたら、口寂しくて食べてしまう。このままだと本当に太るなと思って、健康のために走り出しました」

「走るのは好きなんですか?」と訊くと、「嫌いです」とまさかの即答。最初は700メートルの公園を一周するのも精一杯だった。

「しんどくて途中で立ち止まっちゃうくらい。でも不思議なもので、続けると少しずつ走れるようになるんです」

それから20年近く地道に走り続けていて、今では気の合う仲間たちと一緒に走ることもあるという。みんなでワイワイ言いながら走るのは、一人で黙々と走るのとはまた違った楽しさがあるそうだ。

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光石さん特製のオリジナルTシャツ。撮影から手書き文字まですべてiPadでデザインした。

そんな会話から、2週間前の東京での出来事を思い出す。光石さんのマラソン用ウェア選びに原宿のザ・ノース・フェイスまで同行した時のこと。買い物を終えた光石さんが、紙袋から何かを取り出した。

「これよかったら着てください。ハワイの思いを詰め込みすぎて、ちょっとファンシーになり過ぎちゃったんだけど…」

そう言いながら手渡されたのは、「OAHU RUNNING CLUB(オアフ ランニング クラブ)」「HONOLULU BABY!(ホノルル ベイビー!)」の文字が入ったオリジナルTシャツ。なんとUOMOスタッフ分まで用意してくれていた。光石さんらしいセンスの良さと、遊び心が込められたデザイン。

早朝5時前、夜明け前のワイキキビーチ

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マラソン当日の4月13日、早朝5時前。光石さんが集合場所に現れた。

「おはようございます」

「眠いですね」といいながらもワクワクとした表情の光石さんは、この日のために買い揃えたザ・ノース・フェイスのウェアを身にまとっていた。

走るのが嫌いなのに走っている63歳の俳優と、まともに走った経験がないくせに今回光石さんと一緒にエントリーした52歳の編集者(薬師神)、そして走らないのに走る人を取材しに来た45歳の編集者(穂上)が、夜明け前のホノルルに立っている。なんだか妙な取り合わせだ。

9,409人、それぞれのスタートライン

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スタート地点に集まったランナーたち。まだ暗い。朝日も出ていない。それなのに集まった人々の数は驚くほど多い。

ハワイズハーフマラソン・ハパルア2025。今年は総勢9,409名がエントリーし、そのうち日本人は836名。マラソン大会には完走までの制限時間が設けられていることがほとんどだが、この大会はそれがない「リゾートラン」の代名詞だ。正解有数のビーチリゾートの開放感の中で走る特別なマラソン体験として、多くのランナーから愛されている。「ハパルア」とはハワイ語で「半分」を意味する通り、21.0975kmのコースを走る。

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いよいよスタート時間が近づく中、光石さんと、今回一緒に走ることになっているお友達の折田さん、今村さん、薬師神もスタート位置へ。

「無理しないで自分のペースでいきますよ」

レース直前、光石さんはそう呟いた。
午前6時、スタートのアナウンスが遠くから聞こえた。人の波がゆっくりと動いた。光石さんも走り始めた。

無理しない。楽しむ。それがハパルア

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ハワイズハーフマラソン ハパルアのコースは「ホノルルマラソン(フルマラソン)の魅力をギュッと凝縮した“いいとこどり”」と言われるだけあって、オアフ島の見どころを効率よく駆け抜けるルートだ。ワイキキのデューク・カハナモク像前から西側に向かってスタートし、アラモアナショッピングセンターの前を通ってダウンタウンを折り返し、再びワイキキを通り、ダイヤモンドヘッドを往復して、カピオラニ公園でフィニッシュする21.0975kmの道のり。

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スタート直後はアラモアナ地区の開放的な景色が広がり、ダウンタウンエリアでは歴史あるホノルル港やアロハタワーといったハワイの文化的ランドマークを眺めながら走る。折り返し後はワイキキの中心部へ。一流ホテルやレストラン、高級ブランド店が立ち並ぶカラカウア通りなど、ハワイらしい風景が次々と現れる。朝日が昇り、ワイキキの街が徐々に目を覚ます中、ランナーたちはそれぞれのペースで走り続ける。

「意外と2〜3キロくらいから、つらくなりました」と、後に光石さんは振り返った。「スタートしてすぐなのに、もうダメかもって」。

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取材チームは約15キロ付近にあるダイヤモンドヘッド灯台付近で光石さんがやってくるのを待っていた。しばらくすると、光石さんが歩きながら現れた。初のハーフマラソン挑戦の薬師神も光石さんと一緒だ。無謀なチャレンジにボロボロになって現れると思っていたのだが、意外にも楽しげな雰囲気だった。「きつかったけど、ハワイの素敵な景色を見ながら走れるし、何より光石さんと一緒だったから心強くて頑張れました」と薬師神は振り返る。初心者でもハワイの美しい景色の中、タイムを気にしすぎることなく楽しみながら走れるのは、この大会の特徴の一つと言える。

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「灯台のところが一番しんどかった」と光石さんが振り返ったこの地点では、一度折り返すような形になる。前を走る人と、後ろから来る人がすれ違う場所。自分より先に行く人を見ると、不思議と疲れが増すそうだが、仲間がいることで心の支えになったのかもしれない。

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ハパルアコース最大のハイライトと言われるダイヤモンドヘッドロード。坂を上りきると、目の前に青く輝く太平洋が広がる。多くのランナーがこの絶景ポイントで足を止め、写真を撮ったり、しばし景色に見とれたりする光景が見られる。

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沿道では地元の人たちが手作りの看板を掲げ、声援を送っている。美しい景色と人々の温かさ。それがランナーたちの疲れた心と体を癒し、再び足を前に向かわせる原動力になっている。ハワイという土地が持つ特別な魅力が、この15キロ地点に凝縮されているのかもしれない。

フィニッシュライン、そして記録

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午前9時30分。フィニッシュライン。タイムは3時間30分。スタートから15分ほどは後方で待っていたため、実質3時間15分ほどで光石さんは走り切った。超初心者の薬師神も同時にまさかの完走だ。

ちなみに、この日の総合優勝はエリトリアのTSEGAY TUEMAY WELDLIBANOS選手で1時間4分26秒。女子優勝はオーストラリアのSALAH KLEIN選手の1時間17分36秒だった。日本人トップは坪井慧さんが1時間8分34秒で総合3位に入った。

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フィニッシュエリアでは、参加者にマラサダやスイーツ、飲み物が配られる。
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完走者全員に贈呈される「完走メダル」。

“走るのが嫌い”な大人が、走る理由

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前回ここホノルルでフルマラソンを完走した2015年から10年。光石さんにとってハワイでのマラソンは、今回が2度目の挑戦だった。フルマラソンからハーフマラソンへ。距離は半分になったが、走ることへの思いは変わらないようだ。

「出る前はすごくテンション上がってたけど、実際、本番になると膝大丈夫か? とかいろんなことが心配になる」と光石さんは苦笑いしながら話す。「でもみんなで走ったから楽しく走れました」

普段、映画やドラマ撮影では、同じシーンを何テイクも繰り返し撮影している光石さんのことを思う。一つの場面を完璧に仕上げるために、監督から「もう一度」と言われれば、何度でも繰り返す。その姿勢と今日の走りは、どこか通じるものがあった。

「正直、やっぱり走るのは好きじゃないんです」と光石さん。

「じゃあ、なぜ続けるんですか?」

「体力を維持するためですね。年齢を重ねても、できることを少しずつ増やしていきたい」

帰り際、光石さんはいつもの飄々とした口調で言った。

「来年は出たくない」と笑いながら、「本当に今やりたいことは“ホノルルベイビー”のTシャツを作り直すことかな」

そんな光石さんらしい答えに思わず笑ってしまった。走るのは嫌いだと言いながら、完走後の関心事はオリジナルのTシャツ作り。きっと新しいTシャツができたら、またどこかのマラソンにチャレンジするに違いない。

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プールやビーチでのんびり過ごすのも素晴らしいハワイの楽しみ方だが、ハーフマラソンという新しい挑戦で、いつもとは違う角度からハワイを体験してみるのも悪くない。12月に開催されるJALホノルルマラソンもおすすめだ。制限時間なしのフルマラソンは、ハパルアとは違った42.195kmの感動が待っているはず。

ハワイズハーフマラソン ハパルア2025

開催日時:2025年4月13日(日)
競技種目:ハーフマラソン(21.0975km)
参加定員:なし
参加資格:大会当日の年齢が7歳以上。※18歳未満は、同意書に親権者の署名が必要
参加料:
【日本受付】
~2025年3月27日(火)
エントリー料:24,000円(不課税)
※別途事務手数料5%:1,200円(税込)

【ホノルル現地受付】レイトエントリー
2025年4月11日(金)・2024年4月12日(土)
エントリー料:US$180
※別途手数料がかかる場合もある
参加記念品:参加記念Tシャツ、参加記念バッグ
完走記念品等:完走メダル、デジタル完走証
制限時間:なし

フルマラソンは12月に開催!

JALホノルルマラソン2025
例年約3万人が参加、日本からも1万人程度が参加する市民マラソンの最高峰。

開催日:2025年12月14日(日)
詳細:https://www.honolulumarathon.jp/2025/race/

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