40歳ともなれば、積んだ経験、仕事と家庭、出会う人…それらとともに自分だけの定番が変わりゆくもの。そんなエピソードを8人の大人がエッセイでつづる。
仕事軸で選んだ、ボーディの軽やかなニットとBELL STAMP WEARのレザージャケット
文・渡會 龍(家具デザイナー)
独立して今年で10年目。極めて個人的なアニバーサリーではありますが、節目のこの機会にあらためて今の自分の定番について考えてみると、基準になっているのは、オン/オフ問わず、気負わずに着られる「信頼感」と「実用性」だということに気づきました。
オーダー家具の設計という仕事柄、お客様と直接打ち合わせをすることも多く、最近は以前にも増して、その際に何を着るかもプレゼンテーションのひとつだと考えるようになりました。特注製作以外に自分がオリジナルでデザインしている家具はシンプルでクリーンなものを目指しているので、できれば着るものでも、そことの整合性を出したいし、相手にマイナスな印象を与えるのは避けたいところ。
そういう観点で服を選ぶようになると、自然と無地のものやベーシックなデザインのものに目がいくようになりますが、一方でただシンプルなだけの服を着ても気分が上がらない。
そんなわがままな家具屋にとって、今最も信頼がおけるのがボーディのニット。ロゴやアイコン的な意匠がないので、余計な先入観を持たれずに済む。でも、わかる人にはわかる品の良さやディテールがあって、着ていて相手を不快にすることは、まずあり得ない。加えて上質なカシミヤ混のあたたかさと優しさ、そしてそれを身につけているという満足感は他に替えがききません。はっきり言ってニットはボーディだけあればいいというぐらい頼りにしていて、ここぞという時には必ず手が伸びてしまいます。
そして、もうひとつ定番に仲間入りしたのが、BELL STAMP WEARのレザージャケットです。その名も「CAR JAM」というだけあって、着たまま車に乗るための工夫が至るところにあり、納品や採寸など車での移動が多い自分にとっての最適解と言える存在。とにかく柔らかくて軽いシープレザーの質感が最高に心地よい。ゴワつかないし、腕周りに余裕があるのでハンドルやシフト操作への影響もなし。着丈は運転席に座っても気にならないように裾のドローコードで調整が可能。シルエットの変化も楽しめて、さらにポケットも多いので、鍵はもちろん小銭やチケットなど、乱雑になりがちな車周りの細々したものがしっかりと収まる。実は若い頃に自分には似合わないと思って、当時持っていたアイテムを全て手放してしまって以来、一度もレザーを購入したことがありませんでした。でも、このジャケットはデザインもカジュアルだし、適度な光沢感にモードな雰囲気があるので、革特有の無骨さを避けて20年以上レザーから離れていた自分でも違和感なく袖を通すことができています。
高くても長く愛用できる本当に良いものや、自分のライフスタイルに合った質の高いものをニュートラルに選ぶ。40代も半ばになり、ようやく流行や値段、ブランド名に関係なく、肩の力を抜いて服と付き合えるようになってきたような気がします。
「NEW EDITION FURNITURE」代表。フルオーダーの製作家具や店舗什器の製作のほか、内装の意匠設計やオリジナルプロダクトのデザインを行う。