2025.06.13
最終更新日:2025.06.13

【大人の京都】藍が結ぶ、夏のはじまり──BUAISOU「縄夏生」展が両足院で開催

京都・祇園の古刹、両足院にて今年創立10周年を迎える藍師・染師BUAISOUによる展覧会「縄夏生(なわげしょう)」が開催されている。

大書院に設置された藍染の作品群
大書院に設置された藍染の作品群。奥の「縄紋松段之段染暖簾」は40回以上の工程を経てグラデーションを表現している Photo by Kyoko Nishimoto / BUAISOU

この時期、両足院の庭園では池のほとりに群生する“半夏生(はんげしょう)”の葉が、まるで半分“化粧”を施したように白くなり、この幻想的な風景が初夏の風物詩ともなっている。“半夏生”はまた、夏至から数えて11日目(本年は7月1日)を指す雑節でもあり、日本の農業においては作業の節目を意味する重要な日とされてきた。徳島県にあるBUAISOUの藍畑もまさにこの頃が葉に藍を蓄える育成期にあたる。

葉の根元から日ごとに白く染まる半夏生
葉の根元から日ごとに白く染まる半夏生。 午前中は庭園散策付きの予約制特別拝観も行われている(両足院ウェブサイトより予約可能)。

古来の自然観や風習に現代的な感性を融合させた本展だが、すべての作品が“縄”をモチーフとしている点は大きな特徴だ。縄は人工物としては最古の構造のひとつと考えられており、細く撚れば糸として、それを織れば布になる。太く撚るとロープという道具として使われ、注連縄など宗教的な象徴としても崇拝されてきた。実は、BUAISOU代表・楮覚郎(かじかくお)は、藍に取り組む以前から縄という存在に強く惹かれ、縄を主題とした絵を描き続けてきたのだという。

茶室「臨池亭」
茶室「臨池亭」。円窓に合わせて製作されたのは植物から繊維になったばかりの「精麻」を結んだ垂れ幕。 Photo by Kyoko Nishimoto / BUAISOU

ねじれ、反発し合う力で撚り合わされるその単純かつ普遍的な縄の構造について褚は「圧倒的な存在感、そして安心感をも覚えます。古くは縄文土器、そして民芸やさまざまなアートなど、これまで多くの先人たちが縄をモチーフに製作を行なってきました。私も、縄文人同様、身近なものに着目するという姿勢をとりながら、今回の展覧会ではその魅力を最大限に発揮することができたのではないか、と思います」と語る。

藍色の畳が入った床間、藍で染めた茶巾
左)藍色の畳が入った床間。いぐさは水を弾くため、1畳分約6000本をやすりで削った後に染めた。 右)茶会では藍で染めた茶巾も使用される。Photo by Kyoko Nishimoto / BUAISOU

日々、半夏生が育つ池泉回遊式庭園は京都府の名勝庭園にも指定されており、園内にある茶室「臨池亭」にはBUAISOUによる藍染の暖簾や掛け軸、畳などが設置された。藍地に白く染め抜かれた縄の紋様は、藍に施された“化粧”のようにも見え、半夏生の白い葉とシンクロする。通常、茶室は非公開だが、本展では予約制の茶会のほか、当日申し込みができる呈茶も毎日行われているので、藍と茶が織りなす情緒を感じながら、静かに一服のひとときを過ごしてみるのもよいだろう。

「七宝網紋」が染め抜かれた暖簾
茶室は縁起の良い「七宝網紋」が染め抜かれた暖簾に包まれている。 Photo by Kyoko Nishimoto / BUAISOU

展覧会期間中は、祇園界隈にあるショップでも藍染を用いた限定商品が販売される。故・高橋大雅による総合芸術空間<T.T>や、江戸時代から続く<染司よしおか>、草履の<祇園ない藤>など……この界隈の“名店”も巡りながら、そぞろ歩きもゆっくり楽しんでほしい。

植物

縄夏生:BUAISOU展覧会

会期:2025年6月1日(日)~ 7月13日 (日)  会期中無休
時間:12:00~16:00 (閉門16:30)
会場:両足院/京都府京都市東山区大和大路通四条下る4丁目小松町 591
拝観料 : ¥1,000、中高生 ¥500(本堂、書院拝観)、団体 ¥900(20名以上)
https://ryosokuin.com

○呈茶
料金:  ¥1,500(税込・事前予約不要/当日受付決済)

○茶会
開催日時:6/21(土), 29(日), 7/5(土), 12(土)
時間: 13:00-14:00 / 14:00-15:00の1日2席、7/5(土)は14:00-15:00の1席のみ
人数: 各席 5名まで
料金:  ¥13,200(税込・拝観料込み ・BUAISOUの手ぬぐい付)
予約リンク:https://booking.exp.is/for/xexe/buaisou-teaceremony

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